2部昇格のヴォレアス・古田が熱弁。「バレー界で北海道から勝負する」

2部昇格のヴォレアス・古田が熱弁。「バレー界で北海道から勝負する」

 3月16日、旭川で行われた男子バレーボール・Vリーグディビジョン3で優勝を決め、初参戦となった前年度から連覇を果たしたヴォレアス北海道。今年2月に発表されたライセンス取得状況でもS2(ディビジョン2への参加資格)の条件をクリアし、来シーズンからは2部リーグへの昇格が決定している。

 ヴォレアス北海道は、2016年に旭川市を拠点として、バレーボールを通じて地域を活性化することを目的に誕生したプロ・バレーボールチームである。

 旭川という土地でときには1000人を超える観客を集め、会場ではバレーボール界初のキャッシュレス化を進めるなど、新しい試みに挑戦し続けている。スポーツビジネスの世界でも「北の異端児」「北の改革者」と呼ばれる、いま最も注目されているチームだ。

バレーボールはやめるつもりだった。

 そんな集団をけん引している主将、古田史郎もまた、「普通ではない道」を歩んできた選手である。

 古田は北海道函館市出身の31歳。法政大学在学中に全日本入りを果たし、将来を嘱望されたウィングスパイカーだった。その後、男子1部の強豪である東レアローズに入団。

 しかし故障のため、わずか3シーズンで退部に至る。その後、ジェイテクトSTINGSとプロ契約を結び、トップリーグに復帰。2017年より出身地であるヴォレアス北海道の一員として活動している。

「東レを退職したあと、バレーボールはやめるつもりで北海道に戻ったんです。肩、腰、股関節とケガが続いて、すっかりモチベーションも下がっていて……。

 でも地元に戻って『何をしようか』って考えたときに、全く何も思い浮かばなかったんですよ。それまでは、こうなりたい、こうしたいって言えば周りにいる誰かが処方箋を用意してくれて、僕はそれを飲むだけでよかった。今までいかにバレーボールに守られてきたかを思い知りました」

「今までの自分はなんて甘かったんだろう」

 函館有斗高校時代には北海道選抜に選ばれ、大学時代に代表入り。引く手あまたでエリートコースを歩んできた古田は、バレーボールを失って初めて社会の厳しさに直面する。

「今までの自分はなんて甘かったんだろう」

 何もできない自分に愕然とした。

 故障が癒えた直後、バレーボールをしている学生と一緒に体を動かす機会があった。「やっぱりバレーボールが好きだ」と実感した古田は、競技に復帰する意思を固める。そして選んだのがプロという契約方法だった。

監督の指示を忠実に守るのが日本バレー。

 プロ契約したジェイテクトで、ブルガリア代表として長年活躍したマテイ・カジースキとともにプレーしたことも、古田の心境を変えるきっかけになった。

「プロとして世界のトップでプレーする彼の価値観に触れることによって、『このままじゃだめだな』って一層、強く思うようになりました。

 マテイは毎シーズン『優勝するために今年はここまではできるようになろう』と長期的な目標のほかに、短期的な目標を口にしていました。そのおかげで、成長しながら結果を出す喜びを教えてくれた。『それぞれが考え、チームの目標が実現するのがチームスポーツの楽しさだ』『ひとりじゃ勝てない。みんなで成長して、みんなで勝とう』といつも言ってくれました」

 同時に、1点を奪うためには多様な方法があり、海外の選手はその想像力と対応力に長けていることも思い知った。

「監督の言うことができたか、できなかったかを問われるのが日本バレーのコーチングです。どの方法が最も点を取れる確率が高いかなんて、状況によって判断は変わるはずなのに『監督やコーチの言ったことができたかどうか』を重視している。自分で考えるための指導ではないんですよね。

 海外のトッププレーヤーと日本人選手の差は、身長でもパワーでもない。その瞬間、瞬間でベストな選択を、それも楽しんでできる対応力だと感じました」

北海道はバレーの「分母」が大きい。

 そして2017年、ジェイテクトを退団し、前年に地元・北海道で誕生したプロチーム、ヴォレアス北海道の一員となった。これまで自分が体験し、感じたことを自分より下の世代に伝えたいという古田の目標が、チームの理念と重なったことが入団の要因のひとつだ。

「ヴォレアスが発足するまで、北海道にトップカテゴリーに挑戦できるチームはありませんでした。でも家庭婦人のチームはたくさんあるし、小学生チームも多い。とにかく土地が広大な分、分母が大きいんです。

 その上、雪が降るので冬は屋内競技が強い。バレーボールをツールとして、チームの価値を創造していける可能性は高いと考えています」

 ヴォレアスの発起人である池田憲士郎ゼネラルマネジャーとは高校時代から旧知の仲だ。池田が高校3年、古田が2年のときに北海道選抜で一緒にプレーしたのが最初だという。

 当時、練習相手になってくれたのが、元Vリーガーや関東強豪大学出身者が在籍する北海道教員クラブというチームだった。

「衝撃を受けましたね。うまかったし、強かった。練習相手になってくれた期間に、僕らも飛躍的にうまくなりましたから」

 強い対戦相手がいること、憧れとなるチームが地元にあることの大切さを知った。

「池田がヴォレアスを立ち上げる前からずっと『北海道から勝負したいよね』という話をして盛り上がっていました。ただ、北海道に戻ることは自分のキャリアの終わりではなくて、より良い自分になるためのスタートにしたかったんです。

自らの成熟とヴォレアスの発足。

 過去に1部でプレーしていた実績があるからだけではなくて、『ヴォレアスで成長したから古田はすごい』と言われるのが、今の自分の目標です」

 競技者として技術と考え方が熟した時期に、ちょうどヴォレアスの発足が重なった。

「1点を取ってみんなで一緒にワーっと盛り上がる、そういう展開は北海道の道民性にもマッチすると思います。ぜひ僕の成長をサポーターの方に間近で見てほしいですね」

理想論と言われても、言葉にする。

 次年度からはひとつ上のカテゴリーで戦うこととなる。1部リーグを経験している古田にとってヴォレアスの現在地はどう見えるのか。

「最終的な目標はもちろんトップカテゴリーのディビジョン1ですし、日本一になることです。でも現状では、差はまだあるかなというのが正直なところですね。現在のヴォレアスは、いいときはいいけれど、その力を安定して発揮できない。自分たちの目指しているバレーボールが実現できて勝てた試合もあるし、逆にできなくて苦戦した試合もある。でも、確実に成長はしていると思います」

 ディビジョン2への昇格はあくまで通過点で、チームも古田自身も、本気でバレーボール界を変えたいと考えている。

「理想論と言われても構いません。だって言葉にしないと伝わらないし、人を巻き込めないですから。それに、語る人に熱がないと相手に本気だと伝わらないと思います。僕は自分にしかできない方法でバレーボールの価値を高めていきたい」

 開拓者の血を受け継ぐチームに、この主将在り。今後の動向に注目したい。

文=市川忍

photograph by VOREAS HOKKAIDO


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