大木武が磨く岐阜式ダイヤモンド。「ミスマッチだから面白いんだよ!」

大木武が磨く岐阜式ダイヤモンド。「ミスマッチだから面白いんだよ!」

「3」→「0」→「2」。

 最近流行りの謎解きクイズのようなこの数字の変遷は、FWの数を表している。

 Jリーグでいち早く、バルセロナ型と言われた「3トップ」の4-3-3を本格導入、さらにはセンターFWを中盤に引かせて、相手ゴールへ迫る道筋をつくる「0トップ」に着手。そんな固定観念に捉われない、個性的かつ魅力的なチームづくりで知られるのが、FC岐阜で就任3年目を迎えた大木武監督だ。

 その独自のスタイルは「自分にはない発想を持っている」と、岡田武史元日本代表監督がみずから参謀役に招聘、後にはFC今治のメソッド事業部アドバイザーに起用したほどだ。

 そんな異能の指揮官が今シーズン取り組んでいるのが、中盤の4選手をひし形に並べ、前線に2トップを置く、いわゆるダイヤモンド型の4-4-2だ。

新しい「4-4-2」を追求する岐阜。

 プランデッリ監督時代のイタリア代表のような例はあるものの、中盤がダイヤモンドの4-4-2と言うと、最近ではあまり見かけなくなった感がある。が、今年の岐阜のダイヤモンドは、旧来のモノとは似て非なる新鮮さを覚える。

 大木監督によれば、イメージは4-3-3の変化形。つまり、4-3-3において3トップの中央に位置していた選手(センターFW)が中盤に落ちて、4-4-2のダイヤモンドの頂点へ移動。残った3トップの両ワイドのFWが距離を縮めて中央に寄り、2トップになる形だという。

 そもそも大木監督はシステム至上主義者ではない。この並べ方にしても、選手の持つ特性を最大限に活かすために、ピッチ上から導き出した回答のひとつに過ぎない。したがって「誰が試合に出るかによって(形は)変わってくる」と言う。

 実際シーズンが始まってからの練習試合でも、前線の顔ぶれによっては従来の4-3-3で臨んでいる。

「“トップ下”はあんまり好きじゃない」

 戦い方は一昨年、昨年からの継続、すなわち攻守の速い切り換えや球際の強さ、運動量といった要素がベースであることに変わりはない。ただし、選手の立ち位置が変わることによって、見える景色の違いはある。相応の微調整は必要だ。

「まず前線の2人のコミュニケーションが大事になる。あと、ダイヤモンドの頂点のことをよくトップ下と言うけど、それはあんまり好きじゃない。昔の司令塔タイプのトップ下ではなく、しっかりポジションを落としたり、戻したり、前に出て行ったり。トップ下だからと言って、役割はこれだけとか、そういうことは一切なくて。ほかの中盤の3枚と同じようにプレーして欲しい」

 そのダイヤモンドの頂点の位置は、開幕戦で2ゴールをあげた風間宏矢が務める。

「ボールに絡む以外の、守備の負担やポジションを戻す必要はより増える」と、多岐に渡る要求を理解した上で、「真ん中に人数が多いし、2トップにしっかりボールが収まる選手がいるので、そこの迫力は絶対に出ると思う」と、その効果を語る。

「真ん中にいる」ことこそ、岐阜式ダイヤモンド。

 開幕戦から2トップの一角を担っている山岸祐也も「去年は前線の両ワイドがサイドに張っていて、逃げ道としては機能していたけど、真ん中に掛ける人数が少なくて前を向けないシーンがあった。今年は自分とライザ(ライアン・デ・フリース)が前にいて、2人のコンビネーションだけで行けるシーンが多い」と、すでに変化を実感している。

