無冠のポチェッティーノとサッリ。カップ決勝進出へ執念の差が明確?

無冠のポチェッティーノとサッリ。カップ決勝進出へ執念の差が明確?

 イングランドの年始は過密日程の真最中。主力の疲労で欧州で戦うプレミア勢にブレーキが掛かる不安もあることから、例年、FAカップの引き分け再試合や、リーグカップそのものの必要性が論じられる時期でもある。

 ところが今年は、プレミア上位勢2チームの監督に、リーグカップ優勝の重要性が高まっている。1月8日に準決勝第1レグを戦った、トッテナムのマウリシオ・ポチェッティーノと、チェルシーのマウリツィオ・サッリだ。

 ライバル意識の火花が散るロンドンダービー。前回対決した2018年11月のリーグ戦で、最終スコア(1−3)以上の完敗で今季初黒星を喫したチェルシーの雪辱戦という伏線もあった。

 しかし、国内メディアの焦点は両監督の「無冠」に向けられている。

 互いに、ポゼッションを志向する監督として評価は高い。だがビッグクラブで「結果商売」の現場を預かる監督としては、主要タイトル獲得がない点が心許ないとも言われる。

 就任5年目のポチェッティーノは、プレッシングを効かせた積極姿勢でトッテナムをプレミア優勝を争うチームへと進化させた。

 それでも、マンチェスター・ユナイテッドによるヘッドハントが噂された際、適任だという声とともに、サウサンプトンでの1シーズン半を含めて「優勝の味を知らない」という懸念が囁かれた。また今回のチェルシー戦前には、就任1年目の2014-15シーズン、リーグカップ決勝でチェルシーに敗れている過去も蒸し返された。

サッリの評判は上々だが。

 一方、今季からチェルシーを率いるサッリは、本人も触れたようにプレミア経験「まだ半年程度」。ボールを支配して攻め続けるスタイルを素早く浸透させたとして、序盤戦のうちに評判を上げている。

 それでも就任前の評判がさほど芳しくなかった理由は「優勝歴のない59歳」だったから。昨季、ナポリではユベントスとの優勝争いに4ポイント差で敗れた。その前年には、コッパ・イタリア準決勝で同じユーベに敗れている。

 サッカーの内容が好評でも「ここ一番で結果を出せないのでは?」という疑問がつきまとうポチェッティーノとサッリ。両監督にとっては、2月24日にファイナルを迎えるリーグカップの制覇こそが、疑念を払拭する最短の近道だ。

両チームが直面する過密日程。

 ただ、そこには厳しい過密日程が待ち受けている。リーグカップ初戦はFAカップ3回戦から、トッテナムが中3日、チェルシーは中2日での開催だった。それぞれチャンピオンズリーグとヨーロッパリーグにも参戦しているため、12月8日のリーグ戦から数えて10試合目での大一番でもあった。そして今後も1月末までにFAカップ4回戦を含む5試合が控えている。

 同じ4強には、バートン(3部)との第1レグに9得点で大勝したマンチェスター・シティもいる。優勝歴豊富なペップ・グアルディオラ率いるチームは、選手層の厚さでもトッテナムとチェルシーをしのぐ。

 マンCとプレミア首位を争っているリバプールは、FAカップでの早期敗退が不幸中の幸いとなり、残る1月の日程はリーグ戦3試合のみ。オレ・グンナー・スールシャール暫定体制下でトップ4争い復帰の希望が芽生えているマンUは、トッテナムとチェルシーが第1レグを戦っている間に、ドバイへと短期合宿に出かけていた。

トッテナムの冷静な戦略。

 それでもポチェッティーノとサッリは準決勝で、勝利という結果を求めて挑むと思われた。トッテナムが先勝(1−0)を収めた第1レグでは、そのこだわりの差が勝敗を分けたと言える。

 FAカップで主力を温存したポチェッティーノは、フル戦力をウェンブリー・スタジアムのピッチに送り出した。主砲のハリー・ケインも、実に約3年4カ月ぶりにリーグカップでのスタメンに名を連ねた。

 いわゆるポチェッティーノのトッテナムらしい勝ち方ではなかった。決勝点はケインのゴール左下隅への見事なシュートだったが、それはビデオ判定の末に得たPKでの一発だった。

 2トップの相棒ソン・フンミンは最前線で孤立気味で、クリスティアン・エリクセンのラストパスが冴えたわけではなく、堅実な貢献だった。ダイヤモンド型の中盤で頂点を務めたデル・アリにしても、得意とするボックス内侵入よりも、対峙する相手MFジョルジーニョの注視が主要任務のようだった。

