天皇杯3連覇の巨大な意義と、千葉ジェッツが目指すカルチャー。

天皇杯3連覇の巨大な意義と、千葉ジェッツが目指すカルチャー。

 1月13日に行われた天皇杯決勝では栃木ブレックスに勝利し、3連覇を成し遂げることができました。昨年度の天皇杯で優勝し、Bリーグファイナルでは準優勝、さらに現段階(1月22日現在)で東地区勝率1位である以上は、客観的に見れば天皇杯で優勝する力を持ち合わせていたと思います。

 ただ、準々決勝から、今季開幕戦で連敗した川崎ブレイブサンダース、1勝1敗ですが昨季のファイナルで惨敗したアルバルク東京、今季のアーリーカップ、レギュラーシーズンのアウェー戦で敗北を喫していて分が悪い栃木ブレックスと対戦し、倒せた意味は大きいものだと思います。

 1年目は勢いでタイトルを取り、2年目は富樫(勇樹)がいないことでチームが“やるしかない”とある意味、結束し連覇を達成。そして3年目の今回はしっかりとチーム力を上げてきたなかでチーム、スタッフ、ブースターが一丸となってのタイトル獲得ということで非常に価値があると思っています。

今回は賞金をすべて選手に還元。

 3連覇を達成した今回の優勝が、チームにもたらす影響は非常に大きなものです。チームにとってはもちろん、ビジネス的に見てもその影響は小さくはありません。

 過去の大会では、選手に納得してもらった上で優勝賞金から大会の必要経費等を差し引いたものをチームへ渡していました。しかし、今回は優勝して獲得した賞金はすべて選手たちに還元しようと当初から考えていました。それほど3連覇の価値は高い。

 遠征にかかった費用や祝賀会やチャンピオンリングの費用はすべて会社が負担。会社としては1千万程度の赤字です。それでも3連覇を成し遂げたことで、優勝記念グッズの売り上げやマスコミの報道による波及効果で、「ジェッツの試合が見たい」とチケットの購買にもつながります。さらに、興味を持っていただいたスポンサーの方からは早速連絡もいただいています。

ジェッツというカルチャーが育っている。

 ジェッツが目指していくカルチャーとして、ビジネスとして成功していくために商品として最高のものを見せていくことに取り組んできました。

 また、商品の質を高める要素として、ヘッドコーチを務める大野(篤史)がどんな時もファイトし、ゲームを捨てない姿勢をチームに浸透させてくれました。昨季もリーグ戦後半は何度も試合で負けそうになりながら、最後は追い上げ一気に追い抜いて勝利してきています。

 ジェッツというチームカルチャーを3年かけて作り上げてきていると感じています。今回の天皇杯はそういったカルチャーが育って行く重要なターニングポイントとなった大会であることは間違いありません。

 ジェッツが次のステップに進んでいくためには、質を磨き続けることが重要です。私は経営の質を、大野はチームの質を磨き続ける。天皇杯決勝で対戦した栃木ブレックスには、長年同チームでプレーするライアン・ロシター選手やジェフ・ギブス選手といった外国籍選手が在籍し、さらに、田臥勇太選手のような精神的支柱がいてチームがまとまりを見せています。まさに栃木のようなチームが1つの理想形でしょう。

 ジェッツも今はある程度、メンバーを代えずにチームを作り上げている途中ですが、メンタル的にも技術的にも、そしてチームのケミストリー的にも高め続ける中で、少しインパクトを与えたほうがいいなという部分だけ変更を加えるなど、質を追求していくしかありません。

 ただ、それ以上に高い質が備わったところにはまだ敵わないかもしれませんが……。しかし、それは実際にやってみないと分からないこと。見えないものと戦っていくタフな作業ですが、自信を持ってやり続けるしかないと考えています。

