「大迫半端ないって!」に新証言。もうひとりの「中西」に直撃取材!

「大迫半端ないって!」に新証言。もうひとりの「中西」に直撃取材!

「滝川第二 キャプテン 中西」

 このワードでネット検索をすると、頭から「大迫、半端ないって」という言葉と、「中西隆裕」という人名がずら〜っと出てくる。

「いやいや、もう凄いですよ。(中西)隆裕さんが出てくれたら、そっちに殺到すると思うのですが、取材を嫌がっていることは聞いてますので。僕は……『中西違い』が良い方に転がっているか、悪い方に転がっているか分かりませんが、凄く光栄なことだと思っています」

 こう笑顔で語るのは、J3カテゴリのY.S.C.C横浜でプレーするDFの中西規真だ。

 実は彼も冒頭の3つの検索キーワードに相当する人物なのだ。彼は滝川第二の2年生ボランチとして、「あの試合」に出場していたのだから――。

10年前の高校生のセリフが流行語!?

 10年前の第87回全国高校サッカー選手権大会の準々決勝・鹿児島城西vs.滝川第二の一戦。この試合、滝川第二は鹿児島城西のエースストライカー・大迫勇也に4試合連続となる1試合2ゴールを浴び、2−6で大敗した。

 試合後の滝川第二のロッカールームで、当時キャプテンでCBだった中西隆裕が泣きながら「大迫、半端ないって!」と叫んだことがテレビで流され、一気に話題になった。

 結局この大会で大迫勇也は、1大会の個人最多得点記録となる10ゴールをマークし、チームは準優勝に輝いた。

 大会開催当時もこのフレーズはかなり話題に上ったのだが、それが今頃になって大流行したのは、今年のロシアW杯のグループリーグ初戦のコロンビア戦で、大迫勇也がチームを勝利に導く決勝ヘッドを叩き込んだからだ。

あのセリフの全文は?

 10年前以上のこのセリフが、再び日本列島を駆け巡り、サッカーファン以外の多くの人が認識する流行語となり、今年の流行語大賞にノミネートされるほどまでになった。

 残念ながら大賞はカーリング女子の「そだねー」に持っていかれてしまったが、トップ10入りを果たし、「Yahoo!検索大賞2018」という賞では流行語部門賞を受賞した。

「大迫、半端ないって!」はあくまで頭の部分であって、テレビで流されたロングバージョンの文字を起こすと、以下のようになる。

「大迫、半端ないって、もぉー。アイツ半端ないって! 後ろ向きのボールめっちゃトラップするもん! そんなんできひんやん、普通!

 そんなんできる? 言っといてや、できるんやったら。

(点とったら)喜べよ! 応援団のところ行けよ! 何でコーナーフラッグ行くねん? コーナーフラッグ行くなよ、みんな(鹿児島)城西!

 新聞や、全部新聞や。(点を)獲られたし、もう。また(大迫が)一面やし。

 またまたまたまた2発やし。1発にしとけばよかった! 1発に!」

 結局、この映像はネットに上がることで、何度も何度も繰り返し多くの人に観られるようになっていった。

もうひとりの「中西」の人生。

 話を規真に戻そう。

 同じ「中西」として試合に出場していた規真は、発言者である「中西」隆裕が卒業した後、新チームのキャプテンとして隆裕からキャプテンマークを引き継いでいた。

 そして高校卒業後は日本体育大に進学し、2014年にJ3を戦うY.S.C.C.横浜に加入。今年で5年目を迎えている。

 横浜市内の山手にある閑静な住宅街。急な坂を上った先に、彼がいつも練習しているグラウンドがあり、その脇のテラスで「大迫勇也にまつわる取材」というテーマで改めて話を聞くことになった。

「あの時(鹿児島城西戦後)のロッカールームは『タキニ(滝川第二)らしい』というか……あの時の3年生は隆裕さんを筆頭に、みんな凄くユーモアのある人が多い代だったので。負けてしょんぼりするより、いつも『笑って帰ろうぜ!』という雰囲気でしたね。

