2015年W杯戦士・畠山健介が語る、スクラムから見たジャパンの現在地。

2015年W杯戦士・畠山健介が語る、スクラムから見たジャパンの現在地。

 いよいよ自国開催のラグビーW杯を来年に控え、日本代表は2018年の強化を終えた。

 10月末の世界選抜戦からカウントして、ニュージーランド、イングランド、ロシアと対戦して1勝3敗。数字だけを見れば、決して芳しいものではない。

 ただ大事なことは、2019年9月20日に行われるロシアとのW杯開幕戦に向けて、ロシア戦を100%の状態で迎えるなら、現在のチームの完成度はいかほどなのか、そして何が課題なのかを明確にすることだと思う。

 思い起こせば4年前、僕たち代表選手、特にFWは相当な危機感に苛まれていた。

 2015年のW杯イングランド大会に向けて、エディー・ジョーンズ率いる日本代表は、2014年11月に4試合を消化した。まず、国内でマオリ・オールブラックスと2連戦。そして欧州遠征に出てルーマニア、ジョージアと戦った。

【2014年秋 日本代表試合成績】
11月 1日 21−61 マオリ・オールブラックス(ノエスタ)
11月 8日 18−20 マオリ・オールブラックス(秩父宮)
11月15日 18−13 ルーマニア(ブカレスト)
11月23日 24−35 ジョージア(トビリシ)

 マオリとの2連戦はテストマッチ扱いではなく、初戦は大敗したものの、2戦目で2点差まで追い上げて、一定の手応えをつかむことはできた。その翌週のルーマニア戦はノートライに封じられたものの、五郎丸(歩)が確実にPG6本を決め、5点差で逃げ切った。

 この時点でジャパンはテストマッチ11連勝を遂げていた。最後のジョージア戦、勝って2014年を締めくくりたかったが……。

スクラムがこのままじゃ勝てない。

 完敗だった。僕も先発3番で出場して、「負けた」と素直に認めざるを得なかったことをはっきり覚えている。試合内容でも圧倒され、何よりチームの課題として突き付けられたのが、スクラムだった。

 スクラムがこのままじゃ、W杯本番で勝てない――。この問題意識をFW全員が共有し、年が明けてから徹底的に問題改善に取り組むことで強化されたスクラムは、2015年W杯本大会で3勝を挙げる上で大きな“拠り所”となった。

スクラムを矛にするために。

 では、W杯前年の2018年の強化を終えて、日本代表のスクラムの完成度はどうか。

 僕は「問題ない」と思っている。スクラムからボールを出す、という点で4年前よりスムーズにできている。

 ロシア戦前半の出来はよくなかったが、あれはキングスホルムスタジアム特有の「ぬかるみ」に適応できなかったのもあったと思う。キングスホルムは2015年W杯のスコットランド戦の会場で、僕はニューカッスルの一員としてイングランド・リーグで何度かあのスタジアムでプレーしたが、あのグラウンドは足場が悪く、踏ん張りがあまり利かない。

 ロシアの高いモチベーションに圧倒された感もあったが、後半に入って立て直して、ちゃんと逆転できたのは日本の高い地力を示すものだろう。

 ただ、欲を言えば、来年の本大会を見据えて、スクラムでペナルティを奪うことができれば、頼もしい武器となる。特にW杯という大きな舞台では、スクラムで優位に立つことがかなり重要だ。

 実際2015年大会でも、サモア戦とアメリカ戦は、スクラムでペナルティを奪い、そこからのキックでゲインしようと(タッチラインに蹴り出してマイボール・ラインアウトに)、事前にプランニングしていた。たとえるなら、いまの日本のスクラムは“盾”にはなっているけど、“矛”にはなっていない。

「もう少し、早歩きしても」

 奇しくも4年前の4連戦の成績も「1勝3敗」だった。しかし、W杯に向けた問題意識というか、「このままじゃヤバい」という危機感は4年前の方が圧倒的に強かったように思う。

 ジャパンの強化の方向性は間違っていないと思う。不安視する必要はない。テストマッチで振るわなくても、「W杯が一番勝たなくてはならない舞台」という、ある種の余裕というか、ゆとりを感じられるのは、日本ラグビーの進歩と言えるのかもしれない。

 だけど、4年前の尋常ならざる緊迫感を肌身で知る人間としては、老婆心かもしれないが、「もう少し、早歩きしてもいいんじゃない?」と思ったりもする。

(構成:朴鐘泰)

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文=畠山健介

photograph by Miki Fukano


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