現役のレジェンド、38歳の中村憲剛。今も成長し続ける秘訣を聞いてみた。

現役のレジェンド、38歳の中村憲剛。今も成長し続ける秘訣を聞いてみた。

 昨季シーズン終了後、長年、日本サッカー界を支えてきたレジェンドたちが、次々と現役生活にピリオドを打った。

 川口能活、楢崎正剛、中澤佑二、小笠原満男――。彼らの突然の発表には、ファンやサポーターのみならず、選手や現役選手にも衝撃が走った。

 川崎フロンターレ、中村憲剛も衝撃を受けた1人だった。

 昨年12月27日、「満男さん」と題した自身の公式ブログの投稿の中では、長らくしのぎを削ってきた1歳年上の小笠原に700文字にも及ぶ惜別メッセージと労いの言葉を贈った。

 取材時に同世代の選手たちについて聞くと、少し寂しそうな表情を見せ、こう語った。

「数年前から(鈴木)啓太とか、同じ時期にJリーグに入った選手が引退していって……。今回は結構こたえてますね。正直ショックです。ただ、逆に、彼らの分も頑張らなきゃいけないという気概も新たに生まれているんです」

「そういう慣例に流されたくない」

 昨年10月に38歳の誕生日を迎えた。普通なら最盛期はとっくにすぎている年齢だ。しかし、チームメイトから“長老”と呼ばれる大ベテランのプレーは今もまったく衰えを感じさせない。むしろ、30代半ばを過ぎてもなお進化し続けている。

 世間では“アラフォー”と呼ばれる年齢になっても、それが可能なのはなぜなのか。

「30歳を過ぎたら少し下り坂になって、35歳を過ぎたら“お疲れさん”みたいな、そういう慣例に流されたくないというか意地もあって。自分がどこまでやれるのか、今はチャレンジしているところです。

 自分でもどこまでいくのか分からないですよ。でも、その気持ちを失わない限りは、まだやれるのかなという気はしてますけどね」

 長老の言葉から進化の秘密がいろいろ見えてきた。

これまで大きな怪我がなかった。

 振り返ってみると、中村のサッカー人生には大きな怪我がない。

 強いて言うなら「腰痛くらい」と本人。基本的には「接触しないでプレーする」のがモットーだ。出来る限り、ポジショニングでかたをつける。

 メンテナンスにかける時間もたっぷりと確保している。

 練習場の麻生グラウンド滞在時間はチームの中でも長い。先手必勝だ。「どこかが痛くなってからケアするんじゃなくて。痛くならないようしっかりとケアすることが大切」。まあ、今日はいいかという日は作らない。「体で勝負をするタイプじゃないですからね。筋力の数値も高くありませんから。だからこそ、ケアに重きを置かなければいけないという発想が若い頃からあったのかも」。自宅でも就寝前のストレッチは欠かさない。

 そして、当然のことながら技術の追求。

「技術にしても個にしても、極めるのは無限なんですよ。天井がない。どんな選手でもミスをしますが、そのミスをいかに減らせるかを努力するのは自由。どうせやるならミスはしたくないし、むしろいいパスを出したい。自分が描いた通りのプレーを常にやるために、頭をフル回転させるんです」

 周囲との相互理解も欠かせない要素だ。

「チームの哲学もそうだし、若い選手の成長もそうだし、自分がそう思っていても周りが理解してくれなければ走らなければいけないサッカーになる。理解してくれている選手が多いのは大きな救い。

 こういうサッカーでチャンピオンになる、とチームが方向性を示してくれていることも、自分がここで生きる要素になっています」

「だから変化に対する恐れはない」

 なかなか出来そうで出来なそうなのが、“変化を厭わない+誰もが評価してくれる武器を持ち続ける”ことだ。

 特に年齢を重ねれば、重ねるほど難しくなる。

「自分が主役という気持はもちろんありますが、それ以上に周りの選手がやりやすくなることで自分が生きると自認しています。

 周りの選手によって自分の顔が変わるし、プレーも変わるし、色も変わる。だから変化に対する恐れはないし、むしろ、自分の幅が広がるチャンスだと思っている。

 ただ、誰からも評価してもらえる武器をもっていなければ、この世界で生き残っていくのは難しい。

“中村憲剛”がいることで、チームがどれだけ助かるのか、有益なのかを自分自身が見せ続けないと」

「自分も先輩たちの姿を見てきた」

 そして、当然ながらトレーニングは全力で。

「自分も先輩たちの姿を見てきたように、周りの選手は僕の背中を見る。諦めないこと、戦うことの大切さはそうやって伝承されてきている」

 ベテランの域に達してもなお、若い頃から変わらずに黙々とやり続けることを見失わない。

 その一方で、時代の変化や潮流には敏感に反応し、必要ならば自ら変化することを厭わない。

「今日よりも明日うまくなりたい」

 これほどのキャリアを積んでもなお、「自分が何者でもなくなる恐怖心があるから」という危機感、そして、「今日よりも明日うまくなりたい」というシンプルな思いが、さらに高みへ押し上げている。

 人生のほぼ半分近くを過ごすフロンターレでの日々。

 2003年、テスト生から正式に入団したチームには恩義もある。

 次世代が伝統を受け継ぎ、クラブの色を出していけるようにしっかりと背中を見せるという使命感がさらに中村を走らせている。

 まもなく在籍17年目のシーズンが始まる。果たして、今季はどんな進化を見せてくれるのか――。

文=石井宏美(Number編集部)

photograph by Asami Enomoto


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