欧州の、こんなところに野球人が!オーストリア代表監督・坂梨広幸。

欧州の、こんなところに野球人が!オーストリア代表監督・坂梨広幸。

 ヨーロッパと野球。この2つの言葉は、あまり結び付かないだろう。

 だが、ヨーロッパで野球が行われている国は意外と多く、1954年から2年おきに開催される「ヨーロッパ選手権」には今や予選も含めて28カ国が参加している。

 そして、今年9月にドイツで開催されるヨーロッパ選手権では、史上初の日本人監督が誕生する予定だ。

 オーストリア代表監督、坂梨広幸。

“音楽の都”ウィーンを首都に持つオーストリアで野球が行われていることなんて、日本はもちろんオーストリア国内でも知っている人は少ない。実際、オーストリアの人口が870万人に対して野球人口は約5000人。スポーツ用品店に野球道具など置いていないし、野球場はグラウンドがデコボコだったりフェンスがなかったりする。

 しかし、坂梨は選手として2004年に初めてオーストリアの地を踏んでから15年の月日をかけて、野球不毛の地に種をまいてきた。

最初は英語教師を目指していたが……。

「監督をやれているのは、適任がいないときに自分がたまたまそこにいたというだけです」

 坂梨はそう謙遜するが、「そこにいた」のは決して「たまたま」ではない。

 山口大学で英語教師を目指しながら軟式野球部でプレーしていた坂梨は、4年生のときに地元山口で行われた世界少年野球大会に運営スタッフとして参加した。得意の英語を活かして外国人コーチのアシスタントを務めていたところ、オーストリア代表チームの関係者からオーストリアでプレーしないかと勧誘される。当時、採用試験に失敗して進路に悩んでいた坂梨は、二つ返事でこの提案を受けた。

「助っ人外国人」としてプレー。

 オーストリア代表にとっても、国内リーグのレベル向上のために日本人選手を連れて帰りたい思惑があった。そして坂梨は2004年からオーストリアのクラブチームで「助っ人外国人」としてプレーする。

「オーストリア野球は、選手、チームによってレベルの差が激しかったです。それに練習は短いし、参加する選手も少ないので全体的にモチベーションも低いなと感じました」

 それでも2009年には、選手兼任監督として10チームが参加するトップのリーグで優勝、'13年からは3連覇と指導者としても手腕を発揮。オーストリア野球連盟から高評価を得ると、育成年代の代表コーチや監督を経て2015年に代表監督の地位に上り詰めた。

国内リーグ強化策が結実。

 過去、オーストリアの選手権出場は2007年の1回のみ。それもギリシャの出場辞退による繰り上げだったので、自力で予選を突破したことはなかった。

 坂梨が率いるオーストリア代表は2017年から始まった予選で、打力を武器にブルガリア、ギリシャ、イスラエル、セルビアといったライバルを次々に撃破。特にギリシャとイスラエルはアメリカ人を帰化させて戦力の充実を図っていたが、見事に打ち勝った。それは、オーストリアがかつての坂梨のように「助っ人外国人」を国内リーグに勧誘してきた成果だった。

「各チームが140km以上を投げられるような、アメリカ人やベネズエラ人を獲得するようになったんです。それによってバッターが速い球を打つための工夫を身につけていきました」

強豪国には150km投手も!

 ヨーロッパ選手権の本大会では、前回王者オランダやイタリアなど強豪国と戦わなければならない。

「選手権のレベルはとても高くて、特にピッチャーの投げるボールのスピードが変わってきます。オランダ、イタリア、スペインの『トップ3』のピッチャーは最速で153kmまで出ます。うちは速いピッチャーでも135kmなので、上位チームを相手にするには厳しい」

 現状の戦力でトップ3に勝つのは難しいが、そのための秘策も考えている。

「去年、メジャーで流行った『オープナー』のように、初回から1人1イニングずつタイプの違うピッチャーを投げさせたり、相手のデータに基づいて大胆に守備シフトを敷いていこうかなと考えています。攻撃は先取点を取れるかがカギになります。ファーストストライクからどれだけ積極的に振っていけるかが課題です」

 坂梨がヨーロッパで地道にまいた野球の種は、ドイツの地で花開くだろうか。

文=宮寺匡広

photograph by Hiroyuki Sakanashi


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