ブンデスとJ1の監督を比べてみた。若手が多いドイツ、多国籍な日本。

ブンデスとJ1の監督を比べてみた。若手が多いドイツ、多国籍な日本。

 ドイツ・ブンデスリーガはウィンターブレイクも明け、再び熱いリーグ優勝争いが繰り広げられています。ドイツでは、便宜上ウィンターブレイクを挟んで前半戦と後半戦とにリーグを分けて考えます。

 前半戦で首位に立ち「ヘルプストマイスター」(秋の王者)に輝いたドルトムントは、第20節を終えた現在2位ボルシアMGに勝ち点7差を付けて首位を堅持しています。

 しかしドルトムントは、ウィンターブレイク明けのRBライプツィヒ戦こそ勝利したものの、アウェーのフランクフルト戦はドロー。少々、ゲーム内容の低下が見られます。当然各チームはドルトムント包囲網を強めているわけで、おそらくこのまま平穏にシーズンが終わるとは思えません。 

 ただ、今季に関しては今までにない事象も生まれています。

ノイアー、チアゴが負傷。

 それは“盟主”バイエルンの思わぬ躓きです。目下、前人未到リーガ6連覇中の彼らは、OBのニコ・コバチ監督をフランクフルトから引き抜いて余裕しゃくしゃくとばかりにシーズンをスタートさせながらも思うような成績を挙げられず、ウィンターブレイク前に一旦態勢を取り戻して事態の沈静化を図ったものの、2019年を迎えた今、再び不穏な空気が流れ始めています。

 第20節のレバークーゼン戦ではアウェーで結果を残し、ドルトムントの背中を見据えて追走するつもりはずでした。

 しかし、試合は思わぬ展開に。バイエルンはレオン・ゴレツカのゴールで先制しながら、その後3失点を喫して壮絶な逆転負け……。結果、バイエルンは得失点差ながらもボルシアMGに2位の座を譲り、3位へと後退してしまいました。

 バイエルンは今シーズン終了後にシュツットガルトのフランス代表DFバンジャマン・パバールを獲得すると発表しましたが、それ以外の今冬の移籍動向はアメリカMLSのバンクーバーから18歳のカナダ人MFアルフォンソ・デイビスを獲得したのみ。つまり今季は現陣容で戦い抜くしかないわけですが、レバークーゼン戦ではGKマヌエル・ノイアー、MFチアゴ・アルカンタラが負傷欠場。選手層の不安が囁かれています。

今季すでに3クラブが監督解任。

 また、コバチ監督の采配やチーム内での求心力など、指揮官の素養について取り沙汰されることも多いバイエルンですが、現チームの純然たる力に関しては今や、ドルトムントと比肩する存在とは言えないかもしれません。 

 ただし今回はバイエルンの話ではなく、現在のブンデスリーガ1部を指揮する各監督に焦点を当ててみたいと思います。

 昨年8月に開幕したブンデスリーガで、すでに監督交代を敢行しているのは3クラブ。解任第1号は昨年10月7日、当時最下位に低迷していたシュツットガルトのタイフン・コルクト監督。暫定監督を挟んで、現在はかつてアウクスブルクやシャルケなどを率いたマルクス・バインツィアル監督が率いています。

 解任第2号は、昨年末の2試合を連勝で飾り9位まで回復していたレバークーゼンのハイコ・ヘルリッヒ監督。こちらは、昨季途中までドルトムントを率いていたペテル・ボシュ氏を新たな指揮官に招聘しました。

 この交代劇に関しては、成績低迷というよりも“停滞”を打破したいクラブの思惑が透けて見えます。レバークーゼンはバイエルン戦で勝利していますから、今のところ監督交代は吉と出ているようです。

ハノーファーも体制変更。

 そして解任第3号は、ウィンターブレイク明けのドルトムント戦で大敗し、8試合連続未勝利となったハノーファーのアンドレ・ブライテンライター監督。昨年末、ホームでのデュッセルドルフ戦で後半アディショナルタイムに痛恨の決勝点を喫し、指揮官はオフ期間をほとんど取らず年内の再始動を決断して反撃を目論みましたが、結果を得られない状況でチーム内の秩序を保てず、ドルトムント戦をもってお役御免となりました。

 後任は旧東ドイツのメクレンブルク出身で東ドイツ、そして統一後のドイツの両代表で活躍し、現役引退後はハンブルガーSV、ドルトムントなどの指揮官を歴任したトーマス・ドル氏が就くことになりました。

 最近のドル監督はハンガリーのフェレンツェバロシュというクラブを2013年から率い、ハンガリーリーグを1回、ハンガリーカップを3回制するなど着実に実績を築き、この度、約10年ぶりにブンデスリーガのクラブ指揮官を務めることとなりました。

監督の平均年齢は47.9歳。

 ところで、ブンデスリーガ1部の監督を務めるためには、どのような素養が求められるのでしょうか。もしくは、その資格があると判断されるのでしょうか。

 すべては各クラブのフロントサイドの決断次第であることを承知の上で、日本のJリーグのケースと比較しながら、その傾向を少し考察してみたいと思います。

 まず、ブンデスリーガ1部を率いる監督の平均年齢は47.9歳(2019年2月6日現在)。最年長はデュッセルドルフのフリートヘルム・フンケル監督で、65歳。最年少はホッフェンハイムのユリアン・ナーゲルスマン監督の31歳。ちなみに今季のJ1リーグ18チームの監督の平均年齢は52.2歳で、最年長は浦和レッズのオズワルド・オリヴェイラ監督の68歳、最年少はガンバ大阪の宮本恒靖監督の42歳となっています。

