“福西崇史監督”が明かす就任経緯。「現役復帰で悔しさを味わったから」

“福西崇史監督”が明かす就任経緯。「現役復帰で悔しさを味わったから」

 2019年、南葛SCの監督に就任することになりました。自分にとって指導者としての第一歩なのでドキドキ感があります。昨年は選手として現役復帰しましたが、そこで感じたこと、そして指導者になろうと決断した経緯を話しますね。

 クラブから選手としてのオファーがあったのはロシアW杯が終わった、2018年8月のこと。南葛SCは現在東京都社会人1部リーグに所属していますが、将来的なJリーグ入りを目指しているクラブ。「ピッチ内で経験を伝える役割を果たしてほしい」、「ピッチ内でどう状況判断していくかを伝えてほしい」など熱意ある言葉を受けて、「もちろん自分で良ければ」と、期間限定での復帰を決めました。

復帰して実感した大変さ。

 そこから11月の関東社会人大会を目指してトレーニングに臨んだんですが、何よりも大変だったのが、自分のコンディションを上げていくことでした。まず練習中にケガをしてしまっては、選手としてプレーができないですからね。

 よく「トレーニング、本当にフルで参加していたんですか?」と聞かれたんですが、もちろん、やるからには本気でやりましたよ(笑)。とはいえ最初の方はフルメニューで参加しながら、段階的に自分の身体を鍛えていくイメージでした。

 その中でも特に気を使ったのは守備の部分。どうしても球際で身体を入れたりするので、自分の中で制限していた期間もありました。「ここまでやってしまうと、どこか痛めてしまうかも」というのは感覚的に分かりますからね。

 実際、トレーニングをしていくうちに、ケガしそうになったことは何度もありました。練習後には足が痛いことは当たり前だし、Jリーグでプレーしていた10年前に比べると年齢を重ねているわけだから、回復力も落ちている。約2カ月のトレーニング期間を経て、11月の関東社会人大会に無事臨めました。ただしそこで試合に臨む難しさを感じたわけですが……。

初戦から感じた難しさとは。

 初戦(vs.与野蹴魂会)は2−0で勝利して、自分も先発して後半途中までプレーしました。観客の前でプレーできる嬉しさがある一方で、自分のプレーには満足していなかったし、そして試合内容としても快勝とは感じていませんでした。

 実は大会前からクラブスタッフから「関東社会人大会というトーナメントになると、やはり勝ちたい気持ちが出過ぎてしまって、練習でやってきたことがなかなか出せなくなる」という話を聞いていました。実際、ピッチに立ってプレーしてみると、「ああ、言っていたことはそういうことなんだな」と実感しました。

 負けたら終わりのトーナメント戦なので、とにかく両チームともボールを前線に蹴り合ってしまう。中盤でボールを落ち着かせたり、緩急をつけたり……という展開に持ち込めなかったんですよね。

苦しい状況をどう変えるか。

 2試合目(vs.東邦チタニウム)は序盤に先制点を許しました。そこからチームは早く同点ゴールが欲しいという焦りが出て、前に急ぎ過ぎる。流れの悪い時間帯が続きました。

 この状況を少しでも変えられるとしたら……とピッチ内で考えていました。たとえば自分がボールを持った時にすぐボールを離さず、相手の守備がかなり寄せてきてからパスを送るようにしました。相手が自分に食いつくことで、味方にスペースを少しでも与えられれば、と。パスは相手を崩すための手段という意識をチームに見せたかったですから。

 ただ、結果は0−1で敗戦。勝利、そして関東リーグ昇格に貢献できなかったのはやっぱり悔しかったです。

 南葛SCにはJリーグを経験した選手だけでなく、ブラジル人選手もいます。練習で一緒にやってみると、イメージ通りのところにパスを出すなど、技術面は大丈夫だなと感じていました。

 それと同時に、彼らは「なんとか結果を残さなきゃ」という思いがとても強い。その分だけ、どんどんボールを早めに欲しがる流れになってしまい、攻撃が単調になってしまう。気持ちに折り合いがつけきれず、練習でやってきたことが出し切れなかったのかな、と。

プロとは違う練習環境で。

 試合以外でもアマチュアクラブは、プロと違う面が色々とあるなと感じました。選手1人ひとりのモチベーションに強いものを感じる一方で、昼間は仕事をして、夜の限られた時間で練習する環境でした。

 ちなみにグラウンドも女子チームと併用して使ったり、終了時間が来たら照明が落ちて「あっ、もう終わりなんだ!」って思うことがよくありましたからね。

 何より選手それぞれが仕事しながらの活動だから、練習に参加できないケースもあります。自分を含めてですが、全員でそろってトレーニングする機会がなかなか得られない。その辺りが戦い方を落とし込む難しさだと体感しました。

 自分自身プロでやり続けてきましたが、プロの考え方だけでもダメだし、アマチュアの考え方だけでも強くはならない。そこを上手くかみ合わせていかないと、Jリーグ以外の舞台でも簡単には勝てないと痛感しました。

監督就任の決め手は悔しさ。

 南葛SCから監督就任のオファーがあったのは12月でした。現役復帰してみて、身体の調子が良ければ一緒にトレーニングすることはできても、コンディション面を考えて1シーズン通じて選手という立場は難しいのかな、と感じてました。その一方で指導者として何か貢献できないか、という思いも持っていました。

 監督を引き受ける決断まで、少し期間を設けました。指導者のキャリアとして自分はどう歩むべきか、その中でどこでスタートを切るべきなのか。コーチか、育成組織やアカデミーなのか、それともいきなりJクラブなのか……色々な選択肢を頭に浮かべて、決め手になったのは、南葛SCというクラブでプレーしたこと、そして「悔しさ」でした。

 東邦戦後、選手たちやスタッフの顔を見たとき、本当に悔しそうな表情を浮かべていました。自分と同じ気持ちを抱えているんだなと思ったし、スタッフとピッチサイドで「これからどう臨んでいけば、クラブとして成長していけるのか」という話し合いもしました。彼らの行動1つひとつに気持ちを感じたし、その悔しさを晴らすのは南葛でしかできない、と。

目指したい理想のスタイルは?

 知っていることがまったくゼロのクラブではないので、実際にプレーして得た経験を生かしていけるのではと。一緒にボールを蹴った選手だからそれぞれの性格や考え方が分かるからこそ、何かプラスをもたらせるんじゃないかなと思っています。

 また今年は多くのJリーグ経験者(※鹿島などでプレーした青木剛と佐々木竜太や、三原向平らが加入)が加わりました。自分に託された役割を、彼らが伝えてくれるはずと期待しています。

 引き続き解説者としての仕事と並行して、クラブの公式戦やトレーニングに関わっていきます。実際、今はアジアカップのためにUAEに来ていますからね。解説でも監督という立場を経験して、新しいことに気づいたら言葉で発信していきたいです。

 監督として目指したい理想のスタイルは……やはり、自分たちの思い描くイメージ通りのサッカーは実現してみたいです。ボールを支配するアクションサッカーと同時に、相手にも柔軟に対応できる、というものですね。「楽しくて勝てるサッカーを披露したい」というのは、あの頃のジュビロでプレーしたからこそ、かもしれません。

 監督就任で注目されることはありがたいですし、責任感もある。だからこそチームを作り上げることに全力を尽くすので、ぜひ試合を見に来てほしいと思います!

(構成・茂野聡士)

文=福西崇史

photograph by Satoshi Shigeno


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