高校時代の中島翔哉にそっくりな、横浜FCユース斉藤光毅という逸材。

高校時代の中島翔哉にそっくりな、横浜FCユース斉藤光毅という逸材。

 彼を観る度に、高校時代の中島翔哉を思い起こさせる。

 横浜FCユースの“最高傑作”との呼び声が高いFW斉藤光毅は、卓越した個人技とアジリティーを兼ね揃え、シュートセンスも抜群で、常にゴールを目指してプレーし続けられる選手だ。

 彼が中島を彷彿させるのは、技術的なものやプレースタイルだけでない。“根っからのサッカー小僧”という面でもそっくりなのだ。

 12月24日。世間はクリスマスイブを迎えている時に、斉藤は群馬県の前橋総合運動公園陸上競技・サッカー場のピッチにいた。

 プリンスリーグ関東参入決定戦・横浜FCユースvs.明秀日立の一戦である。

 この試合は関東の各都県リーグを戦い、それぞれのリーグ1位のチームが2つにわかれて、トーナメント戦を実施。そこで2勝して1位になったチームが翌年のプリンスリーグ関東に昇格できるシステムだ。

ブラジル遠征直後でも元気。

 勝てばプリンス関東、負けたら県リーグに逆戻り。この重要な一戦のピッチに立った斉藤だが、その前日にブラジルから帰国したばかりだった。来年のU-20W杯(ポーランド)を目指したU-19日本代表のブラジル遠征に参加し、現地でU-19ブラジル代表に勝利するなど、貴重な経験を積んでいた。

 横浜FCユース・小野信義監督はこう語る。

「昨日の夜6時に成田空港に着いて、僕に会うなり“俺、90分行けますよ!”と言ってきた。僕はまだ何も言っていないのに(笑)。その辺から駆け引きが始まっていて“飛行機でほとんど寝ませんでした”と。帰って来てご飯食べてすぐ寝て、今日の朝もトレーナーと軽いランニングを入れて、その後“もう全然問題ないです!”と言ってきた。勝つための確率を高めるための1つが彼のスタート起用でした」

機内でも睡眠時間を調整。

 ブラジルから日本への移動時間は24時間を優に超える。地球の裏側からの移動だけに、いくら若いと言えど、相当な負担があるはずだ。だが、斉藤はこの試合に出場すべく時差調整までしていた。

「ブラジルでは試合に集中していましたが、最後のブラジル戦が終わってから、チーム(横浜FCユース)の結果にそわそわして……(笑)。(22日の1回戦)昌平戦に勝って、今日の決定戦に進んだことが分かった瞬間、こっちの試合に切り替えました。機内では“このタイミングで寝て、このタイミングで起きよう”と考えて実行していました。

 途中で灯りを落とされて暗くになった時は相当きつかったですが、寝るのを我慢して時差調整に努めました。正直、かなりキツかったですが(笑)、全てはこの試合に出るため。自分が所属するクラブですし、来季プリンスリーグ関東に昇格することは最低限のことだと思うので、そこは絶対に上がらないといけない。今年の目標でもあったので、そこは絶対に出たかったんです」

 こう語った斉藤は、1トップとしてスタメン出場。前線でマークを外しつつパスを受けると、複数人かけて来た明秀日立の守備をいなす。軽やかなステップと正確なボールタッチでボールを渡さないのだ。さらにシンプルに周りにはたき、フリーになった味方を有効活用した。

自らのゴールで勝負あり。

「すぐに息があがったり、身体が重かったりしたので、もう少しゴール前で得点に絡むプレーがしたかったですが、難しかったです。でも、僕が潰れたりワンタッチで落としたり、逆サイドに展開したりするプレーが多かったのは良かったと思います」

 存在感が全く違った。味方と相手の意識を集中が斉藤に集まる。つまり完全に彼がゲームを支配していたのだ。

 横浜FCユースは前半だけで1年生MF中川敦瑛が2ゴールを奪って試合を優位に運ぶ。「正直、かなり刺激になりました」と斉藤が語る中で、58分に鮮烈なプレーを見せた。

 味方のミドルシュートを相手GKが弾くと、真っ先に反応した斉藤が文字通り身を投げ出すような形で、ゴールに押し込んだ。

 ゴール後、1回転して起き上がると、飛び出してきたベンチに向かって全力疾走。コーナーフラッグ付近でたちまち歓喜の輪がでっきた。エースの一撃とあって、チームの喜び方は尋常ではなかった。全員が雄叫びを挙げ、喜びを爆発させていた。

