開幕2カ月、新生Vリーグの通信簿。新規ファン獲得に必要なこととは?

開幕2カ月、新生Vリーグの通信簿。新規ファン獲得に必要なこととは?

 今季新しくなったバレーボールの国内トップリーグ、V.LEAGUEが開幕して約2カ月が経ち、日本のバレーボール界の現状が浮き彫りになってきた。

“プロ化”ではないため変化がわかりにくいが、今季から変わったことの1つがホームゲームの増加だ。完全なホーム&アウェイではないが、ビジネス化の理想のもと、これまで各地のバレー協会などが行なっていた運営はホームチームに任され、収益もホームチームに入る。

 ホームゲームの集客や一体感、新リーグが掲げる「地域密着」という意味で、うまく滑り出したチームの1つが男子のDivision 1(V1)に所属するパナソニックパンサーズだ。2018年12月8、9日に大阪府枚方市のパナソニックアリーナで行われたホームゲームはほぼ満員の2800人(8日)、2950人(9日)の観客を集めた。

 普段練習している地元の体育館で試合を開催できるのがパナソニックの強みだ。チームは枚方市のPR大使を務めており、数年前から市内のモールでイベントを行うなど、地元の人々と触れ合う機会を増やしてきた成果が実っていると言える。

失敗してでもアイデアを。

 加えて今季は新しいアイデアを次々に実行してきた。

「『変わってないやん』って言われるより、『めっちゃ失敗してるやん』って言われた方が、何かやろうとしている感がある」

 そう話すのは、元リベロで、今は運営を担当している山本拓矢マネージャーだ。

 観客が試合中にツイッターでその日のMVP選手を投票したり、1月5日のホームゲームは「枚方市民応援デー」と銘打って枚方市民を招待し、枚方市の他のPR大使とのコラボも企画。他にも費用を抑えつつ新しい試みを実践してきた。

「1年目からバンバンやったほうがいいと思うんです。今季はとりあえず様子を見ようとか、あのチームはこうしているからうちもこうしよう、みたいなのは嫌で。うちはうちらしくやればいいんじゃないかなと思っています」と山本マネージャーは言う。

開幕戦が最多観衆だった。

 年内のV1男子の試合で最も多くの観客(3000人)を集めたのが、サントリーサンバーズのホームゲームとして東京都・大田区総合体育館で開催された開幕戦、サントリー対JTサンダーズ戦だった。

 入り口には大きなゲートや赤いのぼりを並べ、プロジェクションマッピングで華やかに開幕を演出。会場内は横断幕や観客に配ったビブスでチームカラーの真っ赤に染め上げ、ホーム感を高めた。

 前売りの段階ではチケットの売れ行きはさほどよくなかったが、当日券が予想以上に売れて満員になったという。19時30分試合開始でビール販売も行なうナイター開催ということと、仕事帰りに立ち寄れる立地が噛み合った結果のようだ。

 ただ全体的には集客に苦しんでいるチームが多い。サントリーも地元・大阪でのホームゲームでは苦戦しており、パナソニックもサブホームタウンである福井市での集客は難しいという。

集客数が昨季よりも減少。

 今季の集客数は男女ともに減少している。男子でいうと、V1に当たる昨季のプレミアリーグのレギュラーラウンドは1試合の平均入場者数が2000人だったが、今季は12月までの試合の平均が1436人と、1試合当たり約500人も減っている。

 ただそれは、ファンが減ったというより、これまでごまかされてきたバレー界の現状があらわになってきたということだろう。今季はホーム以外のチームが、割引券などで動員をかけて空席を埋めることに力を入れなくなったことが、集客数の減少に影響していると思われるからだ。

 チケットを買って見にきてもらうためには――。今季は各チームがその難しさを痛感しながら、それぞれ試行錯誤している。

 その中で選手たちの意識は確実に変わっている。選手は魅力的なパフォーマンスや試合で観客を引きつけることが第一だが、コート外でも、積極的にSNSなどで発信する選手が増えた。

 ただSNSの情報は、もともとバレーに興味を持っている人には届くが、そうでない人にはなかなか届かない。ファンでない人にもVリーグの存在を知らせ、興味を持ってもらわなければリーグの発展はない。

既存ファンがシフトした状況。

 豊田合成トレフェルサの主将、古賀幸一郎はこう問題提起した。

「Vリーグが新しくなるということを、果たして日本全国の何人が知っていたのか。今は既存のファンの人がそのままシフトしたような状況だと思うので、バレーボールと接点がない人をどう取り込んでいくか。ターゲットをちゃんと選別した上で、そこにしっかりアプローチしていかないと」

 そこで大きな役割を担うべきはVリーグ機構だ。V機構も新しい取り組みをしているが、それらも既存のバレーファンに向けたものが多い印象がある。

チーム関係者からは危機感が。

 新リーグがスタートしたものの、Vリーグが認知されていないことに多くのチーム関係者が危機感を抱いている。同じ時期に立ち上がった卓球のTリーグがテレビや新聞で大きく取り上げられているのとは対照的だ。

 そんな中で、チーム関係者から頻繁に耳にするのはVリーグ機構への要望だ。

「V機構が『Vリーグを変えます』と決めて新リーグを立ち上げたのだから、チームに丸投げではなく、もう少し方向性を示してほしい」

「“Vリーグ”の存在自体を知らない人も多い。それを日本国中に知らせるのはV機構の役目。例えばテレビCMを流すなど、そこは大々的にやってほしい」

 Vリーガーの中で特に発信力のある豊田合成のウイングスパイカー高松卓矢は、ことあるごとにVリーグをPRしながら、V機構へのもどかしさものぞかせる。

「Tリーグさんは、テレビで取り上げてもらったり、駅のホームに卓球台を置いて、そこで会社帰りのサラリーマンが卓球をしていたり、いろいろと動いていた。Tリーグという新しいプロリーグができたんだよということを、周りに何とかして伝えたいという熱意が伝わってくるんですが、Vリーグ機構さんからはその熱意が伝わってこない。

 ただリーグを新しくしましたと言っても、誰もついてきません。Vリーグを盛り上げるために好き勝手にやってくれと言われても、それは違うと思うんです。どうやったらVリーグが周知されるかということを考えてやっていってもらいたいというのが僕の意見です」

コストの問題をどう解決?

 例えばVリーグを知れ渡らせるような広告をすることについて、Vリーグ機構の沖隆夫事務局長に考えを聞いたところ、こう語った。

「コストの問題があります。各会場にタラフレックスコートやチャレンジシステム、ビジョンを設置するだけで何億円とかかる。そのどれかをやめてテレビCMを出しますか? という話になります。まずは地元に根付いて地元のお客さんをどう呼ぶか。今シーズンはその餌まきだと考えています」

 ただ、地元に3000人以上収容できる体育館がなかったり、Bリーグなど他競技との兼ね合いで会場を確保できず、ホームタウンで思うようにホームゲームができないチームもあり、現状は矛盾を多く抱えている。

 新しいことをスタートすれば様々な課題が出てくるのは当然のことだが、旗振り役のVリーグ機構に対するチームの信頼が失われかけていることは問題だ。Vリーグを発展させるという目的は同じ。

 Vリーグ機構はチームの声を聞き、今一度、役割を見つめる時ではないだろうか。

文=米虫紀子

photograph by Aki Nagao


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