「名前、なげー!」なオリックスの山崎颯一郎が、3年計画を前倒し中。

「名前、なげー!」なオリックスの山崎颯一郎が、3年計画を前倒し中。

 1月末。大阪・舞洲にあるオリックスの球団施設には、キャンプインを前に、期待に胸を膨らませている若手投手がいた。20歳の山崎颯一郎である。

 最速149kmのストレートを武器とする、敦賀気比高校出身の高卒3年目右腕。190cmの長身で、しかもほぼ真上から投げおろすフォームのため非常に角度があり、スケールの大きさを感じさせる。

 オリックスに入団後、ハンマーをタイヤに向かって振り下ろす練習を取り入れ、より高い位置からダイナミックに投げられるようになった。

「せっかく身長があるので、それをいかした投げ方にしたいなと思って」

 同級生の山本由伸が昨年一軍でセットアッパーを務め、榊原翼も一軍デビューする中、山崎はまだ一軍登板はない。しかし昨年の起用法は球団の期待の大きさを物語っていた。

 プロ2年目だった昨年、山崎を3年間かけて育成する計画がスタートしていた。1年目(昨年)はファームでローテーションに入り、1年間投げ切る体力をつける。2年目(今年)はファームで防御率トップを争うような投手になり、3年目に一軍に定着する、という計画だった。

田口壮は潜在能力を見込んでいた。

 その計画通り、昨年は調子が悪かろうと関係なく、ウエスタン・リーグでほぼ中6日のローテーションで投げ続けた。その結果、20試合に登板してチームトップの100回1/3を投げ、5勝7敗、防御率4.66という成績だった。

 昨年のウエスタン・リーグ最終戦のあと、当時二軍監督を務めていた田口壮野手総合兼打撃コーチはこう語っていた。

「今年は最初から、何があってもローテーションを外さないと決めていました。彼のポテンシャルを見込んでいるというか、信じているというか。そこはぶれなかったですね。彼にも今シーズンが始まる前に、『今年はローテーションを守れ。来年はファームのエースに、一番手になれ』と言いました」

永遠のテーマだったカーブが解決。

 それは、将来一軍のエースになれる素材だと見込んでいるからこそだ。

「素材的には、なれると思います。やはりまっすぐがいい。前に飛ばないですから。ただ、まだまだ成長しないといけないので、このオフをどうやって過ごして、どういうかたちで春のキャンプに入ってくるかですね。あとは彼次第です」

 昨年は、前半戦は調子が上がらなかったが、夏場にブランドン・ディクソンにナックルカーブを教わってから安定感が出てきた。

「カーブが永遠のテーマでした」と言うように、入団してからずっと「カーブさえなんとかなれば」と言い続けていたが、なかなか思うようにコントロールできずにいた。

 しかし、人差し指を折り曲げて添える握り方をディクソンに教わって投げてみると、しっくりはまり、それまで投げていたカーブよりもはるかにコントロールしやすくなったという。

「教わってもうその日からすぐ、こっち(ナックル)にしました。ディクソンとは身長も近いし、共通する部分があるのかな、と」

主力投手が抜けて前倒しに?

 シーズン後にはU-23ワールドカップの侍ジャパンメンバーに選出され、最優秀防御率に輝き準優勝に貢献した。

 オフに金子弌大、西勇輝という先発ローテーションの軸が移籍したことで、山崎の3年計画が前倒しになる可能性は十分にある。

「チーム的には、ピッチャーは危機かもしれないですけど、自分にとってはチャンスだと思うので、つかみにいきたいなと思います。去年まではまだあまり自分のやりたいことがわからなかったんですが、今年は自分のやりたいことがはっきりしていて、それをやっています」

キックボクシングから得た感覚。

 その1つが、オフシーズンに取り入れたキックボクシングだ。

「自分、不器用なんで、頭で考えた動きを、なかなか体で表現できないんです。体をコントロールしきれていないというか、うまく力が伝わっていない。だから他のスポーツもやってみて、自分の思った動きを表現できるようにしていきたいなと思って」

 キックボクシングを実際にやってみると、投球動作と共通する部分が多かったと言う。

「まずは体幹が重要だということですね。体幹を意識せずに蹴ると、力が入らないし、蹴ったあとふらついてしまう。それに、動きは違うんですけど、ジャブを打つ時に脇を締める感覚が、なんとなくピッチャーと一緒だなと感じました。

 脇が空いて腕だけで殴りにいくと力が入らないけど、脇を締めていると、腰を回すだけで、ミットに当たった時にパチーン!といい音がして、『こんなにパワーが出るんだ』と感じました」

「颯の字が結構好きなんですよ」

 体の使い方のヒントを得て、今後はストレートの威力を増すことと、フォークの習得をテーマに掲げる。

「U-23ワールドカップの韓国戦で投げた時に、相手がすごく粘ってきて、カーブもファールにされて……。そこで、決め球にできる落差の大きいフォークがほしいと思ったんです」

 明確な課題を持って、キャンプは一軍でスタートした。

 オリックスには“山崎”が3人いる。捕手の山崎勝己、左投手の山崎福也、そして山崎颯一郎。

「小学生の頃は、自分の名前があんまり好きじゃなかったんですよ。『名前、なげー!』と思って(苦笑)。でも今は嫌いじゃないです。“颯”の字が結構好きなんですよ」

 今年は一軍の球場で、スコアボードに「山崎颯」の文字が見られるに違いない。

文=米虫紀子

photograph by Noriko Yonemushi


関連ニュースをもっと見る

関連記事

おすすめ情報

Number Webの他の記事もみる
主要なニュースをもっと見る
社会のニュースをもっと見る
経済のニュースをもっと見る
政治のニュースをもっと見る
国際・科学のニュースをもっと見る
エンタメのニュースをもっと見る
スポーツのニュースをもっと見る
トレンドのニュースをもっと見る
生活術のニュースをもっと見る
地域のニュースをもっと見る

スポーツ アクセスランキング

ランキングの続きを見る

スポーツ 新着ニュース

新着ニュース一覧へ

総合 アクセスランキング

ランキングの続きを見る

東京 新着ニュース

東京の新着ニュースをもっと見る

東京 コラム・街ネタ

東京のコラム・街ネタをもっと見る

特集

特集一覧を見る

記事検索