久保建英のキックに水沼貴史が注目。メッシ、ロナウドと同じ素質とは?

久保建英のキックに水沼貴史が注目。メッシ、ロナウドと同じ素質とは?

 今回はコパ・アメリカを控えたタイミングなので、日本代表のお話を。

 まず、先日のキリンチャレンジカップ。なんといっても一番大きな出来事は3バックのテストでしょう。以前から森保一監督の中で、いろいろなオプションや引き出しを持っておきたいというテーマがあったと思いますが、それが今回実現したと見ています。

 自分が思い描くプランを試すタイミングを窺っていたんでしょう。欧州でプレーする選手たちにとっては、オフに入る前に、W杯予選に向けていい刺激になったと感じています。

 A代表デビュー戦ということですっかり話題の中心となっている久保建英は何の違和感もなく試合に入れていましたね。“18歳、18歳”と騒がれる中で存在感をしっかり出したことは、純粋に評価していいと思います。

 健太(FC東京の長谷川監督)とも話す機会があったんですが、今年はレンタル先のマリノスから戻り、どう成長したかという期待と疑心暗鬼が入り混ざったシーズンインのなかで、頭のキャンプからトップチームに帯同、トレーニングマッチでは遜色なくプレーができていた、と。自分の力でポジションを獲得し、Jリーグで活躍した。

 それで代表に入ったわけですから、エルサルバドル戦で見せたプレーは当然だったと言えるでしょうね。

「強い球を蹴れる」のが好き!

 昨年のプレーと比べて明らかに違いを感じるのは、体の強さ。体幹が強くなったことで、多少体をぶつけられても顔を上げてプレーできている。全体に余裕が生まれています。

 エルサルバドル戦でも、倒れそうになりながら相手の股を抜いた場面がありましたよね? 体幹のトレーニングを積んでいると耳にしましたが、そういった成果もしっかりと表れたシーンでした。

 また、代表戦を見て改めて感心したのは、彼は決して“無理をしない”んですよね。ここは仕掛けるとき、ここはボールをはたくとき、ここは預けるとき、と瞬時に選択できる。そういったところも余裕が出てきたと感じました。

 ただ、僕が久保のプレーで何よりも好きな部分は、パスにおいても、シュートにおいても「強い球を蹴る」ところ。

 エルサルバドル戦で、投入後すぐにシュートを打ったシーンがありましたよね。“しっかりコースを狙え”という声もありますが、最初のプレーで「強いシュートがある」ことを相手に印象づけることはとても重要。次のプレーにも幅が出てきます。

野球の投手の「真っ直ぐ」と同じ。

 Jリーグでもニアをぶち抜くシュートや、FKで逆サイドにドーンって蹴り込むゴールを決めています。育成年代の時からそこが彼の魅力だった。決してテクニックだけの選手じゃないんですよ。

 世界に目を向けてみると、メッシもそう。テクニック、スピード、ドリブルばかりが注目されますが、強いキックやシュートに“絶対的なもの”がある。それがあるからこそボールに変化をかけたり、チップキックで浮かしたり、違いを魅せることができる。強いボールを蹴れるという点は、久保の一番の武器だと思いますよ。

 よく野球でたとえるんですが、良いピッチャーって「真っ直ぐ」をしっかり投げられる選手でしょ? 速い球があるから打者には変化球や落ちる球が効いてくるわけで。野球にしてもサッカーにしても、要は土台がないと、いろいろな技を持っていても通用しない、壁にぶち当たるんです。

 また、強いボールを蹴れる人はキックフェイントを有効的に使えるんですよね。僕はかわすテクニックの中でキックフェイントが一番効くと思っていますから。クリスティアーノ(・ロナウド)だって強いシュートを打てるから、切り返しが効くわけです。

 その素質を久保は持っている。まぁ、だからと言って、すぐにメッシやクリスティアーノになれる訳ではないんだけどね(笑)。

アウダイールの股を抜いたら……。

 現在、Jリーグではある程度できる手応えを持っていると思いますが、確固たる自信までには至っていないと思います。もちろん、自信を持っているとしたら、それはそれでとても良いことですが、これから臨むコパ・アメリカでは、自分のプレーが通用するか否かをしっかり感じ取ってきてほしいですね。

 コパ・アメリカで対峙するであろう選手たちは、タックルひとつとっても、強度と深さが桁違いですからね。頭で理解するのと、肌で感じるのではまた別の話ですから。

 タックルで思い出したんですが、ちょっと古い話をしてもいいですか?

 実は僕も1989年に錚々たるメンバー(のちにアメリカW杯を制覇)のブラジルと対戦したことがあります。対峙したのはブラジル屈指のDFアウダイールだったんですが、彼の股を抜いて「お、やった!」と思った瞬間に後ろから足をスコーンとやられたんです。「お前、ふざけるな!」みたいな感じで。映像、どこかに残ってないかな……(笑)。

 もちろん、現代のサッカーと置き換えることは難しいけれど「やっぱり『世界』を舐めちゃいかんな」と思いました。

「えっ?」という経験をしてほしい。

 僕たちの場合は親善試合だったので、それ以上にシビアな戦いをコパ・アメリカという大舞台で体験できるのは、選手人生においても大きいと思いますよ。コパ・アメリカはW杯とも違う何かが渦巻いている大会ですから。

 歴史があって、文化もある。アンダーカテゴリーでも南米との対戦経験はあるはずですが、おそらくレベルが違うでしょう。自分が「えっ?」と感じる経験をたくさんしてほしいな。

 そこからボールを預ける、フリーランする、仕掛けるという、彼の中での判断がもっともっとクリアになっていくはずです。

 日本がグループリーグで対戦する国を見ると、すごい選手たちがたくさん出場しますね。エクアドルには長くプレミアリーグで活躍するバレンシアがいる。ウルグアイには、スアレスやカバーニはもちろん、中盤にはベンタンクールやベシーノ、ルーカス・トレイラ、最終ラインにはゴディンがいます。

ウルグアイ、チリとやれる豪華さ。

 特にウルグアイは、昨年日本に負けていて(3−4)、選手たちからすれば2回も同じ相手に負けるわけにはいかないから、それこそ「ふざけるな!」って来るでしょうね(笑)。さらに試合会場もウルグアイの国境近くなので、サポーターもたくさん駆けつけるはず。南米ドアウェーでのガチンコ勝負は、キャリア全体でもそうそう体験できるものではないですよ。

 初戦に当たるチリは、前回と前々回のチャンピオン。アルゼンチンに粘りに粘って優勝しているわけですから。本当に現役選手たちが羨ましいですよ(笑)。

 そんな相手と対戦する日本代表は東京五輪世代が中心とはいえ、A代表として大会に臨みます。U-23なんて肩書きはない。テストではなく大会に参加するわけですから、勝つためのサッカーをしないといけません。

勝ちにいかないと得るものはない。

 日本は真っ向勝負でいいと思います。さすがに守備の時間が長くなると予想しますが、隙は必ず生まれるので、そこをしたたかに狙えるサッカーをしてほしいですね。

「いい経験をしました」という言葉を用意するのは終わったあとでいい。勝ちにいかないと得るものは少ないですから。

 彼らを率いる森保監督は昔からよく知る間柄で、実はS級ライセンス取得をした際の同期でもあるんですよ。だから監督としてのすごさはいくらでも語れるんですが……それは別の機会にしましょうか(笑)。

 久保ら若き日本代表と、“ポイチ”に期待しつつ、コパ・アメリカを楽しみたいと思います。

(構成/谷川良介)

文=水沼貴史

photograph by Getty Images


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