クラブ、代表で多忙の1年。

 82分までプレーした斉藤の活躍もあり、チームは3−0で勝利。来季のプリンス関東昇格を手にした。

「本当に嬉しいです。何としてもこの試合には出たかったので、点を獲ることで貢献できてよかった」

 中学から横浜FCの下部組織に加わった彼にとって、2018年は多忙な1年だった。高2ながらトップチームに登録されると、7月のJ2第24節のFC岐阜戦で途中出場でJデビュー。これはクラブ史上最年少トップレビュー記録(16歳11カ月11日)となった。

 続く第25節のツエーゲン金沢戦で出場して以降は出番がなかったが、10月のAFC U-19選手権に最年少となる代表招集。グループリーグ初戦の北朝鮮戦で先制弾をマークし、続くタイ戦、イラク戦でもゴールを決めると、U-20W杯出場が懸かった準々決勝のインドネシア戦で、MF藤本寛也(東京ヴェルディ)の負傷を受けて15分から緊急投入された。

 そこでも持ち前のドリブル突破と、効果的な3人目の動きを見せて、2−0の勝利に貢献した。

「年齢は一切関係ないと思っています。ピッチに立ったら対等ですし、僕はどの試合も全力で、貪欲にやっていくだけです」

 あどけない表情で体格も華奢だが、彼のメンタリティーは誰よりも強く、そしてゴールへの意欲も人一倍強かった。

中島翔哉と同じ言葉の強さ。

 いわゆる小綺麗にサッカーをする選手ではない。常に相手にとって嫌なプレーを考え、ゴールへの道筋を見つけ出して迷わず実行する。

 線の細さをディスアドバンテージとしない足下の技術、アジリティー、そして運動量を持ち、何よりも貪欲にゴールを狙い続ける。このメンタルの強さこそが、中島翔哉と斉藤光毅がダブって見えるゆえんだった。

 彼との会話を重ねると、その印象を強く抱く。

 中島を高校1年から取材しているが、その言葉は熱意と野望にあふれていた。

「僕はもっともっと上手くなりたいんです。それ以外は考えていないほどなんです。どんな試合、どんな練習でも絶対に手を抜きたくないし、そこで抜くような選手では上には行けませんから。僕は(ヴェルディの)トップチームに上がることはもちろん、世界で活躍したいんです。日本人初のバロンドールは僕だと思っています。だからこそ、毎日を全力で取り組みたいし、サッカーに捧げたいんです」

 中島が高2時の言葉だ。その後のサッカー人生は紆余曲折があったが、今は日本代表で10番を背負い、ポルトガルで注目を集める選手にまで成長した。

「サッカーに飢えている子」

 そして、明秀日立戦後に自分の想いを語る斉藤の姿は、あの時の中島と重なって見えた。

「僕は常に目の前のことを全力でやりたい。それは当たり前のこと。練習もすべて全力でやりますし、抜く所はないくらい全力でやります」

 どこまでもサッカーが大好きで、誰よりも上に行きたい気持ちを持っている。「誰よりもサッカーに飢えている子。それが周りに良い影響を与えてくれる存在」と、小野監督も目を細める。

 だからこそ、斉藤にとって2019年もまた重要な1年となる。高3になるが、トップチームの一員としてレギュラー争いを制し、かつU-20W杯のメンバーに選ばれて、世界を経験する重要な機会が待っている。

「トップで試合に出て、2桁得点などしっかりと活躍できるように、この年末年始はキャンプに向けて、上を見据えて目の前の1つ1つを全力でこなしてたいと思います。僕の中でU-20W杯は目標ですが、そこで試合に出て点を決めて勝つことまで求めていて、その先に東京五輪も行きたいと思っている。しっかりと前を見つめてやっていきたいと思います」

久保建英にも負けたくない。

 目標を共有する同年代のライバルの存在も、サッカー小僧を突き動かしている。

「僕には同い年の(久保)建英という存在がいます。アイツが結果を残したら危機感が生まれますし、“俺はこんなんしていていいのか?”、“もっとやらないといけないんじゃないか?”という気持ちがわいてくる。前に進む原動力の1つになっています。

 この年代辺りから、チヤホヤされる可能性はありますが、そこで調子に乗ったり、勘違いをすることはしないように意識をしていますし、建英はそういう締める存在としてもでかいとは思いますが、自分も信念をしっかり持って、動じないことが大事だと思います」

「久保選手に追いつきたい、追い越したいよりも、自分が突き抜けたいという想いが強いですか?」と聞くと、彼は鋭い目つきで「もちろんです」と答えた。

 群馬の地で輝きを見せたサッカー小僧。観客は少なかったかもしれない、注目はされていないかもしれない。

 だが、彼にはそんなことは関係ない。ただただ仲間とサッカーがしたい、チームを勝たせたい。

 何よりサッカーをしていたいし、サッカーがうまくなりたい。

 この純粋な気持ちこそが才能であることを改めて感じた。

文=安藤隆人

photograph by Takahito Ando


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