サートゥルナーリアに距離の壁なし。ダービー、凱旋門賞へ夢は広がった。

サートゥルナーリアに距離の壁なし。ダービー、凱旋門賞へ夢は広がった。

 平成最後のクラシックとなった第79回皐月賞(4月14日、中山芝2000m、3歳GI)をクリストフ・ルメールが騎乗した1番人気のサートゥルナーリア(牡、父ロードカナロア、栗東・角居勝彦厩舎)が優勝。平成17(2005)年のディープインパクト以来14年ぶり17頭目、平成では5頭目の「無敗の皐月賞馬」となった。

 サートゥルナーリアは、パドックに出てきたときから1頭だけ雰囲気が違い、どっしりと落ちついていた。大股で歩を進めながら、下げ気味にした首を伸ばし、ときおりハミを確かめるように口を動かす。

 昨年12月28日のホープフルステークス以来、中106日と大きく間隔をあけての参戦だったが、マイナス4キロの馬体重に現れていたように、臨戦態勢は整っていた。

「100%の状態ではなかった」けど。

「レース間隔をあけた一番の理由は、オーナーサイドと相談して、ダービーを最大目標に定めたことです。皐月賞の前にひと叩きすると、栗東から中山に2度長距離輸送してからダービーに出走することになり、負担が大きくなりますからね」

 角居調教師はそう話した。もちろん、ルメールも承知していた。

「今日は休み明けだから、100%の状態ではなかった。パドックで、馬はとても綺麗だった。静かで、プレッシャーがなかった。ホープフルステークス(騎乗したのはミルコ・デムーロ)が強かったし、調教の動きもよかったのでもともと自信があったけど、さらに安心しました」

 前走後は、外厩のノーザンファームしがらきで過ごし、ひと月ほど前に帰厩。じっくり乗り込まれてきた。とはいえ、ここを使ってからさらに上昇する状態だったことは確かだ。取りこぼすとしたら、ローテーションからも、また、直線が短く紛れることの多いコース形態からも、この皐月賞だった。もし負けたとしても、あらかじめ「敗因」が用意されていたようなものだった。

 逆に、ここを勝つようなら、無敗の二冠制覇の可能性が一気に高まる。

ルメールの指示を素直に聞き入れ。

 サートゥルナーリアは、道中、中団の外目で折り合いをつけた。

 1000m通過は59秒1。前の馬にも後ろの馬にもチャンスのある平均ペースだ。やや行きたがっている馬もいたが、サートゥルナーリアはルメールの指示を素直に受け入れ、ゴーサインが出るのを待ちながらエネルギーを溜めている。

 3、4コーナー中間で、すぐ前を走っていた川田将雅のヴェロックスが外からマクるように進出し、先行馬をかわしにかかった。それを追いかけるようにサートゥルナーリアも外からポジションを上げた。

 ヴェロックスが先頭で直線に入った。サートゥルナーリアはその外に馬体を併せた。

 ラスト200mを切った。サートゥルナーリアとヴェロックスが馬場の真ん中で叩き合い、内からダノンキングリーが追い上げてくる。勝負はこれら3頭に絞られた。

凄まじい叩き合いの末に先着。

 前走まで、サートゥルナーリアは楽に他馬を突き放してきたが、さすがにここは相手も強い。サートゥルナーリアとヴェロックスは互いに譲らず、激しく叩き合う。そのときだった。ルメールの左ステッキを受けたサートゥルナーリアが内に刺さり、ヴェロックスを弾き飛ばすような格好になった。

「馬がスタンドを見た。物見をして、少し内に行った」

 そう話したルメールはすぐさま右にステッキを持ち替え、追いつづけた。

 ヴェロックスも闘志を失わず食らいつき、内のダノンキングリーも伸びている。

 3頭が凄まじい叩き合いを繰りひろげたままゴールを通過した。

 先頭でフィニッシュしたのはサートゥルナーリアだった。ヴェロックスは頭差の2着、ハナ差の3着はダノンキングリー。昨年の2歳王者アドマイヤマーズは、そこから2馬身遅れた4着だった。

「もうちょっと楽に勝てると」

 電光掲示板に審議のランプが灯った。サートゥルナーリアがゴール前で内に斜行し、ヴェロックスの進路が狭くなったことに関する審議だった。中継時間内に勝利騎手インタビューができるかどうか、テレビ局のスタッフがやきもきするほど審議が長引いた。

「まさか降着じゃないだろうな」という声も聞こえたなか、ようやく確定のランプが灯った。着順の変更はなく、ルメールに過怠金5万円が課されたものの到達順位どおりに確定した。

「もうちょっと楽に勝てると思っていた。休み明けだったから、最後は馬が疲れた。けど、ゴールまで頑張ってくれた。今日はいい経験になった」

 そう話したルメールは、この勝利により、史上9人目のクラシック完全制覇を果たした。

「ジョッキーの人生にとって、いいアチーブメントになった。馬主さん、厩舎スタッフのみなさんに感謝しています」

距離の壁はないと角居師も自信。

 さあ、次は「競馬の祭典」日本ダービーだ。勝てば、ディープインパクト以来14年ぶり、史上7頭目の「無敗の二冠馬」となる。角居師はこう話す。

「競馬で掛かるようなところもないし、距離の壁はないと思います。今日、競馬でしっかり動かしたので、無理な調整をしなくてもいい。素晴らしい結果を出せるよう頑張ります」

 令和元年5月26日、第86回日本ダービーで歴史的名馬誕生となるか。

 オーナーサイドは凱旋門賞(10月6日、仏パリロンシャン芝2400m、3歳以上GI)に登録する意向を示した。

 ダービーの結果次第で、夢はさらにひろがる。令和最初のダービーから、目が離せない。

文=島田明宏

photograph by Keiji Ishikawa


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