 ホームでチェルシーに6割近いボール支配を許したトッテナムの先勝には、「辛勝」という見方もある。だがウェンブリーのピッチで、トッテナム守備陣が慌てたわけではない。ポチェッティーノは「その気になれば相手を押し込めるクオリティがある」として、社交辞令的な返答で明言を避けたが、この戦いぶりは計算の上だったと思われる。

サッリは押し気味と強調も。

 最終ラインの要であるトビー・アルデルバイレルトが、ケインのPK獲得に繋がったロングボールを躊躇せず送るなど、チェルシーが後方に残したスペースをつくカウンター狙いだった。

 スピードのあるソンが、2度も相手ライン裏のパスに走り込むまでに、キックオフから5分とかかっていない。サッリが「私たち(チェルシー分析担当者)が撮った映像を見る限り、ケインは明らかなオフサイドだ」と主張したPKが生まれる前から、思惑通り試合を運んだのはトッテナムだった。

 そのサッリは、ポゼッション(57.7%)やシュート数(17本)を挙げて、受け入れがたい敗戦とした。しかし、これは数字のまやかし。普段通りの戦法で臨んだチェルシーは、自分たちのサッカーをさせてもらえなかった。

 キーマンとなるジョルジーニョは、パスを出す機会こそ増えても、司令塔と言えるレベルで仕事するだけの余裕はなかった。また控え扱いのDFアンドレアス・クリステンセンに、この日はベンチだったダビド・ルイスばりのロングパスを期待するには無理がある。攻撃の脅威度で相手を上回ることはできないままだった。

アザールの“0トップ”は?

 チェルシーが得点に最も迫ったのは、前半終了間際のこと。カラム・ハドソン・オドイのシュートを、相手GKパウロ・ガッサニーガが手を伸ばしてバーに当てて弾き出した場面である。だがこれはクロスが相手DFに当たってゴールへと向かったことで、ガッサニーガがセーブを強いられたに過ぎない。

 FAカップに続く18歳オドイの先発起用は、バイエルンが獲得を狙うユース上がりの有望株対する、残留説得というのも否定できない。加えて、オドイがアウトサイドから斬り込んでも、相手ゴール前にはクロスの標的がいない問題点は、前半10分過ぎから明らかだった。

 アザールが3トップの中央に入る“0トップ”は、ひと月前のマンC戦(2−0)から定着しているが、長期的な採用は疑問だ。当人は「ストライカーじゃない」と言い、「前線左サイド」のポジションを好んでいる。周囲との連係が難しくては、最大の武器の無駄遣いともなりかねない。

ジルー、モラタは信頼がない?

 ノッティンガム・フォレスト(2部)とのFAカップでも、残り15分でベンチに下がったアルバロ・モラタの代わりに「偽9番」を務めたが、イングランド記者会の重鎮であるブライアン・グランビル氏の『サンデー・タイムズ』紙に寄せたマッチレポートで「不適当」の一言で片付けられたばかりだ。

 トッテナム戦ではオリビエ・ジルーがベンチにいた。ただ足首の故障から復帰したばかりで、後半も残り10分まで投入はされなかった。モラタはFAカップでオドイのクロスから2ゴールを決めながらもベンチ外。チーム得点王でもあるアザールにフィニッシュも任せ、パスを繋いで攻め続ける方が得策ということなのだろう。

 モラタの不在は、噂の移籍が絡んでいたのかもしれない。トッテナム戦を前に、サッリ体制下のナポリでゴールを量産したゴンサロ・イグアイン(ユベントスからミランにレンタル移籍中)を獲得、そしてモラタ放出が、再び現実味を増したと伝えられている。いずれにしても、当日のウェンブリーで、「ハムストリングの軽傷」というクラブの説明を額面通りに受け取った記者は、少なくとも筆者の周りには1人もいなかった。

ポチェッティーノに感じる執念。

 同様に「今日のパフォーマンスレベルを継続できれば勝てる」とした、サッリの発言に信憑性を覚えた記者が、果たしてどれだけいただろうか?

 確かに、第1レグでの敗戦はリーグカップ決勝進出を争う180分間を、ホームでのリターンマッチに向けて1点ビハインドで折り返したようなものではある。だが、今季リーグ戦と合わせてチェルシーに連勝したトッテナムは自信を増しているに違いない。また昨季終盤にはスタンフォード・ブリッジでチェルシーに勝てないというジンクスから、28年ぶりの勝利で解き放たれている。

 結果が求められたはず準決勝第1レグ後も、内容への「納得」を強調したサッリのチェルシーが、1月24日の第2レグで逆転劇を演じられる見込みは薄いと言わざるを得ない。

 同じウェンブリーでの初戦後に、指揮官が「ファイナル」を2度、「タイトル」という言葉は3度口にした、ポチェッティーノのトッテナムとの決戦では。

文=山中忍

photograph by Getty Images


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