チームの源泉は「集客」にある。

 選手のプロフェッショナリズムを育てるのは「集客」でもあります。観客が多いからこそ選手が育てられ、それが強さにつながっていくファンダメンタルだと私は考えています。

 ビジネス面でも集客があるからこそスポンサーメリットがあり、盛り上がっているからこそスポンサーがつく。そして資金力が増えるからこそ、チームへの投資が可能となり補強力が強化され、いい選手を獲得することができる。いい選手は自分を律するようになるので強くなり、観客が増える。

 結局はすべての源泉が集客にあるのです。そのバランスがこれからのジェッツの成長の肝になるでしょう。

バスケットの勝敗がビジネスに直結。

 琉球ゴールデンキングスや栃木ブレックス、千葉ジェッツはそのもっとも顕著な例です。昨季のBリーグチーム人件費のトップ3はアルバルク東京、栃木ブレックス、千葉ジェッツでした。バスケットの勝敗にビジネスの力が直結している、という分かりやすいデータと言えます。

 ビジネスで成功するといったら、親会社からのバックアップがあるか、地域密着で力をつけて資金を得るか。稼ぐ力がなければ試合にも勝てず、魅力的でなければ人も来ません。人も来なければそれ以上ビジネスは大きくなりません。

 人がいなければ、緊張感は生まれず、本質的には強くならない。ジェッツが3年かけて強くなってきたのは、会社とチームの理念があり、それを実行する大野というトップが、その哲学をしっかりと現場で徹底して遂行しているからこそ。チームに完全に浸透し、安定感が増してきているからです。

レジの行列を解消した一手。

 最後に昨年末導入した「Putmenu(プットメニュー)」について。実は今季は当初、ファンクラブ、グッズ、飲食、3つのそのポイントを合算し、様々な特典を提供するサービスに変更。新たなシステム投資も行い、試合会場でのファンクラブ、グッズ、飲食のレジも結合しました。

 しかしながら、サービスの向上の一環としてポイント制と集中レジを導入したことで課題が浮き彫りに。ポイントを付ける時間でレジに長蛇の列ができ、視覚的にその光景を見た方々がグッズや飲食を購入することが嫌になってしまうなど、良かれと思ってトライしたことが逆にお客様の不満を招いてしまいました。

 そこで、並ぶ時間をいかに減らすかを考えた時に、並ばなくてもいい仕組みが必要だという結論に。急遽、昨年12月29日から商品の注文から決済までをスマートフォン上で行えるオーダーシステム「Putmenu」を導入することになりました。

 このシステムを導入することで、観客席や会場内のどこからでも注文と会計をすることが可能となり、カウンターに商品を受け取りに行くだけとなり、行列に並ぶ必要がなくなりました。

 実は当初は来季からの導入を考えていましたが、準備期間や投資額を考慮しても、今季は無理だろうという見解でした。ただ、お客様にこれ以上ストレスを感じさせるわけにはいかず、導入に踏み切ったのです。

集客数は同じでも売上が30%増。

 アリーナ100カ所程度に設置したビーコン等のインフラは予定外の投資でコストもかかりました。

 ただ、飲食で大儲けをしようとするというよりはあくまでも集客のためのツールと捉えています。チーム、ホスピタリティ、エンターテイメント、グッズの魅力に、「あそこに行ったらあの匂いにつられて食べてしまうよね」といったような食べ物の魅力を付け加えるだけ。チケット販売のための販促という程度の割り切りで勝負。

「便利になりました」「これいいですね」と評判は上々で、売上は30%程度の伸びも見せています。集客数は変らないわけですから、つまり「Putmenu」の効果によって増収したというわけです。

 決断に踏み切れた裏付けとしては、ある程度利益を出せるという自信と、シーズン前に把握していたスポンサー売り上げが予想値を上回っていたことが関係しています。余力があったからこそいざというときに勝負できた。チーム、フロントスタッフみんなが頑張ってくれたおかげでジェッツの経営が成り立っており、私もそういう判断ができたと思います。

(構成・石井宏美)

文=島田慎二

photograph by Kiichi Matsumoto


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