磐田vs.清水のダービーは大熱戦も静岡サッカー甦生への道は、まだ先。

磐田vs.清水のダービーは大熱戦も静岡サッカー甦生への道は、まだ先。

 サックスブルーに染まったホームのジュビロ磐田が、オレンジ色の清水エスパルスを迎えたJリーグ第7節、静岡ダービー。

 リーグ戦では通算49回目となったサッカーどころ自慢の一戦だが、今年はやや様相が違った。

 前節、湘南ベルマーレ戦でようやく今季初勝利をあげた13位磐田、一方の清水は前節のFC東京戦の逆転負けを喫し、開幕戦からの未勝利記録をクラブワーストタイの6まで伸ばし、序盤戦とはいえ最下位と低迷。2ステージ制だった1999年には日本一を決めるチャンピオンシップを争った両クラブだが、日本サッカーを牽引してきたかつての勢いはもう消えかけている。

 それでも、会場のエコパスタジアムに集まった観衆は3万1000人を超え、地元メディアも大挙して押し寄せる状況は、リーグ戦の静岡ダービーが始まった1994年からまったく変わっていない。

 そして、サックスブルーとオレンジが二分したスタンドの光景と、ファンやサポーターが発する歓声と激しいブーイングなど、スタンドの熱気と盛り上がりも決して衰えてはいなかった。

苦しんだ鄭大世の先制ゴール。

 試合はともに序盤からビッグチャンスを演出しながらも、得点につながらない展開が続いた。

 先制したのは、崖っぷちに立たされている清水だった。前半36分、磐田DFがクリアミスしたボールをゴール前でGKカミンスキーと競り合ったFW鄭大世がわずかに早く頭で捉えた。ちょっとしたミスを逃さず今季2点目を決めた35歳のベテランは、拳を何度も振り上げ、歓喜するイレブンの輪に吸収された。

 鄭大世は2016年、サッカー人生で初めてJ2でプレー。37試合で26得点と脅威のゴールラッシュで1年でのJ1復帰に大きく貢献した。しかし昨年は、途中加入したFWドウグラスの活躍もあり出番が激減。今季はその大砲が体調不良で開幕前から戦列を離れたため、ここ3試合連続で先発出場するなど、出番が急増していた。第4節ヴィッセル神戸戦では途中出場から同点弾を決め、再び存在感を高めている。

「モチベーションは高い。何とか自分のゴールで」と勝利を誓って臨んだ大一番での今季初白星。

「自分が決めて勝てたことや、去年の苦しみを考えたら涙が出てきた。まだ序盤だが、今日の1勝は間違いなく今後につながる」と、巻き返しに自信を見せた。

北川航也の追加点、追い込まれた磐田。

 ベテランの先制ゴールに続いたのは、昨年10月に初の日本代表入りを果たした新エースのFW北川航也だ。1−0で迎えた後半13分、今季新加入の清水MF中村慶太が「相手は前半から横パスが合っていなかった」と相手のミスパスを狙い、DFの裏に抜けた北川に絶妙スルーパス。「GKの位置もしっかりと見えた」とエースが難なく左足で追加点を決め、清水がさらに優位に立った。

 しかし、ホームの磐田もこのままでは終われない。

 というのも、前回のリーグ戦対決となった昨年10月は、ミスからの失点を皮切りに清水のホームで1−5と大敗。この屈辱の敗戦を含む得失点差が最後まで尾を引き、昇格プレーオフを制してようやく残留を決めただけに、「あの大敗を払拭する一戦に」と名波浩監督らチームが一丸となって勝利を掴みに臨んだ大一番だったのだ。

 チャンスは、選手交代から生まれる。後半8分にルクセンブルク出身選手として初のJリーガーとなった同国代表FWロドリゲスを、さらに同18分には2点目を献上するパスミスをしたMF山田大記に代えてトルコ出身のDFエレンを投入。迎えた同26分、そのエレンの左クロスをロドリゲスが頭で合わせ、1点差。磐田の反撃が始まった。

 その後も敵陣まで深く押し込む時間帯が続いた磐田だったが、体を張って守る清水DF陣の前になかなか得点を奪えない。一進一退の攻防が続くも、反撃はここまで。49回目の静岡ダービーは、アウェーの清水が2−1で制した。

ダービーでエコパを満員に。

 試合途中から降りだした雨の中、必死に応援を続けるサポーターの姿を見た地元放送局の関係者はこう話す。

「人気や注目度がやや下火になったとも言われているが、スタンドの皆さんの熱はやっぱり静岡ダービー。地元のためにも、この熱が冷めないようなダービーを続けなければいけない。できれば、ここが常に満員になるような注目の試合にしたい」

 最大5万人を集客可能なスタンドの空席にも目を向けた。

ミスが勝敗を分けた静岡ダービー。

 守勢に回った終盤をしのいだユース育ちのU-22日本代表・清水DF立田悠悟は、「勝てたことが大きな自信になる」と涙で特別な一戦での勝利を喜んだ。同じく清水ユース出身で決勝弾を入れた北川も「ダービーの勝利はただの1勝でなく、それ以上の価値がある。先につながる勝点3だ」と、改めてダービーの重要性を口にした。

 一方の磐田は、昨年に続いてリーグ戦の静岡ダービー2連敗。「ダービーのような拮抗した試合で、あってはならないことが、2試合連続で起こったことが残念」と名波監督。パスミスで2失点目を献上した山田も「取り返しのつかないミス。この試合からポジティブなものを見つけるのは難しい」と厳しい表情に終始した。

 下位で争いながらも、今回も熱い戦いを演じた静岡ダービー。

 だが、ミスからの得失点が勝敗を分ける戦いに、「サッカーはある意味でミスを突くスポーツ。それで勝敗が決まる試合もあるだろう。しかし、以前のダービーはそういうミスが少なかったはず」とはあるOB。

 かつてのような、頂点を極めたサッカーどころの自慢の戦いが見られる日は、しばらく先になりそうだ。

文=望月文夫

photograph by J.LEAGUE


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