辻監督に指名されて「はぁ……」も、秋山翔吾は自分なりの主将像を築く。

辻監督に指名されて「はぁ……」も、秋山翔吾は自分なりの主将像を築く。

「来年、キャプテンやってくれないか」

 辻発彦監督の言葉に秋山翔吾は驚いた。

 2018年シーズン終了後、優勝旅行のためハワイに旅立つ直前、空港での出来事だった。秋山はその少し前、球団からの複数年契約の申し出を断り契約更改を終えたばかりだった。

「契約が1年だろうと2年だろうと関係ない。2019年のキャプテンは秋山にやってほしいんだ」

 そう秋山には伝えたと辻監督は振り返る。

「シーズンが終わって私がライオンズと契約更改をした際に、GMや球団社長には話しました。『秋山にキャプテンを任せたいと思っているんです』と。実は私が西武の監督に就任した2年前も、最初は秋山の名前が思い浮かびました。

 でも当時は、まずはチームの改革をしたかった。チームを変えるためには、中心打者となる浅村(栄斗・東北楽天)に成長してもらわないといけない。そこで、浅村に任せた経緯があった。だから、今度こそは秋山で行きたいと自分の中では決めていました」

最初は「はぁ……」だったが。

 辻監督の目には、秋山が迷っているように見えたという。

「秋山は『はぁ……』という感じで、戸惑っている様子でしたけど、そのあとも何度か話をして、『わかりました』という返事をもらいました」

 1月28日に開催された出陣式で、初めてキャプテンマークがついたユニホームに袖を通した秋山は語る。

「まだよくわからないんですよ。まだ何も始まっていないし、自分がキャプテンであることを実感するのはもっと先だと思います。まずはチームスローガンが“新時代、熱狂しろ!”なので、1からのスタートだと思って取り組みます。去年の優勝にしばられることはないんじゃないかと自分なりに解釈しました」

引き受ける側としての覚悟。

 秋山が常日頃からチームのことを考え、若い選手を練習に誘ったり、会話をする機会を増やしているのは周知の事実である。「チームのことを考えているから自分が成績を残せないのは恥ずかしい」と口癖のように語り、その行動で示してきた。発表を聞いたとき、おそらく誰もが「秋山ほどキャプテンにふさわしい選手はいない」と感じたことだろう。

 昨シーズンも、自身が不振に陥った8月を乗り越え、終わってみれば3割2分3厘の打率と、5割以上の出塁率を残している。だからこそ今、キャプテンマークをつけることにどんな意味があるのか。自分に何が求められているのか。「引き受ける」側にも覚悟の必要な決断だった。

「もし言い訳をさせてもらえるのなら『キャプテンをやったので打率が1割でした』と言えるけど、絶対にそんな言い訳が通用する世界ではないし、それじゃ自分がいちばん納得できないと思います。これまでもチームを引っ張る立場でプレーしてきたつもりですけど、何かの際にキャプテンということで表に立つ機会が増える。

 そういう意味では、今まで以上にしっかりした成績や姿勢を見せないといけないとは思っています。そうじゃなきゃ若い選手に話をするときに説得力がないし、チームにもいい影響を与えられないですからね」

 そして、こう続けた。

「自分に結果が出なかったときに、キャプテンという立場の重みを感じるかもしれません。キャプテンという役割で1年通じて、周囲も自分も納得できる数字を残せたら、自分自身の成長になるし、糧ともなると思います」

'18年後半戦に話していたこと。

 振り返ってみると2018年シーズンは開幕から首位を守り切り、リーグ優勝を果たしたライオンズだったが、ソフトバンクの猛烈な追い上げにあっていた8月、秋山はやはりチームのことを考えていた。

 秋山を含め、優勝経験のある選手が少ないチームにあって、「勝つために必要な経験」が何なのか。当時、秋山はこんなことを話していた。

「開幕から独走して、打線も好調で、連勝もして、このいい雰囲気で万が一、優勝できなかったら、おそらく選手はみんな迷うと思うんです。『じゃあ、この先、どうしたら優勝できるんだ?』と。だからこそ今シーズンは絶対に優勝しなければいけない。今年の戦いが今後のライオンズを決めるくらい、僕は大切なシーズンだと思っています」

キャプテンマークの効力。

 追いすがるソフトバンクを振り切り、リーグ優勝を果たしたが、その絶対に負けられない試合が続く9月、数々の逆転劇を演じたのも、また秋山だった。

「キャプテンだからみんなが話を聞いてくれるのなら、誰がやってもいいでしょう。それだけキャプテンマークには効力がある。自分がやるべきことは昨年までと変わったわけじゃないけれど、周囲の見方が変わるかもしれません。『キャプテンなのに』とか『キャプテンなんだから』と……。

 そういうふうに、プレー中に思われると苦しいだろうけど、それもやってみないとわからない。苦しく感じるときが、いつか来るかもしれない。でも、苦しまないために、がんばらなきゃいけないなとは思っています」

 辻監督は言った。

「投手陣は菊池雄星に頼り切っていたところもあるし、野手にしても浅村を頼りにしていたところはあるでしょう。だから今年はレギュラー陣が自分のレベルアップに努めて、すべての選手が勝ちにこだわった野球を、選手のほうから自発的にやってほしい。選手が考えてやっていかないとチームは強くなりませんから」

 秋山は語る。

「僕がやることは今までと変わらない。そして声をかけるとか、コミュニケーションを取るとか、それはキャプテンだけではなくて、みんながやれることをやればいいと思う。じゃあ、なんのために僕がキャプテンになったのか……。今年はずっと自分がキャプテンになった意味を考え続けるんだと思いますよ」

 秋山は、秋山にしか実現できない「キャプテン像」を作っていく。

文=市川忍

photograph by Kyodo News


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