森保Jの“ワーストマッチ”は吉兆。アジア杯は初戦が悪いと優勝する?

森保Jの“ワーストマッチ”は吉兆。アジア杯は初戦が悪いと優勝する?

 森保一監督の就任後では、ワーストマッチと言っていい。1月9日に行われたアジアカップのグループリーグ初戦は、前途多難を予感させるスタートとなった。格下のトルクメニスタンに、日本は3−2で辛うじて勝利したのである。

 国際大会の初戦が難しいのは、共通理解となっていたはずだ。前回優勝のオーストラリアが、ヨルダンに0−1で敗れた。東南アジアを牽引するタイが、アウトサイダーと目されていたインドに1−4で大敗した。韓国がフィリピンに苦しみ、1−0で何とか勝利した。初戦からポテンシャルを爆発させたのは、イエメンを5−0で一蹴したイランぐらいである。

 グループステージ第1戦の最終日に登場した日本は、FIFAランキングの差がそのままスコアに反映されないことを目の当たりにしている。前日会見に臨んだ森保監督と主将の吉田麻也も、オーストラリアや韓国の戦いぶりに触れて警戒心を強めた。「どの対戦国も力があるからここにきている」と、指揮官は話した。

 それがどうだろう。大会の序盤を覆う負の連鎖に、危うく呑み込まれるところだった。

最大の原因は、精神的な油断。

 前半は評価できるところが何ひとつない。

 ボールを大切にする、自分たちの持ち味を生かして崩す、といった意識が横パスやバックパスにつながり、攻撃の矢印が前へ向かないのだ。5バックで待ち構える相手守備陣のバランスを乱すような仕掛けは見当たらず、足元へのパス交換ばかりでボール際の攻防に弱いのだから、攻撃のリズムが生まれるはずもない。タテや斜めへ攻撃のベクトルを向ける中島翔哉の不在が、大会初戦にしてチームの攻撃に影を落としていく。

 攻め切った末に攻守が入れ替わるのではなく、ビルドアップでボールをロストする回数も増えていき、カウンターに活路を求めるトルクメニスタンに慌てさせられてしまう。その結果が26分の失点だった。

 スーパーなミドルシュートを叩きこまれたとはいえ、それ以前にもシンプルなタテパスから決定機を許していた。ボールの失い方は悪く、攻撃時のリスクマネジメントはあいまいだったが、ビハインドを背負うことになった最大の原因は「やられるはずがないだろう」との精神的な油断にほかならなかった。

 さらに言えば、0−1とリードされた36分にも決定的なシュートを許している。GK権田修一の好守がなければ、この時点で致命傷を負いかねなかった。

大迫の2つのゴールを生んだもの。

 1点ビハインドで迎えた後半は、立ち上がりからタテパスやサイドチェンジを多用する。ピッチの横幅と奥行きを活用することで、5バックの間隔をようやく広げられるようになっていく。

 56分の同点弾は分かりやすい。中島に代わって2列目の左サイドで起用された原口元気が、タッチライン際からカットインしてグラウンダーのパスをゴール前へ通す。前半に比べてスペースを持てた大迫勇也は、トラップからフィニッシュへ冷静につなげてネットを揺らした。

 4分後の追加点は、センターバックの吉田のタテパスがきっかけとなった。左サイドの原口がヘディングでペナルティエリア内左へ落とすと、後方からサポートした長友佑都が相手DFとGKの間に身体をすべり込ませてボールをつなぐ。GKが飛び出した無人のゴールへ、大迫が右足で押し込んだ。

3−1で終わらせることができれば……。

 わずか4分間での逆転劇には、原口、大迫、長友、吉田が直接的に絡んでいる。経験者たちが苦境を救ったわけで、それこそが彼らの存在意義でもある。

 一方で、チームに勢いをもたらすにはフレッシュな力の躍動が求められる。その意味で、71分の追加点は価値がある。

 柴崎岳のタテパスを起点に大迫、南野拓実とパスがつながり、ペナルティエリア内の堂安律にボールがわたる。繊細なタッチとともに身体を反転させた20歳は、得意の左足でゴールネットを揺らした。

 このまま3−1で試合を締めることができていれば、後半の巻き返しに多少なりとも及第点をつけることはできた。ところが79分、南野に代わって出場した北川航也がハーフライン付近でボールを失い、1本のスルーパスから相手FWに抜け出されてしまう。

 1対1のシーンでGK権田にできることは少ない。相手FWを倒してPKに望みをつなげたものの、2失点目を喫してしまった。

優勝までは7戦の長丁場。

 後半は自分たちがやりたいサッカーに固執せず、スコアを引っ繰り返して勝ち点3をつかんだ。最低限の結果は得ることができた。

 アジアカップは今回から24カ国出場に拡大され、優勝するには7試合戦わなければならない。長丁場の戦いを想定すれば、初戦からアクセルを踏み込むことはできない。右肩上がりに調子を上げていくのがベターだ。

 苦戦は良薬に成り得る。初優勝を飾った'92年大会は、UAEとのスコアレスドローから頂点へ駆け上がった。ジーコとともに連覇を成し遂げた'04年大会は、オマーンを辛うじて振り切った。アルベルト・ザッケローニのもとで4度目の優勝を飾った'11年大会は、'92年と同じくドローからのスタートだった。

 大会史上最強のチームとうたわれる'00年大会は、サウジアラビアに4−1で快勝した。ただ、4−0とリードしたあとの失点は後半アディショナルタイムで、守備陣のコミュニケーション不足によるものだった。歴代の優勝チームは、課題を塗り潰しながらアジアを制していったのである。

 だとすれば、勝ってなお不満の残るトルクメニスタン戦を、前向きにとらえることはできるはずだ。前向きにとらえなければならない。

 W杯の経験者はいるものの、森保監督のチームは結成間もない。アジアカップは初の国際大会である。そして、乗り越える壁が高いほどに、成長の歩幅は広い。

文=戸塚啓

photograph by Getty Images


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