ウッズやケプカもグリーンに警戒心。今年の全米OPは名門ペブルビーチ。

ウッズやケプカもグリーンに警戒心。今年の全米OPは名門ペブルビーチ。

 今年の全米オープンの舞台は米カリフォルニア州の名門、ペブルビーチ・ゴルフリンクス。ペブルビーチといえば、2000年の全米オープンでタイガー・ウッズが2位に15打差を付けて圧勝した場所だ。

 あのときウッズがマークした「65-69-71-67」の通算12アンダーは、大会初の2桁アンダーだった。初日の出だしから22ホール、ボギーを1つも叩かず、進んでいったウッズは、一人だけ別世界でプレーしているかに見えた。

 あれから19年が経過した今年。ウッズに思い出のペブルビーチで再び全米オープンを制覇してほしいという期待が世界中のファンの間で高まっている。

 4月のマスターズを制し、メジャー15勝目を挙げたウッズだが、翌5月の全米プロでは予選落ちを喫した。その全米プロの際は体調を崩していたが、すでに体調はすっかり回復し、全米オープン開幕を目前に控えた今は「体はとてもいい状態だ」と、ウッズは会見で笑顔で答えた。

「ペブルビーチの全米オープン」は19年前と今とでは、どう違うのか?

「僕自身のパワーは明らかにダウンしている。でも(クラブの進化によって)僕の飛距離はアップしている。だから、差し引きゼロで、基本的には何も変わらないよ」

19年前の再現へ、万全を期すウッズ。

 ウッズは火曜日は練習ラウンドを行なわず、練習グリーンでパッティング・コンサルタントのマット・キーレンとパット練習に取り組み続けていた。とはいえ、5月23日にすでにコースの下見練習を行ない、準備は万端。

「あと1日、必要だ」

 そう、残る1日、開幕前日の水曜日は練習ラウンドを行ない、仕上げるつもりだと言う。

「ペブルビーチは長くはないが、トリッキーでグリーンはとても小さい。そのグリーンが(晴天や風で)干上がれば、まったく異なる戦いを強いられる」

モチベーションは達成感と幸福感。

 とはいえ、ペブルビーチをかつて圧勝したウッズなのだから「目指すは優勝?」「メジャー16勝目?」と、世界のメディアから次々に質問が飛んだ。

「大事なのは、この全米オープンで再び優勝争いをするということ。僕は何年もそこから離れていたから、勝利を競い合うことが恋しく感じられる。今、それができるチャンスが僕にはある。そして得られる喜びを子供たちと分かち合いたい」

 結果より、記録より、大切なのは自分自身が感じ取る手ごたえと達成感、そして家族と分かち合う幸福感。

 ペブルビーチでの戦い方そのものは19年前と「変わらない」と言ったウッズだが、ウッズの今の心の持ちようや姿勢は「勝つためだけに戦う」と言い切っていた19年前とは、まったく異なっている。

 それが何を意味するか? もちろん、ウッズのゴルフにプラスの効果をもたらすに違いない。

3連覇を狙う好調ケプカ。

 今年の全米オープンを語るとき、決して忘れてはならない選手と言えば、2017年、'18年に続く3連覇に挑むブルックス・ケプカだ。

 全米オープンのみならず、今年5月に全米プロでも連覇を達成したばかり。すでにメジャー4勝。しかも、米ツアー通算6勝のうち4勝がメジャー大会。だからこそ、今週、全米オープン3連覇をやってのけるのではないかと期待されている。

 ラスベガスのブックメーカーによる優勝予想は1位。現在、世界ランキングでも1位のケプカの自信は膨らむばかりだ。 

 5月の全米プロでは、首位を独走し、最終日を2位に7打差で迎えながら、そのリードが一時は1打差まで詰められるというピンチに遭遇。しかし、踏み留まり、巻き返して勝利したことが、今のケプカの何よりの自信になっている。

「7打差がなくなっていったとき、そこから先には、何通りもの別の展開になる可能性があった。でもそこから勝ったという事実は、今週の全米オープンを戦う上で僕の大きなアドバンテージになる」

 そう言ったケプカの表情には大会3連覇への自信が漲っていた。

宣伝広告に昨年王者がいない?

 全米オープン3連覇はスコットランドのウィリー・アンダーソン(1903年、1904年、1905年)が達成して以来、アーノルド・パーマーもジャック・ニクラスも、あのウッズですら達成できていない難業である。

 そこにリーチをかけているケプカは、今、さぞかし重圧を感じているだろうと想像したくなる。

 だが、ビッグな大会、メジャー大会の難しさと緊張感をこよなく愛するケプカは「さあ、メジャーだ」「準備万端だ」と目を輝かせている。

 ケプカの戦意を一層燃え上がらせる出来事も、実はあった。

 米国内で全米オープンをテレビ中継するFOXスポーツが事前に制作した宣伝広告の一部に、ケプカの姿が含まれていなかったため、米メディアや関係者の間では、ちょっとした騒動になった。

 3連覇がかかるケプカは、言わずと知れたディフェンディング・チャンピオンの立場にある。そして世界ナンバー1の王者でもある。そのケプカを無視した格好になった宣伝広告を目にしたケプカは「かなりショックだった」と明かした。それが、逆にケプカの戦意をメラメラと燃やしている。

知り尽くすウッズ、偉業に挑むケプカ。

 しかし、何であれ、ペブルビーチを誰よりも上手く攻略せずして、勝利も3連覇も起こり得ない。もちろん、ケプカはコース攻略に対しても自信満々の様子だ。

「ラフは深いからフェアウエイキープが第一。ペブルビーチは全体的に短いから、ドライバーはほとんど使わず、僕はおそらく4日間で4回しか使わない。グリーンはとても小さいから、毎ホール、センター狙いだ。グリーンセンターに乗せれば、ピン位置がどこだとしても、せいぜい6メートルしかない。あとは、パットの戦いになる」

 ペブルビーチを知り尽くし、メジャー16勝目に挑むウッズ。ペブルビーチで大会3連覇に挑むケプカ。どちらも開幕前に見据えた戦いのカギは「グリーン」だ。

 グリーンを制するものが、ペブルビーチを制し、全米オープンを制することになるのかどうか。記録や偉業は達成されるのかどうか。

 戦いの幕は、間もなく上がる――。

文=舩越園子

photograph by Getty Images


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