ドラフトまでに絶対覚えて欲しい!“白鴎大のラミレス”とは何者だ。

ドラフトまでに絶対覚えて欲しい!“白鴎大のラミレス”とは何者だ。

 昨秋、行われた関東地区大学野球選手権(横浜市長杯)のことだ。

 その男は、三塁前のボテボテのゴロに猛チャージをかけ、ベアハンドでキャッチすると一塁へ力強い送球でアウトにして見せた。

 通常なら内野安打になりそうな難しい打球だった。しかし、彼は違った。捕球から送球までのボディバランス、および体の使い方はおいそれと真似ができない。そして、なによりバズーカ砲のような強肩が目を惹いた。

 聞けば遠投は125m。白鴎大学グラウンドのホームからセンターまでの距離122mをノーバウンドで放り投げることができるという。秘められたポテンシャルは相当高い。

 白鴎大学・黒宮寿幸監督も興奮気味に太鼓判を押す。

「自分は阪神に行った大山(悠輔)よりも能力が高いと思っています。あの肩は大山にはないですもん。大山が、いくら肩が良いと言っても、ラミの方が絶対いい。やっぱりモノが違います。

 飛距離も大山は大学時代にバックスクリーンに入れられなかったと思うんですけど、ラミ(ラミレス)はバックスクリーンに入れられるほど飛ばします。そういうひとつひとつのポテンシャルはラミの方が上。僕はそう思っています」

白鴎大の“ラミレス”。

 白鴎大学の新4年生、ラミレス・レンソ。

 この名前をぜひ憶えていてもらいたい。

 出身は栃木県宇都宮市。ペルーでプロサッカー選手だった父の下で育った。日本語とスペイン語をごく自然に話すバイリンガル。ラテン系の明るい性格を一見想像させるが、ラミレスはわりと大人しい性格だ。

 この冬から主務を務めることになった鶴見晃良もこう言う。

「怒っている姿は見たことがないですし、誰よりも率先して下働きをしてくれる先輩です。練習後の片付けとかも一緒になってやってくれるし、だからってわけではないですが、とても頼りになります」

逆転を信じて盛り上がったが……。

 そんなラミレスの素の一面を感じることができたのは、横浜市長杯準々決勝、神奈川大学戦の試合後のことだ。試合の感想を求めると、彼は真っ先にこう呟いた。

「4年生ともう一緒に出来ないんだなって……。それが一番です」

 グラウンドからベンチ裏へ引き揚げる際、とめどなく涙がこぼれたのだろう。その目は真っ赤に充血していた。

 この試合、2対2の同点で突入した延長タイブレーク。先攻の神奈川大が3点を奪うと、これで勝負あったかという空気が球場中に漂い始めた。

 その裏、白鴎大が意地を見せる。代打・龍昇之介の中前適時打で2点を返すと、なお一死一、二塁の場面で打席には4番のラミレスを迎えた。

 この秋は関甲新学生野球連盟で2本塁打を放ち、打点王にも輝いたラミレス。当然、一発逆転が期待された。

 しかし、カウント2−2からの5球目、低めのボールを掬い上げると、その打球は力ないライナーとなって、セカンドのミットに「ポスン」と収まった。

 さらに不運だったのがこのとき、ランエンドヒットがかかっていたことである。飛び出した走者は帰塁することが出来ず、あっけない形でゲームセット。逆転を信じて、盛り上がったスタンドの応援団も、さすがに意気消沈した様子だった。

「あれから相当落ち込みました」

 その試合から1カ月半が過ぎた12月中旬、栃木県小山市にある白鴎大学のグラウンドに行って、ラミレスと会ってきた。まずは話のとっかかりにと、その試合の出来事を振ると、少しすまなそうな表情を浮かべ、彼はこう返した。

「正直、あれから相当落ち込みました。1人になるとやっぱり考えちゃうんですよね」

 今でもふとした場面で、あの試合、あの打席のことが頭をよぎるという。

「バットを振り切っていたら内野の頭を越えていただろうか?」

「逆に転がしていれば二死二、三塁となって次のバッターが返してくれたんじゃないか?」

 そんな自問自答を繰り返しては、頭からかき消す。だからこの冬の自主練習時間は、あらゆる場面を想定してひたすらバットを振る時間に充てた。

なぜ黒宮監督は彼をキャプテンにした?

