西岡良仁は男子テニス界の個性だ。身長170cmでトップ100という自負。

西岡良仁は男子テニス界の個性だ。身長170cmでトップ100という自負。

 錦織圭が逆転負けを喫し、大坂なおみまで完敗し、ダブルスでも誰もいなくなっている中、日本選手で最後に生き残ったのは西岡良仁だった。

 カリフォルニア州インディアンウェルズで開催されているBNPパリバ・オープン。『ATPマスターズ1000』と『WTAプレミアマンダトリー』の男女共催大会だ。

 波乱相次ぐ今大会で、世界ランク74位の西岡は1回戦で同65位のデニス・クドラを破ると、2回戦では今年の全豪オープンでもベスト8入りした第21シードのロベルト・バウティスタ アグートとのラリー戦を7−6(3)、6−4で制した。

 3回戦では、第9シードのステファノス・チチパスを破ってきた大会最年少の18歳フェリックス・オジェアリアシムに6−7(2)、6−4、7−6(5)の逆転勝利。18歳とはいえ193cm/88kgの立派な体格で、さまざまなショットを繰り出す完成度の高いパワーとテクニックを兼ね備えた選手だ。

「粘って粘って、最後にチャンスを作るというポイントの取り方が僕の原点」と言う西岡は、170cmの小さな体でその持ち味を駆使していつのまにか観客を味方につけるのが常だが、この一戦ばかりは、スター性抜群のニューフェイスを相手に完全なアウェーを強いられた。

 勝因は、乗り越えてきた壁の数、試されてきた個性に対する揺るぎなさではなかっただろうか。

ベスト8を目指したが背中痛。

 マスターズ初のベスト8進出をかけた相手は、ラッキールーザーとしてのチャンスを生かして勝ち上がってきたセルビアのミオミル・ケツマノビッチだった。世界ランク130位の19歳は西岡にとってさほど難しい相手ではなかったはずだ。

 しかしコートに入ってからのアップ中に突然背中に痛みを感じたという西岡は、第5ゲーム後にトレーナーを呼んでマッサージなどを受けるなどし、目に見えて苦痛をつのらせた。4−6で第1セットを失い、第2セット最初のポイントで相手のフォアのウィナーをただ見送り、そこでようやく棄権を決断した。

 もっと早い判断でも良かったはずだ。しかし痛み止めを喉に流し込み、たった1ポイントのため第2セットのスタートラインに立った行動に、無念と未練がにじむ。初のマスターズ8強がかかったコートを簡単に去ることはできなかった。

2年前はワウリンカを追い詰めた。

「(マスターズの)ベスト16の対決としては、将来もう来ないくらいのチャンスだと思っていました。それは、ここまで自分でつかんできたものだった」

 試合が終わって3時間半後、ようやく記者会見に姿を見せることができた西岡は、もう踏ん切りがついたような表情で話した。

 このインディアンウェルズは、2年前に予選から出発して今回と同じ16強入りした思い出の場所だ。世界ランク21位のイボ・カルロビッチ、14位のトマーシュ・ベルディヒとトッププレーヤーを連破し、当時3位だったスタン・ワウリンカさえ追い詰めるドラマチックな勝ち上がりだった。

 しかし、翌週のマイアミ・マスターズで左膝の十字靱帯を断裂。インディアンウェルズでのタフな連戦で肉体に負った深刻なダメージと無関係ではなかっただろう。結局9カ月もの間、戦列を離れなくてはならなかった。

ATPに対して、もの申したことも。

 あの苦い出来事、そして今回の残念な結末からも、課題は明白だ。今年の全豪オープンではこう話していた。

「僕たちのように(小柄な選手は)ラリー戦でポイントをしっかり組み立ててポイントを取るプレースタイルを持ち味としているので、必然的に体力を使う。連戦になるとけっこうタフになるので、どれだけ早く試合を終えられるかというところにかかってくる」

 そういうプレースタイルが「おもしろいと思ってもらえればうれしい」と感じている一方で、185cm以上が〈普通〉である男子テニス界で少数派の自分たちへの理解が浅いことを嘆きもする。ちなみに、今大会の16強の中で西岡がもっとも小さいのは言うまでもないが、185cmに満たない選手は西岡を含めて4人しかいない。

 昨年のトロントで予選2試合をいずれもフルセットで勝ち上がった西岡は、本戦1回戦で世界ランク13位のパブロ・カレーニョブスタを相手に第1セットを0−6で落として棄権したのだが、連日の試合を強いられたことに対してATPにもの申したという。

「『僕らがどれほど体を酷使してるか、あなたたちにはわからないでしょ?』みたいなことを怒って言いました。(ATPは)まあちょっと考えるとは言ってましたけど……」

 切実な要望ではあるが、冷静になってみれば、無茶な要望であることくらい西岡もわかっただろう。

堂々と不満を言えた理由。

「ニシオカは2試合連続でフルセットを戦ったのか。アイツは体が小さいからそろそろ1日休みを入れてやらないと、次はもたないな。2mを超えるイズナーとカルロビッチはサービスエースばかりで体力を使ってないから、連戦でもいいだろう」

 ツアーがいちいちそんな配慮や判断までしなくてはならなくなったら大変である。

 ただ、西岡がそんな不満を堂々と言えたのは、「自分たちのようなタイプの選手もいるからテニスはおもしろいという部分もあるでしょう?」という自負がどこかにあるからに違いない。

 しかしその魅力をキープするには自分でなんとかするしかない。その一環だろうか、コートでの練習を一切行なわない日が数日あった。

「今の自分は、あまりテニスをする必要はないと思っています。3時間の試合をやった翌日にまた1時間やる意味はあまりない。休めるなら休みたいので」

 練習時間、練習方法、トレーニング方法、ケアの仕方、食事――体作りに関わる全てにおいて、自分に最適な道をこれからも探していく必要がある。

 トップ100に170cmの選手は2人しかおらず、西岡ともう1人のディエゴ・シュワルツマンも体の作りは全然違うのだ。誰かを参考にはできない。チャレンジングな模索である。

文=山口奈緒美

photograph by Getty Images


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