今のジェッツはなぜ競り勝てるか。天皇杯3連覇に「シェア」で挑む。

今のジェッツはなぜ競り勝てるか。天皇杯3連覇に「シェア」で挑む。

 少しずつだが、これまでと違った表情を見せ始めている。

 それが昨シーズンの天皇杯王者にして、Bリーグ準優勝の千葉ジェッツの現在の姿である。

 今シーズンの彼らのバスケットボールを見ていると、違う競技を目にしているような錯覚を覚えることがある。

 ヘッドコーチ(HC)の大野篤史は開幕前に、ジェッツが目指すべきバスケットボールについて、こう語っていた。

「ハードにディフェンスをして、リバウンドをとって、トランジション・オフェンス(守備からの素早い切り替えを活かした攻撃)につなげたいというのが僕らのスタイルです」

 攻撃への素早い切り替えから速攻が決まる様は、アメリカンフットボールのタッチダウンパスがポンポンと通るような爽快さがある。ただ、それ自体はBリーグ初年度に大野がHCに就任してから、変わらずチームの強みとして存在していたものだ。

 今シーズンはそれに加えて、得意とする速攻以外でも多彩な攻撃が繰り出されている。まるでフットサルやハンドボールのようにボールが素早く動いて、相手の守備を切り裂いていくシーンが目立つ。12月12日のレバンガ北海道戦の第3Qなどは、レバンガがHC交代直後だったという事情を差し引いても、まるでバスケットではないような圧巻の攻撃を見せていた。

個人に依存することではなく。

 アメフトやフットサルを好きな人たちにも、「ジェッツの試合を見に行ってみない?」と誘えるような展開が繰り広げられている。

 観客動員でリーグトップを走るジェッツのカラーにもなっているのだが、進化の裏にあるものは何なのだろうか。

 副キャプテンの石井講祐はこう話す。

「昨シーズンよりも、ボールをシェアして色々なところで点数がとれている試合が増えてきていると思います。誰か1人に依存することなく、ボールをみんなでタッチして、最後にノーマークの確率の高いシュートを狙うというのは今、最も目指しているところなので」

スタイルの成熟には時間がかかる。

 実は、激戦のBリーグ東地区で首位となりCSファイナルに進んだ昨シーズン、試合後に大野HCが何度も口にした反省の弁があった。

「どうしても、個人の力で解決しようとしすぎていたところがありました」

 それぞれの選手が自分の強みを出すのはジェッツの良さでもあるし、昨シーズンの天皇杯では司令塔の富樫勇樹を怪我で欠きながら、代わって先発出場した西村文男が天皇杯のベストファイブに選ばれたこともあるように、能力のある選手は多い。

 そんなチームを率いるにあたって、大野HCは頭ごなしに厳しく指導するというよりも、大切なことを繰り返し選手に問いかけながら、彼らの成長を待っている側面もあった。

「大野さんになってから、確率の高いシュートをみんなで探して狙うというのは、それぞれにやってきました。ただこの体制になってから1年目、2年目と積み重ねがあってこその今シーズン。それが少しずつ、花開いてきた部分があるのかなと思います」

 そんな石井の言葉通り、Bリーグ初年度から継続して取り組んできたことが実を結びつつある。

競り負けてきたアルバルクに。

 彼らの進化を物語っていたのは、12月の王者アルバルク東京との対戦だった。

 昨シーズンのアルバルクとの対戦成績は、ジェッツの2勝5敗と分が悪かった。ジェッツが挙げた2勝は、試合序盤からハイペースで得点を重ねて一気に試合を決めたもの。逆に接戦にもつれ込むと、アルバルクが優位に立った。

 12月15、16日の2連戦、初戦は72−76で敗戦。続く2戦目は序盤にリードしたのち、何度も追い上げられる展開となりながら逆転を許さず、76−71でジェッツが接戦をものにした。昨シーズンはできなかった展開で勝利を手にしたあと、指揮官はこう切り出した。

「昨シーズンだと(追い上げられ、逆転を許し)10点くらいビハインドをくらって、最後に持ち直して、少し良いゲームのようになって終わりというところでした。逆転されなかったところが成長かなと思っています」

 そして、昨シーズンからの上積みについて、こう分析した。

「誰かに頼るのではなくて、しっかりボールを動かす。インサイドに入れるのか、コートを広く使うのかについて全員が共通理解をもって、フロアバランスを保てたところは良かったです。それは、選手たちのメンタルが成長したからだと思います。昨シーズンの反省をしっかり活かせたのかなと思います」

うまく行っている時に先読みする。

 その背景として、石井はコートの上での選手たちの意識と声を根拠にあげている。

「オフェンスの細かい部分について、選手同士で話し合うことがすごく多くなっているんです。『このあとは相手がこうやって守ってきそうだから』とか、『今はインサイドを上手く攻めることができているから、この後どうやって攻めよう』とか、そういう話をするようになったことがコートに出ていると強く感じています。

 上手く点数を獲れている時間帯でも、何も話さずに速攻を続けているわけではなくて、常に先読みをした会話が増えてきているのがすごく良いところだと思いますね」

 そして忘れてはならないのは、アグレッシブな守備から走るスタイルがジェッツのベースにあること。それを軸として、その先の枝葉を成長させているのが、彼らの現在の姿なのだ。

 だからだろう。アルバルク戦のあと、ポイントガードの富樫はオフェンスでの手応えを踏まえつつも、こう強調するのを忘れなかった。

「しっかりディフェンスをしようという意識から試合に入っていて。そうすることによって、たとえオフェンスがどれだけダメでもディフェンスは大崩れしない。あの展開でも大崩れしなかった部分が、チームの成長だと思います」

一発勝負強者のイメージを越えて。

 Bリーグ初年度に続き、2年目にあたる昨シーズンも天皇杯を制したことで、ジェッツは天皇杯のような一発勝負のトーナメントに強いという評価が固まりつつあった。

 しかし、昨シーズンのCSファイナル。1試合で勝敗を決するアルバルク戦で60−85と完敗して、その神話は崩れさった。

 勢いやジンクス、大会のフォーマットに左右されない真の強さを手にしつつあるのかどうか。

 3連覇をかけて臨む天皇杯が目前に迫った今、ジェッツの真価が問われているのである。

文=ミムラユウスケ

photograph by B.LEAGUE


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