 そんなラミレスについて、白鴎大・黒宮監督はこう話す。

「あの場面、あの子(ラミレス)で終わって良かったんだと思います。変な話ですけど、自分は神様がそうさせてくれたんだと思うんです。あそこで打ってくれるのが、もちろん一番です。でも、打てなかったこの結果も、これはこれでありなんじゃないかって思っているんです。なぜかって、このチームは来年のチームなので。

 こんなことを言うと4年生には本当に申し訳ないと思うんですけど、やっぱりこのチームは今の3年生が主体のチームです。ラミで終わって、ラミが『悔しい、打てなくて申し訳ない』とあそこで思うこと。今後を見据えたらこの結果もありだったのかなって思うんです」

 この冬、黒宮監督はラミレスをキャプテンに任命した。

 明治神宮大会出場まであと一歩と迫りながら、自身の打席でその道が途切れてしまった、あの場面を糧にして、ラミレスが選手として、もう一枚も二枚も皮が剥けるようにと期待した。

実力、人間性ともに一目置かれる存在。

 今季の白鴎大学はラミレスの他にも、投手の中村伊吹、内野手の大下誠一郎、外野手の金子莉久と、プロや社会人チームのスカウトが注目する逸材が多く揃っている。その分、アクの強さも人一倍だが、そんな個性派集団をまとめられるのも、実力的にも、人間性的にも一目置かれるラミレスだからと言えるのではなかろうか。黒宮監督がこう話す。

「あの子はムチャクチャ優しいんですよ。キャプテンにした理由もそこなんですけど、人間性が悪ければ本来であれば周りから否定されると思うんです。でも、誰も彼がやることに反対しなかった。

 なぜかと言うと彼はチーム内で一番優しい。どの部員に対してもコミュニケーションがとれるし、けっして怒らないんです。その上、大下という絶対的な実力を持つ人間に対しても『やめろ』と言うことができる」

 実力がモノを言う世界でも人間性を否定されると途端に上手く回らなくなるのが組織というものである。その点、ラミレスはそんなことはしない。

 普段は物静かで、言葉数こそ少ないが背中でものを見せるタイプとでも言うのだろうか。誰よりも練習をして、人一倍に下働きも率先して行うという。

獲れるアウトを確実に獲ること。

 ポジションもかつて守っていたショートから現在はサードにコンバートされた。これも考えがあってのことだ。黒宮監督がその理由をこう話す。

「自分はサードが一番うまい選手じゃないと不安なんです。これは自分の勝手な考えですけど大学野球ってサードが一番ボールが飛んでくるポジションだと思うんですね。だから(優先順は)サード、セカンド、ファーストで最後にショート。自分はそんな風に考えていますね」

 獲れるアウトを確実に獲る。これが黒宮監督の流儀だ。三遊間への深いゴロが飛んだ場合、これをショートがキャッチして、アウトにするのは確かに理想的だ。だが、現実はそう上手くいかない。内野安打にしてしまうのが大半であるし、これならばピッチャーも諦めがつく。

 ならばピッチャーが打ち取ったと思う打球はどうか?

 たとえば三塁前のぼてぼてのゴロや、同じ三遊間でもサード寄りの鋭い打球に対し、これをキャッチしてアウトにしてくれた方が、投手心理を考えても納得しやすいし、チームに勢いを与えることにも繋がる。

憧れはエンゼルスの名手シモンズ。

「小さい頃から遊び心を持ってボールに接していたのはあります」

 そんなラミレスが目標とする選手がいる。ロサンゼルス・エンゼルスのアンドレルトン・シモンズ。彼の動画を見ながら、グラブ捌き、体の使い方などのフィーリングを得ているという。

「凄いなと思うのは瞬時の判断ですね。メジャーと日本では少し考え方が違うと思うんですけど、シモンズを見ていると、頭の回転が速いし、こうすればもっと速く獲れるみたいな考え方が面白くて、メジャーの動画を何回か見たりしながら、こういう考え方もあるんだなって強く影響を受けました」

 冒頭でも書いたように昨秋の関東地区大学野球選手権では、どちらかと言えば守備面の方が目立った。

「これは内野安打かな?」と、思わせる打球もラミレスなら確実にアウトにしてくれる。ただ単に捕球範囲が広いだけじゃない。アウトを獲れる範囲が広い。それがラミレス・レンソの強みだ。

応援してくれる父母への感謝。

 取材の終盤、「思い出の試合は何か?」と質問をすると、彼は父の日と母の日に行われた練習試合でそれぞれホームランを打ったことと答えた。

 野球を始めた当初、父はルールの複雑さに、あまり試合を見に来てくれなかったというが、それでも、ラミレスが高校(文星芸大付)で試合に出始めると、暇を作っては球場の応援に駆けつけるようになり、今ではスタンドで父の姿を見ない日がないというくらい必ず駆けつけてくれるようになったという。

「もちろん嬉しかったですよ」

 彼の表情がこの日一番の笑顔となった。次はこの笑顔がどこで見られるだろうか。それを楽しみに2019年の白鴎大、そしてラミレスの姿を追いたいと思う。

文=永田遼太郎

photograph by Ryotaro Nagata


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