 あの時、僕は2年生だったので、『先輩、面白いこと言っているな〜』と思って泣きながらも笑ってましたね」

「隆裕さんは狙った訳ではなくて」

「でも、まさかあの言葉がここまでの社会現象を生むとは思っていなかった。隆裕さんは狙った訳ではなくて、あれ、素の姿ですから(笑)。

 当時はYouTubeでやたらと編集をされて流れていたので、僕はそれを面白半分で観ていたんです。でも、キャプテンを引き継いだら、まず同じ『中西』というのもあって、隆裕さんと比べられて。僕らの代はかなりまとめるのが大変な代だったので、凄く辛かった思いがありますね。

 卒業して日体大に進学したのですが、今度は大学で『滝川第二、キャプテン、中西って……お前、もしかして?』ってめちゃくちゃ言われましたから(笑)。『お前、あの大迫半端ないって奴やんけ〜』ってすぐに先輩に言われて、よく『真似しろ、真似しろ』といじられていました(笑)。

 他には『あれお兄ちゃんなの?』ってめっちゃ聞かれて、『いやいや全然違いますよ!』って否定ばかりしてましたよ!(笑)。別人と分かっていての『いじり説』と『本人間違え説』と『兄弟説』のトリプルパンチでもありました(笑)」

友達を作る“ツール”に!?

 大学進学を契機に、生まれ育った関西から、初めて関東での生活へ。いきなり先輩や周りにいじられ、さぞ大変だっただろう……と思っていたが、当の本人は逆にそれを活用したのだと言う。

「最初は友達が1人も居なくて寂しかったのですが、『中西いじり』が僕にとっては初対面の人とのいいコミュニケーションの『ネタ』になりましたので。

 今だって、そうなんですから(笑)。それを活かして仲良くなった人が沢山います。僕は関西弁でツッコミもできるので、このネタで凄く場が明るくなるんですよ」

 ただの思い出話ではなく、重要な「コミュニケーションツール」としての「大迫半端ないって!」という言葉。

 それが良い人間関係に活用できているのは、もちろん規真自身の人間性によるところが大きい。明るく、時に話す相手を気遣いながら、メリハリをつけて会話をする。取材をしていても好印象を抱かずにはいられなかった。

あの名言にまつわる秘話があった!

 話を「あのシーン」に向けると、規真は懐かしそうな表情を浮かべてこう「秘話」を語ってくれた。

「大会前は正直に言うと、大迫勇也の存在を全く知らなかったんですよ。僕らは全国で1つ1つ勝っていかないといけないレベルのチームだと思っていたので。目の前の1試合1試合をしっかり勝っていこうという考えでしたから。

 1回戦はシードで、2回戦に勝ったら、一気に準々決勝まで勝ち上がることができた感じ。

 そんな状況の中で、大迫選手が初戦から(1試合に)2発、2発って点を獲りだして……。3回戦が終わった翌日の新聞に『大迫勇也、またまたまた2発』という見出しが躍ったんですよ。

 その新聞を試合前に僕らが見て、先輩が『おいおい! こんなん書かれてるで! これで俺らが大迫に2点獲られたら、“またまたまたまた2発”になるやんけ!!!(笑)』って言いあっていたんですよ(笑)。

 そうしたら、本当に綺麗に2発やられてしまったので、ロッカールームで隆裕さんが、『新聞や、これまた新聞や。またまたまたまた2発やし、1発にしとけば良かった、1発に!』と言って……前日のことがあったので、それでみんなが大爆笑したわけなんですよ〜(笑)。

 隆裕さんの名言はその伏線があったから。正直、あそこにいたみんなは『明日の新聞の見出しはそうなる(『またまたまたまた2発』)な』と思っていましたから(笑)」

予想をはるかに超えるプレーを。

 豪快に笑って昔を懐かしむ規真だが、サッカー選手としての大迫勇也の「半端なさ」は当時から強烈に感じていたという。

「もう衝撃的でした。僕も笑ってはいましたが、正直、まさか2発もやられるとは思っていなかったんですから」

 大迫に決められた2発を、規真はすべて大迫のすぐ後方から見ていたという。

「ボランチとしてプレスバックに行かないといけなかったのですが、もう鹿児島城西の全員がレベル高いし、その中でも大迫選手は突き抜けているしで、もうプレスを掛けきれていなかった。

