計算できる新外国人バッター3条件。右打ち、ブレーク前、中距離打者。

計算できる新外国人バッター3条件。右打ち、ブレーク前、中距離打者。

 春季キャンプが始まった。球春が近づくと、各球団の新戦力の戦力査定が始まる。新外国人打者の品定めもその1つだ。

 少し前まで野球ファンは「メジャー通算15本のスラッガー」とか「前年AAAで30本の実績」などのスポーツ紙の触れ込みで評価していたが、最近のプロ野球ファンは目が肥えてきて、そういったものだけでは満足しない。誰が本当に働いてくれるのか、いろんなデータで知ろうとしている。

 筆者にはちょっとした持論がある。それは何かというと、日本で活躍する外国人打者は「(1)右打者 (2)出世前 (3)中距離打者」だということだ。毎日データを見ていくなかで、そんな傾向を感じているのだ。以下、詳しく説明していこう。

打率、本塁打トップ10を見ると。

 まずは(1)右打者だ。過去10年間の外国人打者の打率10傑(1000打席以上)と、本塁打10傑を紹介する。

<打率10傑 ※は左打者>
1 マートン.313
2 ルナ.309
3 マギー.2977
4 ビシエド.2976
5 A.ラミレス.296
6 A.カブレラ.293
7 J.ロペス.283
8 ブラゼル.2784※
9 ヘルマン.2778
10 バレンティン.272

<本塁打10傑 ※は左打者>
1 バレンティン 255本
2 ブランコ 181本
3 J.ロペス 155本
4 エルドレッド 133本
5 レアード 131本
6 A.ラミレス 124本
6 E.メヒア 124本
8 デスパイネ 118本
9 ブラゼル 106本※
10 バルディリス 90本

 両方の10傑で左打者でランクインしているのは、西武、阪神、ロッテでプレーしたクレイグ・ブラゼルだけ。あとはすべて右打者だ。

日本人打者では左が多いが。

 参考までに2018年終了時点での現役打者の生涯打率5傑(2000打数以上)と、本塁打5傑を示す。

<現役打者打率5傑 ※は左打者>
1 青木宣親(ヤ).329※
2 柳田悠岐(ソ).320※
3 内川聖一(ソ).307
4 山田哲人(ヤ).3012
5 糸井嘉男(神).3008※

<現役打者本塁打5傑 ※は左打者>
1 阿部慎之助(巨)399本※
2 中村剛也(西)385本
3 福留孝介(神)270本※
4 バレンティン(ヤ)255本
5 松田宣浩(ソ)244本

 野球では一般的に左打者がやや有利だと言われる。右より左打席の方がベースを挟んで一塁に数十cm近いこと、左打者が得意とされる右投手の方が、左投手よりも圧倒的に多いことが原因とされる。

 現役選手の5傑は、このことを裏付けているが、なぜ外国人に限って右打者が有利なのか?

 昔はそうではなかった。外国人も左打者の方が優勢だった。三冠王をとったランディ・バース、昨年までNPB通算打率1位を永年キープしたレロン・リー、巨人最強の外国人ウォーレン・クロマティ。もちろん三冠王のブーマー・ウェルズやロバート・ローズなど右の強打者もいたが、現在のように右打者が圧倒的ということはなかった。

欠陥があるようでは通用しない。

 では、何が起こっているのか?

 ここ近年、大リーグで急に右打者が優勢になったわけではない。昨年のナ・リーグの首位打者は左打者のイェリッチ(ブリュワーズ)だし、打撃の主要ランキングでは10傑に3〜4人は左打者がいる。左打者が少数であることを考えれば、左打者の優位は損なわれたとは言えないだろう。

 ではなぜ、日本で左の外国人打者が打てなくなったのか?

 かつてはメジャーで通用しない左打者が日本にやってきて、活躍していた。左投手が打てない、打撃が粗いなど欠陥を持った左打者も、NPBでは何とかなったのだ。

 しかしNPBの投手の実力が上がったことで、欠陥のある左打者は、日本でも通用しなくなり、球団側も食指を動かさなくなったのではないか。一方で欠陥のない左打者は、MLBで飯が食えるからNPBには来なくなったのだろう。

右打者のレベルが上がった?

 では、なぜ右打者は通用するのか?

