ロッテのキャンプが去年と全然違う。吉井コーチが導入したブルペン制限。

ロッテのキャンプが去年と全然違う。吉井コーチが導入したブルペン制限。

 その日のスケジュール表を見て「おやっ?」と感じることがあった。

 千葉ロッテ、石垣島春季キャンプ2日目のことだ。昨年は予定にあったはずのシート打撃が、その日のメニューから外れていたのだ。さらに目を凝らすと、ブルペンに入るピッチャーの頭数自体が少ない。

 昨年は故障でリハビリ組に入っていた一部の限られたメンバーをのぞいてほぼ全員が連日ブルペンに入っていたのだが、この日は一、二軍合わせた全38人中半数を下回る15人ほどしか入っていない。

 メンバーの名前をチェックすると関谷亮太、西野勇士といった、キャンプ初日の紅白戦に入っていなかったメンバーだけがこの日ブルペンに入っている。

 なるほどこれは一時的な処置なのかと、こちらも翌日まで様子見を決めていたのだが、翌3日目になってもブルペンに入ったのは一軍メンバーが19人中、東條大樹、島孝明を含む5名のみ、二軍メンバーが19名中10名と、全体の数で見ればやはり半数を下回る。

 じゃあ残りのメンバーはどうしたかというと、午前中はキャッチボール、投内連携、ランニング。午後に入ってもウエイトや体幹トレーニングといった強化練習を行う程度で、ピッチングの「ピ」の字もない。

吉井コーチが練習量を管理。

 これは何か考えがありそうだと、キャンプ4日目の朝一番、今年からチームに加わった吉井理人一軍ピッチングコーチに訊いてみることにした。

「大きな理由はキャンプ初日に紅白戦があったことです。さらにシート打撃とか強度の高い練習があることもそうですし、通常この時期にはやらない練習がここのチームでは続くわけじゃないですか。その分の質と量はこちらで管理しなきゃいけないと思ったので、ブルペンに入る日は管理するようにさせてもらいました」

早く作りすぎた選手は開幕にいない?

 吉井が言うように、千葉ロッテではキャンプ初日から紅白戦が行われた。

 キャンプ前、ロッテ浦和球場で自主トレを続けてきたピッチャーたちの様子も見てきたが、新人の東妻勇輔や小島和哉といった面々まで、1月中旬にはキャッチャーを座らせて、熱がこもった投球練習を行っていた。

 その姿はさながら2月中旬を思わせる熱のこもりようで、数日後、他球団の新人合同自主トレも取材させてもらったが、あまりの仕上がりの違いに正直驚くほどだった。

 吉井がさらに言葉を続ける。

「野球を長く取材してる人なら分かると思うんだけど、早くできちゃった選手って開幕にいない人多いでしょ。そこの加減を見る必要があると思うんですね。そこをこっちで管理しないと選手たちは、みんな頑張っちゃうので……。その前にやらなきゃいけないことをこちらでやろうってことですよね」

 人当りの良さと温かそうなその口調に、聞いているこちらまでグッと来た。

肩の消耗に、キャンプの球数も計算。

 吉井が言うように、選手たちは自分をアピールすることに必死だ。

 紅白戦、シート打撃と来れば、否が応でも結果も気にするようになってくる。この時期では考えられないような緊迫度、それに伴う筋肉への負担も充分考えられるだろう。吉井はそれを未然に止めようとしている。賢明な判断だ。

 チームのコンディショニングを束ねる楠貴彦コンディショニングディレクターとの連携も完璧だ。楠が言う。

「肩の消耗が世間で叫ばれている中で、シーズンに入るとキャンプでどれだけ投げたかというデータをあまり見ないと思うんですね。その辺がこれを機に変わって来るんじゃないかと思っています。

 その中でシーズン中、あまり成績が良くなかった選手が出てきたら、昨年のキャンプ中のデータを参考として『もっとキャンプで投げておけば良かった』とかにもなるかもしれませんし、そこを吉井さんにしっかり管理してもらえるだけでコンディショニングとしては凄くやりやすくなると考えています。肩のストレスの点で考えても、キャンプでどれくらい投げているかが分かれば、その分のトレーニングメニューも組みやすくなりますから」

夏場以降の落ちを防ぐために。

 昨年はキャンプ初日からチーム全体の士気が上がるのを早め、そのままのテンションでシーズンを迎えてしまった印象も受けた。開幕直後こそチームも快進撃を続けたが、夏場が近づくにつれてチームは失速。終盤戦には不振に陥る選手、怪我を抱える選手が複数出て、特に投手陣は開幕直後とは顔触れがまるっきり変わっていた。だから同じ轍は踏まない。

 千葉ロッテでは選手たちの栄養状態、貧血、疲労度などを把握する目的で体組成測定も行っている。

 大学ラグビーで全国大学選手権9連覇を果たした帝京大学ラグビー部がこの体組成測定を行い、選手たちの体調管理を行い、チームの躍進に繋げたのはあまりにも有名な話だが、千葉ロッテでも3年前からこれをはじめ、徐々にサンプルとなるデータも揃い、それに伴う対策も今年は色々と練られていると聞く。

 楠コンディショニングディレクターが言う。

「昨年もピッチャーがどれくらいの緊迫する場面で投げて、どれくらい球数を投げているのかデータをとり、その分析もやってみました。たとえば緊迫した場面で投げることが多かった松永(昂大)やマイク・ボルシンガーもそうですけど、そこから肩に負担が来てしまったというデータが昨年出たので、緊迫度が高い場面を任されるピッチャーの連投が続いたりしたら、吉井さんにも提言していこうかなと思っています」

 選手たちの安全を管理し、かつ成績にも繋げる。チームが着々と前に進んでいる印象を受けた。

紅白戦だからといって全速ではない。

 第1クールに行われたランニングメニューでも、直後に選手たちの脈拍や心拍数もチェック。選手たちの体に異常がないか、きっちりと確認も行っている。

「脈拍や歩数も測って、それが短ければ体にどこか異常があるのではないか、疲れているのではないかと自分たちも分かりますし、脈拍がボンと上がれば疲れがたまっている状態ですし、筋肉に酸素が足りないということも分かるので、そういうモニターを今後もさせていただきながら選手たちの疲労の状態を見て、シーズン中に失速しないように今年はやっていこうと思っています」

 やみくもにキャンプ初日から紅白戦を行っているわけではけっしてない。井口監督の理解もある中でこうした体調管理も行われている。井口体制2年目を迎えた春。その矛先は着実に「マウエ」に向かっている。

文=永田遼太郎

photograph by Kyodo News


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