 1点目のミドルは対応していたのが矢野という選手で……矢野が対応して右にかわされて、ニアにズドン。

 後ろから見ていて、『どちらかにかわしに行くな〜』とは思っていました。でも、右に交わして、右のニアにシュートが入るとは思わなかった。

 ウチのGKも凄く良いGKだったので、『最悪ミドルだったら弾いてくれる』と思っていたんです。そうしたらズバンと最高のコースに入っていった。もうびっくりですよ」

「やられた」という思いを超えた衝撃。

「2点目のループシュートは、もうそれ(最初の1点)をも超越した領域でしたね。

(大迫の)後ろからボールが来たので僕はてっきり、トラップしてからGKをかわすか、シュートを打ってGKに止められるか、だと思っていたんです。でも、それは普通の高校生の感覚でしたね。

 大迫選手はその遥か上を行っていて、普通に浮いたボールをポーンとループしたのではなくて、ショートバウンドのボールをループしたんですよ!

 それがあんな綺麗な軌道を描いてゴールに入っていくんですから……。もう『やられた!』というより、『うおおおああああ、入った……入った……あれ入るんや……』って脱力感の方が大きかったですね」

自分の人生にとても大きな存在に。

 大迫勇也はたった1試合で全国に強烈なインパクトを与えただけでなく、個人の人生にも永遠に拭いきれないほどのインパクトを与えたのである。

「でも、まさかここでこういう取材が僕のところに来るとは思っていませんでした(笑)。(鹿児島城西戦から)かなり年月が経っているのに、『大迫勇也というサッカー選手は、自分にとって物凄く大きな存在なんだな』と改めて感じさせられますよね。

 今、僕もこうして大迫選手と同じプロサッカー選手を続けさせてもらっています。今のカテゴリーよりも上に行きたい気持ちはもちろんあります。でも、そこには目を背けられない厳しい現実もある。だからこそ、目の前の1試合1試合を大事にすることが、自分の今後のサッカー人生に大きくかかわってくると思って頑張っています。

 もちろんその先、サッカー選手ではなく別の仕事に就くにしても、1つひとつの目の前の経験を大事にして、次に活かしていく事が重要ですから。鹿児島城西戦のように、たった1試合でここまで人生が変わることもある訳ですからね(笑)。

 本当に大迫選手には尊敬の念と、『もっと頑張って欲しい』という気持ちが強いですね。まあ、向こうからしたら、『お前に言われとうないわ!』だと思いますが(笑)。今でも大迫選手からたくさん刺激を頂いています」

あの言葉はみんなの気持ち。

 取材での楽しい時間はあっという間に過ぎていった。

 最後に規真は笑顔でこう語ってくれた――。

「(中西)隆裕さんのあの言葉は、隆裕さんだけがそう思っていたわけではなくて、僕ら全員がそう感じていた、ということ。

 当時の僕らは堅守で勝ち上がっていったチームやったのに、まさか6点もやられるとは思わなかったので。まさか『またまたまたまた2発』やられるとも思っていなかった。

 だからこそ、負けた悔しさ以上に、素直に大迫選手のことを凄いなと思えた。

 自分たちのことを全部やりきった感が半分、大迫凄かったなという気持ちが半分で、あの雰囲気になったんです。

『やっぱり大迫って凄いんやな!』と素直に思った僕らみんなの気持ちを代弁したのが、隆裕さんのあの言葉だったんですよ」

文=安藤隆人

photograph by Takahito Ando


関連記事

おすすめ情報

Number Webの他の記事もみる
主要なニュースをもっと見る
社会のニュースをもっと見る
経済のニュースをもっと見る
政治のニュースをもっと見る
国際・科学のニュースをもっと見る
エンタメのニュースをもっと見る
スポーツのニュースをもっと見る
トレンドのニュースをもっと見る
生活術のニュースをもっと見る
地域のニュースをもっと見る

スポーツ アクセスランキング

ランキングの続きを見る

スポーツ 新着ニュース

新着ニュース一覧へ

総合 アクセスランキング

ランキングの続きを見る

東京 新着ニュース

東京の新着ニュースをもっと見る

東京 コラム・街ネタ

東京のコラム・街ネタをもっと見る

特集

特集一覧を見る

記事検索