筒香、菊池、秋山のメジャー願望を難しくする、FA時点での年齢問題。

筒香、菊池、秋山のメジャー願望を難しくする、FA時点での年齢問題。

『逆風は嫌いではなく、ありがたい。

どんなことも、逆風がなければ次のステップにいけないから』

――イチロー

 今オフ、DeNAベイスターズの筒香嘉智を筆頭に、広島東洋カープの菊池涼介や西武ライオンズの秋山翔吾が、将来的に「メジャー挑戦」の意思があることを表明した。

 たった3人ではあるが、日本人野手が何人も「メジャー挑戦」の意思を明らかにするのは珍しい。イチロー(と新庄剛志)以降の数年間、松井秀喜や松井稼頭央、井口資仁や城島健司らが「メジャー挑戦」を果たした頃を思い出す。

 大谷翔平(ロサンゼルス・エンゼルス)の活躍で何かが変わったのだろうか。それとも「世界を目指す」機運みたいなものが生まれているのだろうか。理由は分からないが、大谷のようにアマチュア時代から「世界」を目指す若者もいるぐらいだ。そんなに驚くようなことではないだろう。

 十人十色とは言うけれど、「メジャー挑戦」の表現は違う。日本メディアの各報道によると、彼らはそれぞれこう言ったそうだ。

「小さい頃からの夢。そういう思いがあることを伝えた」(筒香)

「野球をやっている以上、トップのレベルでやりたい。僕もその1人」(菊池)

「来年1年しっかりやった上で、どういう感情があるか」(秋山)

来年実現しても、秋山は32歳。

 少し気になるのは、彼らの「メジャー挑戦」が実現する時の年齢だ。

 最年長の秋山は1988年生まれの現在30歳。菊池は1990年生まれの28歳。そして筒香は1991年生まれの27歳である。彼らは今季、日本でプレーすることが決まっているので、来年に「メジャー挑戦」が実現するとしたら、それぞれ32歳、30歳、29歳になっている。

 それで思い出すのは、今から4年前、福岡ソフトバンクホークスの松田宣浩内野手が、海外FA権を取得して「メジャー挑戦」するという話になった時のことだ。

 日本の報道によると、当時32歳の松田には幾つかの球団が興味を示し、サンディエゴ・パドレスが2年総額4億円(3年目は球団オプション)のメジャー契約を提示したとされている。

 年俸2億円のFA選手というのはメジャーではかなり安い方の部類に入る。松田は結局、4年総額16億円プラス出来高払いでホークスに残留し、「メジャー挑戦」を諦めたが、その決断を責めることは誰にもできないだろう。

青木宣親は「格安」の契約だった。

 2012年には、ポスティングで「メジャー挑戦」を目指した当時30歳の青木宣親外野手(現東京ヤクルトスワローズ)が、ミルウォーキー・ブルワーズと2年250万ドル(3年目は球団オプション)で契約している。

 1年目の年俸は1億円に届かず、これは「格安」といってもいい金額だ。これは当時のポスティング制度が入札球団の「言いなり」に近い形でしか契約できないような側面を持っていたからだろう。

 それでも青木が27歳で「メジャー挑戦」していれば、入札額も入札球団も多かったはずで、契約内容も良くなっていたことは容易に想像できる。

 今オフ、ポスティング制度を使って「メジャー挑戦」を実現した27歳の菊池雄星投手は、シアトル・マリナーズと総額4300万ドル(約47億3000万円)の3年契約(変則オプション契約付き)を結んだ。もしも、菊池があと数年待って30歳を超えてから「メジャー挑戦」を目指していれば、たとえフリーエージェントになっていたとしても年俸10億円を超える契約が出来たかどうか。

26〜30歳が全盛期という認識。

 なぜなら、メジャーでは選手の全盛期≒Prime Time(プライムタイム)が26歳から30歳までの間と認識されているからだ。実際には30代を超えて活躍している選手もいるのだが、「全体的な数からみれば少数派」である。大多数の選手はその「貴重な数年間」を超えると成績が下降し、怪我のリスクも増えるので、契約もそれに準じたものになるわけだ。

 日本人野手が全盛期に「メジャー挑戦」できない理由の1つは、「海外FA権取得まで9年」というルールがあるからだ。それでは日本の高卒新人が海外FA権を取得するのは最速でも27歳の時、大卒なら最速31歳の時になってしまう。

 それ以前にポスティング制度を行使するには球団幹部の了解が必要で、そのタイミングを見計らっている内に選手としての「貴重な数年間」は失われ、「FAで行くよりは若い」というぐらいの年齢になってしまうわけだ。

日本でFA選手が活躍するケースが少ない理由。

 そう考えると、そもそも「国内FA権取得まで8年」というのが長い。

 前述のように最速でFA権を取得する選手は少数派だ。「貴重な数年間」を失った選手の成績が下降し、怪我のリスクが増える。日本で過去にFAで移籍した選手が活躍するケースが少ないのも当然だ。

 ただし、前出の青木のように、30歳前後で「メジャー挑戦」を果たして「逆風」を突き破ってしまった日本人野手もいる。

 青木はオプション契約が終わる3年目、年俸2億円以下だった。ところが同年、トレード先のカンザスシティー・ロイヤルズでア・リーグ優勝に貢献したことが評価され、翌2015年はサンフランシスコ・ジャイアンツと33歳で単年470万ドル(1年オプション付き)で契約している。年俸約5億円への大型昇給だ。

 さらに34歳の2016年はマリナーズと、35歳の2017年はヒューストン・アストロズとそれぞれ単年550万ドルとさらに「額」を上げている。

 日本で築いた地位を捨て、安定した生活を捨てる覚悟を決めて「メジャー挑戦」を果たせば、そういう可能性が生まれる。

 そう言えば、冒頭に言葉を引用させて頂いたイチローが、こんなことも言っている。

「何事も前向きに行動することが可能性を生むんです」。

 新しい時代に訪れそうな日本人野手の「メジャー挑戦」。年齢という名の「逆風」を突き抜けることはできるだろうか。

文=ナガオ勝司

photograph by Kyodo News


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