スーパーボウルに史上初の男性チア。チアの歴史140年で実は原点回帰?

スーパーボウルに史上初の男性チア。チアの歴史140年で実は原点回帰?

 2月4日、アメフトの頂点を決めるスーパーボウルの舞台に、史上初めて男性のチアリーダーが上った。ロサンジェルス・ラムズ(以下ラムズ)のチアリーダー、クイントン・ペロンとナポレオン・ジニーズ。彼らはチームのメンバーとともに、晴れの舞台で満面の笑みでパフォーマンスを行った。

 昨年3月に実施されたラムズのチアリーダーのオーディションには約300人が応募。オーディションはダンスとインタビューなど3週間にわたって行われた。

 1次予選では開始と同時に振付け師の指導のもとで、ダンスレッスンを行い、すぐに披露。振り付けを覚えられなかったり、間違った人はすぐに振り落とされ、ここで100人近くが脱落。2次予選では数名のグループで振り付けを披露。ここでさらに100人近くがカットされ、勝ち残った76人が最終選考に。

 そこからインタビュー、最終のダンス試験を経て、40人が選ばれている。華やかに見える世界とは裏腹に過酷な試験だったことが想像できる。

 ペロンとジニーズは2人ともダンス経験者。ペロンはNBAの試合でチアリーダーを見て、自分もやってみたいと思い、チアリーダーの経験がある友人に連絡したところ、週末にラムズのオーディションがあることを知り、すぐに参加。トントン拍子で勝ち進んだ。

抜群のダンスの実力でメンバー入り。

 チアダンスはポンポンを持った独特の動き、40人のメンバーと合わせて行うフォーメーションなど、ほかのダンスとは異なる要素が多くあり、オーディションでもそういったダンスを要求されている。

 またチームによってはオーディション前にダンスレッスンを提供しており、そこに通っている女性も多数いる。しっかり対策している女性たちと比べると不利にも思われる条件の下、ペロンとジニーズ2人は抜群のセンスと身体能力を披露。話題性だけではなく、実力で栄光の座を獲得した。

元々チアリーダーは男性?

 1980年代にNFLで男性メンバーがダンスをしたこともあったが、昨今はスタンツと呼ばれる組体操的な要素やアクロバティックな動きをする際のサポートに留まり、ダンスをする男性メンバーは皆無だった。

「チアリーダー=女性」という印象が強いが、チアリーダーを直訳すると「応援団」。

 アメリカでのチアリーダーの歴史を紐解くと、今から約140年前、1877年にプリンストン大学の男子学生がアメフトの試合の応援のために始め、その後、ミネソタ大学の男子学生が現在のようなスタイルにしたと言われている。

 女子が参加し始めたのは、1900年代初頭。その後、第二次世界大戦中には女性の割合が増加したが、当時、女性のスポーツがなかったことも応援に回った理由と考えられる。

 最初は声をあわせて応援したり、飛び跳ねたりするだけだったが、1960年代頃からポンポンを使ったり、ダンスやアクロバティックの動きが加えられ、応援だけではなく、競技スポーツとして進化を続けている。

 アメリカで大学生のアメフトの試合が始まったのが1869年。チアリーダーは大学のアメフトの歴史と共に始まり、歩み続けて来たとも言える。

NFLの募集要項に性別欄はない。

 NFLの数チームはすでに2019年度のチアリーダーのメンバー募集をしている。募集要項を見てみると、応募条件は18歳以上であること、シーズン中の活動にすべて参加すること、ほかのプロチームや大学などで活動しないことなど。

 性別については特に何も書かれていない。アメリカでは仕事の募集をする際に、性別を問うことは差別とされているからだ。持ち物や服装も、「ダンスができる服装、靴」という程度で、男女ともに応募できる条件になっている。 

 ただチームや他のプロスポーツではちょっと変わった募集要項も見かける。

 NHL(北米アイスホッケーリーグ)はチアリーダーならぬ「アイスガールズ」として募集しているので、男性にはちょっとハードルが高い。

地域社会に寄り添うチーム作り。

 また、アメリカ首都にあるNHLのワシントンキャピタルズの募集要項には、性別の明記はされていないが、「髪の毛は下ろすこと、フルメイクアップし、赤い口紅をつけること」というなんとも微妙に細かい参加条件が付いている。

 少々脱線してしまうが、NFLのテキサス州のダラスカウボーイズの募集要項には「アメリカ滞在が法的に認められている人」と書かれているが、不法滞在の人が過去に応募したことがあるのだろうか……。アメリカらしい条件とも言える。

 ラムズは2014年に同性愛を公表している選手をドラフトで指名しているほか、2017年にはロサンジェルスで行われたLGBTパレードの支援を行うなど、地域社会に寄り添い、そして開かれたチームを目指している。

 女性が多いチアリーダーの世界にペロンとジニーズの2人を迎え入れたことで、社会に対して強いメッセージを送ることができた。

 スーパーボウルでは残念ながら負けてしまったが、ラムズはチアリーダーの歴史に大きな足跡を残し、また多様性を認める組織のあり方を提示してくれたように思う。

文=及川彩子

photograph by UNIPHOTO PRESS


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