“フットサル最強校”から選手権8強。雪国・帝京長岡の強化策が面白い。

“フットサル最強校”から選手権8強。雪国・帝京長岡の強化策が面白い。

 第97回全国高校サッカー選手権も残すは決勝の1試合となった。全48代表のチームを取材できるわけではないが、足を運んだ試合後に選手や監督に話を聞くと、新鮮な話に当たることが多い。

 部員数、地理的なハンデ、部員同士の関係性……それは千差万別だが、今大会で「そんなことがあるんだ」と驚いたのが新潟県代表の帝京長岡だった。

 今大会1回戦で高知西に6−0と大勝すると、2回戦では前後半80分間を2−2で終え、史上最長となるPK戦の末に旭川実業(北海道)を下す。3回戦も長崎総科大附相手に2−1で勝利。3試合とも複数ゴールを奪うなど、攻撃陣の充実ぶりが目立っていた。

 そして迎えた準々決勝・尚志(福島)戦、初のベスト4を懸けて臨んだが0−1で敗戦した。ビルドアップミスが失点に直結したものの、後方から丁寧にビルドアップし、コンビネーションと個人技のバランスが取れたアタックは見ていて小気味よかった。実際、後半は尚志を自陣にくぎづけにし、攻め続ける時間帯もあった。

「ウチのスタイルでやる以上」

 試合後、古沢徹監督が失点について振り返った言葉も面白かった。

「しょうがないって言い方をしたら良くないのかもしれないですけど、ウチのスタイルでやる以上、ああいったビルドアップミスは起こり得ます。1回戦から大なり小なりミスはあったので。そこはもっとミスをしない準備をしなければいけない、ということだと考えています」

 自分たちのスタイルについて、結果でブレることはない。そんな強い意志を感じさせたのだ。

 かつての成績を見ると、新潟県は“サッカーどころ”とは言い難かった。1回戦か2回戦敗退が続き、3回戦まで勝ち上がれれば……という立ち位置だったが、ここ7年で3回のベスト8進出を果たしている。

 そのうち今大会を含めて2度、3回戦の壁を突破したのが帝京長岡だ。

豪雪地帯だからこその練習。

 帝京長岡の名を知られるようになったのは2012年度大会のこと。小塚和季(現ヴァンフォーレ甲府)らを擁し、足元のテクニックで勝負するスタイルは観る者を驚かせた。

 それはテレビで観戦した県内のサッカー少年に勇気を与えるものだった。DF長渡彗汰(けいた)は当時についてこう話していた。

「小塚さん達の代がベスト8に入ったことで、やればできると思っていたし。勇気をもらいましたね。ああいうプレーをしていれば会場も沸くし『自分たちもいつか、ああなろう』と思えるありがたい存在でした」

 彼らの土台にあるのはフットサルだ。

 長岡市は積雪量が50cmを超えることも珍しくない豪雪地帯。それだけに冬季の練習はグラウンド整備すら難しいという。それを解決するために活用されているのが、体育館でできるフットサルである。

 フットサルはサッカーよりも狭いスペースでプレーし、ボールを扱う回数も自然と多くなる。そこで足裏でのボールタッチなどドリブルが磨かれるメリットがある。

フットサルは別種目ではない。

「日韓W杯やアルビレックス新潟の影響もあってサッカー熱が高まりました。その中で私たちとしてはフットサルを別種目とはとらえておらず、サッカーの一環として強化を図っています」

 古沢監督はこう語っていた。県全体で見てもジュニアユース世代からフットサルに触れた選手が増えているそうで、育成で外せない要素となるのは間違いない。

 余談だが、矢板中央にも大塚尋斗というFWが「U-19フットサル日本代表」という肩書を持ち、サッカーとフットサルの二刀流に挑んでいるそうだ。日本でもフットサルが成長の手段として有効活用され始めた証拠だろう。

 話は戻って、帝京長岡の強化メソッドは熱心な高校サッカーファンなら知るところだ。ただ冒頭に記した驚きとは、フットサルで勝利の味を覚えたことだ。

 それは“敗北での産物”でもあった。

全日本フットサルで優勝。

 高校サッカーでは選手権が冬の祭典とすれば、インターハイが夏の一大目標となる。帝京長岡は6月の県大会決勝でPK戦の末に敗れて、出場権を獲得できなかった。この失意からいかに立て直すか……というのが良くあるパターンだが、帝京長岡は少し違う道を選んだ。

 それはインターハイと同じ8月開催の「全日本U-18フットサル選手権」に、フルメンバーで出場したこと。ここで帝京長岡はグループリーグ3試合で20ゴール、決勝トーナメントでもゴールを量産し、決勝戦も5−1で制し、2年ぶり2回目の優勝を果たした。

 圧勝続きで日本一となった同校だが、大会に備えてのフットサルの本格的な練習は大会の数日前だけだったというのだから、その実力は本物である。

全国優勝という経験が自信に。

 2年生FW晴山岬は、全日本フットサル選手権でMVPを獲得し、今回の高校サッカー選手権でも4ゴールを挙げている。そんな彼がフットサルで得たものをこう語っていた。

「インターハイに出られない一方で、全日本フットサルに出て日本一を取ったっていうのはすごく自信になりました。ジュニアユース時代からフットサルをやってきた選手は多いし、そのフットサルの感覚というのは体に染みついています。

 そういった技術的な自信はあった一方で、『全国優勝』という結果がみんなの自信につながったのかなと。もしインターハイに出ていたら、たぶん全日本フットサルはフルメンバーで行けなかった。そこで頭を切り替えて、優勝しきれた。それがチームの勢いになったし本当に良かったと思います」

 もちろんインターハイへの切符を逃したのは忸怩たる思いだっただろう。それでも素早く切り替えてフットサルにモチベーションを見出し、本気で優勝を目指し、タイトルを勝ち取った。だからこそ“勝つ喜び”を知ることができたのだ。

 もし壁にぶつかったとしても、チームが強くなるための方法論はいくらでもある。

 フットサルとサッカー両方で全国に名を轟かせた帝京長岡の選手たちは、そんなことを教えてくれた気がする。

文=茂野聡士

photograph by AFLO


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