 またブンデスリーガ各監督の中で最もチーム在籍年数が長いのは、2015年2月に就任したヘルタ・ベルリンのパル・ダルダイ監督の約3年9カ月(Jリーグは2012年から指揮を執り今季8年目の湘南チョウ・キジェ監督と松本・反町康治監督)となっています。

 指揮官の年齢層をもう少し詳しく見ると、年代別ではブンデスリーガは30代指揮官が3人、40代が7人、50代が5人、60代が3人と、若手の台頭が目立ちます。一方、Jリーグは30代の監督は1人もおらず、40代が7人、50代が8人、60代が3人と、40代と50代にほぼ集中しています。

全員がドイツ語を解せる。

 次にブンデス各クラブの監督の国籍を見てみましょう。ドイツ14人、オーストリア1人、スイス1人、オランダ1人、ハンガリー1人と、圧倒的に自国出身の指導者であることが分かります。

 加えて、これは特筆すべき点でしょうが、アドルフ・ヒュッター監督(オーストリア/フランクフルト)、ルシアン・ファブレ監督(スイス/ドルトムント)の母国はいずれもドイツ語圏。そしてダルダイ監督(ハンガリー/ヘルタ)は現役時代と指導者時代に長くドイツに住み、言葉を十分に習得しています。

 残りの1人、今年からレバークーゼンの指揮官に就任したボシュ監督(オランダ/レバークーゼン)はドイツ語圏ではないですが、「ドイツとの国境の近くで育った(オランダ、アペルドールン)ため、ドイツ語のテレビなどで自然に覚えた」と語り、実際に昨季ドルトムントの監督に就任した際は流暢なドイツ語でインタビューに答えていました。

 つまり、現在ブンデスリーガ1部で指揮を執る監督はすべてドイツ語を解せるわけです。

Jの監督の国籍は千差万別。

 昨季途中にバイエルンのカルロ・アンチェロッティ監督が解任された際には、指揮官のドイツ語力が問題視されて、それがチームコーディネイトの面で影響を及ぼしたと論じるメディアもありました。

 実際、他クラブのスポーツマネジャーやゼネラルマネジャー職に就く者からは、監督の条件に「ドイツ語」を挙げる声が多いのも事実で、それがブンデスリーガで指揮を執る監督の素養の重要案件ともなっています。

 一方、J1リーグを指揮する監督の国籍は千差万別。日本人が10人なのは当然として、スペインが3人(ミゲル・アンヘル・ロティーナ/C大阪、フアン・マヌエル・リージョ/神戸、ルイス・カレーラス・フェレール/鳥栖)のほかは各1名。

 韓国(チョウ・キジェ/湘南)、オーストラリア(アンジェ・ポステコグルー/横浜FM)、オーストリア(ミハイロ・ペトロヴィッチ/札幌)、ブラジル(オズワルド・オリヴェイラ/浦和)、スウェーデン(ヤン・ヨンソン/清水)となっています。

 Jリーグの場合は監督付きの通訳を介して指導を施すのが主流で、その流れに沿って、現在も様々な国籍の指導者がチームの指揮を執っているのではないでしょうか。

シャルケ指揮官は特異な例。

 また、ブンデスリーガの監督がどのような筋道で指揮官となったのかも興味深いところ。最も多いのは他のブンデスリーガクラブを指揮して、一旦職を離れた後に再び他クラブに監督に請われたケース、そして所属クラブのセカンドチームもしくはアカデミー組織のチームから昇格したケースで、いずれも7例ずつ。

 その他は、ハノーファーのドル監督のようにドイツ以外のクラブで実績を築いた人物が3例(他にはヒュッター監督、ファブレ監督)あります。

 特異な例は、ブンデスリーガ2部のFCエルツゲビルゲ・アウエを率いて2部残留を成し遂げた後に1部のシャルケからオファーを受け、当時31歳で2年契約を交わしたドメニコ・テデスコ監督のケースです。

ちなみに見た目では……。

 いずれにしても昨今のブンデスリーガを率いる指揮官は実績重視、もしくは各クラブのセカンドチームやアカデミーで経験を積んだうえで、満を持してトップチームを任されるパターンの二極化傾向にあるようです。

 あれこれ言っても人の見方はそれぞれ。最後は、僕の住むアパートメントの大家さんの娘さんが語る、ブンデスリーガ監督プチランキングです。

「ユリアン(・ナーゲルスマン)? 彼は若いけど、何だか野暮ったいのよね。テデスコは監督っていうよりもスタートアップの社長みたい。フンケルは私のお爺ちゃんに似ていて小言を言われそう。フロリアン(・コーフェルト)は、上手くいかなくなったらゲーム機のリセットボタンを押しそうよね。

 じゃ誰が好きかって? そんなの断然ニコ(コバチ)に決まってるでしょ! 見た目がダントツだもん!」

文=島崎英純

photograph by Uniphoto press


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