ベテランとの敗戦で見えてきた、“世界1位”としての大坂なおみの課題。

ベテランとの敗戦で見えてきた、“世界1位”としての大坂なおみの課題。

 大坂なおみはマイアミの波に乗り損ねた。

 白砂のビーチと青い海が見渡せるキービスケーンから、内陸にあるNFLドルフィンズの本拠地ハードロック・スタジアムへ会場を移したマイアミ・オープン。ハードコートの色も昨年までのパープルから、海を連想させるオアシスブルーへと変わった。

 自宅を構えるボカラトンから近く、新装された地元大会に世界ランキング1位として挑んだ大坂は3回戦でシェイ・スーウェイに6−4、6−7、3−6で逆転負けを喫した。

 ライジングで打つカウンター、相手をいら立たせるドロップショットやストロークのリズムを変えるスライス。

 台湾出身の33歳が繰り出す熟練の技の術中にはまった大坂は「ダウンザラインに打たれ、クロスコートでもやられた。予想しづらいプレーだった。彼女は自分が打ちたいところでウィナーを取る力がある。ただ相手がどうというのではなく、自分が未熟だった」と敗因を語った。

大坂「気持ちが乱れた」

 寄せては打ち返す波で、大坂は勝利への波を一度はつかみかけた。

 第1セットは1−4から挽回。シェイ・スーウェイのテンポにも焦らず、じっくりとラリーで試合を立て直し、相手のミスを誘い出す形を作り出した。6−4で奪い、第2セットもこの流れを継続して5−4のサービングフォーザマッチへ、勝利目前に迫った。

 しかし、この第10ゲームで大坂は30−0からサーブが乱れ、自分で波から降りてしまう。2つのダブルフォールトで30−40となり、焦りから放ったバックハンドのダウンザラインが線を越える。

「勝利への意識」を聞かれた大坂は「無意識のうちにそうなった。なぜかは分からないが、気持ちが乱れた。少し普通ではなくなった」。世界1位の重圧との関係については「うまくそのストレスには対処できているつもりだった。でもそうじゃなかったのかも」。気持ちのぶれを立て直せないまま、第2セットをタイブレークで失った。

シェイ・スーウェイの信念。

 一方、シェイ・スーウェイは自分を知っていた。

 今年の全豪オープン3回戦で大坂相手に第2セット途中までリードしながら苦い逆転負けをした経験から「何が起きても不思議ではない。自分のやるべき事に集中するだけだった」と。

 トリッキーで相手を揺さぶるテニスは、誰が相手でもどんな状況でも変わらない。波に逆らっても勝ちは近づかない。そんな信念が第3セットの最後まで貫かれた。

 リターンゲームでは大坂の第2サーブを読み、常にオープンスペースを狙って相手を動かす。サービスゲームでも大坂の甘いリターンを見透かすように3打目のポジションを構えて、ライジングで両手打ちのフォアを決めた。ネットに詰めてのボレーも力任せで決めるのではなく、ラケットのフェースを球に合わせるだけのお手本のような技術。

 波を自在に操るベテランらしさを出し切ることだけに集中していた。

「波待ち」の心構えも必要。

 予期せぬ心の揺れでこれまで乗れていた波にバランスを崩すこともある。

 長い試合の中では、求めている波が来ない時間もある。

 風を読み、白い小さな波しぶきから海全体のうねりまで観察する「波待ち」も、勝利を引き寄せる上では大事な心構えだ。

 大坂は第3セットでじっくりと波を待つ必要があったが、2−0のリードから追いつかれると自分の力で強引に波をつかまえようとした。リズムを乱してミスが増え、白い泡とともに勝機はどんどん遠のく。第1セットのようにじっくりとしたラリーで立て直せば、また勝利の波は大坂に訪れたかもしれない。

 青いコートの中で生じたうねりを冷静に見つめる目がなかった。

「自分を過大評価していたかも」

 ただ試合後の大坂は、そんな大局観の大切さにも気付いている様子だった。

「自分を過大評価していたかもしれない。でもそれは自信があるという意味とは違う。彼女(スーウェイ)が前回の試合から学んでいたことを忘れていたし、私は試合中に起きていたことをすべて把握して考えることができなかった。窮地を脱することができなかった。この負けという事実を乗り越えられれば、今日はいい試合ができたとも思える」

 4月からは欧州のクレーシーズンへと舞台を移す。次戦は約1カ月後のポルシェ・グランプリ(ドイツ・シュツットガルト)。

 土の戦いでは粘り強く、どんなに劣勢の状況でも踏ん張ることが求められる。世界1位を守るのではなく、世界1位に在り続けるための戦いが始まる。

文=吉谷剛

photograph by Getty Images


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