 この真ん中にいる人の多さこそが、岐阜式ダイヤモンドの特色だ。

 中盤の左右の選手が中央寄りに位置するため、ダイヤモンドのサイズが非常にコンパクト。と、同時に変幻自在に形は変わり、中盤の4枚が三角(1-3)にも逆三角(3-1)にも四角(2-2)にもなれば、2トップの1枚が守備に参加するため落ちることで「4-4-1-1くらいの感覚」(MF宮本航汰)になることもある。ボールサイドへ前後左右、ユニットごと移動するような印象だ。

「サポートがいなくなるのが嫌」

「形はどうでもいい。(ダイヤモンドを)小さくしろと言っているワケではない。

 ただ、サポートがいなくなるのが嫌なんだ。

 要するにちゃんとボールに関われる、ボールを受けられる、もらえるところにいて欲しい。広がる広がらないが問題なのではなく、常にボールをもらえる距離を保って欲しいだけ。結果的には、広がるなと言っているのと同じなのかもしれないけど(笑)」(大木監督)

 サポートに適した味方との距離を縮め、ワンツーやパス&ゴーの連続で相手の守備網をかいくぐり、決定機まであと一歩……。そんな場面はつくれているものの、「少しミスが出たり、何かちょっと慌てたりする感じがあって」(大木監督)、現段階ではまだ狙い通りのゴールを奪えてはいない。

 それでも中央に人の数が揃っていることによって、失ったボールをすぐに奪い返したり、こぼれ球の拾い合いを制したりすることはできている。

 開幕戦後、対戦したモンテディオ山形FW阪野豊史は「自分の周りに相手がやたら多くいた気がした」と振り返る。木山隆之監督は勝負を分けたポイントに「内側にいる岐阜の選手たちに、セカンドボールを拾われることが多かった」ことをあげていた。

 ここまでのリーグ戦3試合で岐阜のあげた4ゴールは、すべて相手陣内でボールを奪ったところが起点になっているが、これは決して偶然ではない。

今後の課題はサイドの守備対応。

 ただ、それだけ中央に人数を掛けていれば、当然サイドの人手は足りなくなる。

 とりわけJ2でも増えてきた3-4-2-1を採用しているチームが相手だと、あちらこちらでミスマッチが生じ、タッチライン付近を上下動するウイングバックを捕まえにくくなる。山形戦では1試合で実に35本ものクロスを、続く第2節の徳島ヴォルティス戦でも26本のクロスを許すことになった。

 ここまではセンターバックの阿部正紀、GKビクトルなどの奮闘によって、大きな破綻は起きていないが、ピンポイントで合わせてくるクロスへの対応、相手のウイングバックにボールが渡る前の段階で、どれだけ対処できるのか。今後の課題になりそうだ。

 この両サイドの空いたスペースについて、FW山岸は「どちらかサイドに寄せているとき、逆サイドのサイドバックがスピードを持って前に出て行ける」と攻撃的な活用ができるはずと前を向くが、一方、大木監督は現状の出来に満足していない様子。

「外でプレーできる選手が、フリーになっていても、ボールを渡さなかったり、渡すときにミスになっている」

 繰り返し、磨きをかける必要がありそうだ。

目標はクラブ初の一桁順位。

 FC岐阜の今シーズンの目標は、6試合で勝ち点10(シーズンで勝ち点70になるペース)。クラブ初の一桁順位を目指している。

 現状できたこと、できなかったこと、それぞれありつつも、開幕3試合で2勝1敗の勝ち点6と、滑り出しは上々だ。

 どんな布陣にも、長所があれば、弱点もある。相手の強みを消そうとするあまり、自分たちの良さまで失ってしまうのでは意味がない。

「今度の相手とはミスマッチが起こりそう!? ミスマッチだから面白いんだよ」

 印象深い大木語録のひとつである。

 サイズは小さくとも、透明度やカットの仕方によって値打ちが決まるのがダイヤモンドだ。外連味なくサッカーと向き合う選手たちを異能の指揮官が研ぎ澄まし、これまで見たことのない輝きをキラリ放つ、宝石の誕生を期待したい。

文=渡辺功

photograph by J.LEAGUE


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