 個人的には、そもそも日本に来る右打者のレベルが上がったと考えている。

 いつの時代も、どのリーグでも右打者の方が圧倒的に多い。希少性のある左打者に比べて、右打者の競争率は高い。本来はメジャーで活躍できる能力があっても、さまざまな事情で30歳前後で競争から脱落する右打者が出てくる。そこから優秀な右打者が日本に来るようになった。

 私はそれを「(2)出世前」と呼んでいる。

イチローと同僚だった2人。

 さらに言えば、活躍した彼らはMLBではほとんどが「(3)中距離打者」だった。中距離打者の指標はいくつかあるが、私は「二塁打÷本塁打」の割合が1.5から3.0と定義している。

 以下はここ10年の外国人選手の打率、本塁打各上位3人の、MLBでの実績と日本に来た年齢、※は二塁打÷本塁打の数値である。

<打率>
マートン 272安打29本塁打 打率.286 28歳 ※1.59
ルナ 208安打15本塁打 打率.262 33歳 ※2.73
マギー 721安打67本塁打 打率.258 30歳 ※2.10

<本塁打>
バレンティン 113安打15本塁打.221 26歳 ※2.07
ブランコ 11安打1本塁打.177 28歳 ※3.00
ロペス 1005安打92本塁打.262 29歳 ※2.34

 すべて右打者で、ブランコを除く5人の打者がMLBで100安打以上している。彼らの多くは、昔のメジャー選手名鑑を見れば「有望若手」「活躍が期待される」と紹介されていた。また一時期はレギュラーを取った選手も多く、バレンティンとロペスはイチローのチームメイトとして主軸を打ったこともある。しかし最終的には競争に敗れ、30歳前後でNPBにやってきたのだ。

 NPBではメジャー出身打者は「大型化」する。もともとミートがうまい中距離打者は本塁打が増えて成功するのだ。

 逆に言えば、MLBを経験していないマイナー選手がそのままNPBで通用する時代ではなくなったともいえる。

(1)右打者、(2)出世前、(3)中距離打者という「成功する外国人打者」の根拠は以上だ。

期待できる新外国人打者は?

 では、その基準で今季の新外国人打者を見ていこう。期待が持て総な選手には○をつける。成績はメジャーリーグ時代のもの。※マークは二塁打÷本塁打の数値だ。

<オリックス>
ジョーイ・メネセス 26歳/右打ち
(MLB実績なし)

<ロッテ>
○ケニス・バルガス 28歳/両打ち
197安打35本塁打 打率.252 ※1.09

<楽天>
ジャバリ・ブラッシュ 29歳/右打ち
51安打8本塁打 打率.186 ※1.13

<巨人>
〇クリスチャン・ビヤヌエバ 27歳/右打ち
94安打24本塁打 打率.245 ※0.67
イスラエル・モタ 22歳/右打者
(MLB実績なし)

<阪神>
〇ジェフリー・マルテ 27歳/右打者
146安打30本塁打 打率.222 ※1.00

 時代は変わった。昔は外国人選手と言えば、圧倒的に打者だったが、今は投手の方が多くて、新外国人打者は6人だけだ。

 今季の打者は本塁打が多い、というか二塁打が少ない打者が多く、打率が低め。つまり、ミートが巧みな確実性のある打者が少ない。やや期待薄か。

 純然たる左打者は今年もいない。前述のとおり、めぼしい左打者は日本市場に出てこないのだろうし、そもそも外国人スカウト自身が左打者を最初から除外している可能性もある。

 巨人はX.バティスタ、A.メヒアを自前のカープアカデミーで育てた広島のように、モタを青田買いで囲って育てようとしている。これはまた別枠だ。

阪神のロサリオのようなことも。

 もちろん「(1)右打者、(2)出世前、(3)中距離打者」でもハズレのケースもある。
昨年の阪神、ウィリン・ロサリオは右打者で、29歳で来日。MLBでは413安打71本塁打、.273、※は1.17とやや確実性にかけたが、アベレージも稼いでいる。

 春季キャンプではひたむきに練習していたから大いに期待したが、成績は上がらなかった。当たり前の話だが、3条件を満たしていれば全部OKというわけではない。

 しかし、この条件から見えてくるのは、NPB、MLBを問わず「バランスの良い打撃ができる若い右打者は有望だ」という普遍性のある事実だ。

 最近はシーズン中に外国人を補強することも多いから、まだ新しい打者が来るかもしれない。この3条件で、選手の査定をしていきたい。

文=広尾晃

photograph by AFLO


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