現在の野球界の民度を信じてみたい。球数制限の方針を学校が宣言しては?

現在の野球界の民度を信じてみたい。球数制限の方針を学校が宣言しては?

「全日本大学野球選手権大会」が神宮球場と東京ドームを会場にして行われている。

 この大会には、全国からさまざまな野球人たちがそれぞれの目的と思いを抱いて、球場にやって来る。

 高校の監督さんたちは、手塩にかけたOBたちが大学でどんなふうに頑張っているのか、どう成長しているのか……それを楽しみに東京へやって来る。

 この大会には大学の監督さんたちも大勢やって来るから、今預かっている選手たちの進路を広げる活動も、欠かせない“ミッション”になる。

 観戦を終えた後の「反省会」は、お互い久しぶりに再会した高揚感からか、お酒の力も加わって何かと白熱するものだ。

 今回の集まりは、皆さんがそういう世代だったこともあって「上原浩治投手引退」と、やはり皆さんが共通して悩ましいテーマとして抱えている「球数制限」で盛り上がった。

「球数制限」は、皆さんがそれぞれに説得力のある理由を挙げて、ありやなしやを熱く語り合った。

 夕方から始まって、上京中の皆さんは、なんなら歩いても帰れる新宿、渋谷近辺に宿をとっておられたが、東京に住んでいるこっちのほうが終電が危うくなる……そんな時刻まで語り合っても、それぞれの主張がみんな正しく聞こえ、結局共通の正解は見つけられなかった。

学校が宣言すれば中学生も選びやすい。

 帰り道、フッと考えた。

「球数制限」って、誰かがどうするか方法を決めて、「決めたから明日からこのやり方で、日本じゅう、右へならえー!」って、そういうもんじゃなくてもいいんじゃないか。

 たとえば「ウチは球数制限やります!」でも、「ウチは球数制限なんてやりませーん!」でもいいから、やるのかやらないのかそれぞれのチームがよく話し合って決めて、そのやり方を「宣言」して、そのシーズンは宣言したやり方でチームを運営する。

 そういう「各校選択方式」ではいけないのだろうか。

 べつに、宣言などしなくてもいいとも思うのだが、学校のホームページに掲げておくなり、新チームの秋の大会の抽選会で“どっち”でいくか紙でも出して高野連のホームページで公開しておけば、中学3年球児たちがめざす高校を選ぶときに親切であろう。

「考える力」がない人のための方法。

 何事でもそうだが、上のほうで「こうしなさい!」と号令をかけられて、「はーい」と右へならえ……というのは、民度の低い社会の常套手段であろう。

 くだいて言えば、幼稚園や保育園の現場ではよく見る光景だが、どうだろう、大学のキャンパスでこういう場面はあまりないんじゃないか。最近の大学ではありがちなのかもしれないが、心情としてあまりあってほしくない光景には違いない。

 社会を構成するものたちに「考える力」がなく、「決める力」がなく、「抑制する力」も「限界を感じる力」もない場合、お上からの号令は必要になろう。

 時が中世ならば、このほうが都合がよかったのかもしれない。

 しかし、今は違う。

 高校野球という社会を構成する民のすべてに、「考える力」も「決める力」も「抑制する力」も「限界を感じる力」も十分に備わっていると信じる。

 チームを構成する大人と選手の合議のもとに決した、納得ずくの「球数制限」ないしは「球数無制限」。それぞれのチームが選択した方針で、部活動を進めていく。

 この方法に、私はなんらの「違和感」も抱かない。

大人と選手の相手任せが今を招いた。

 肝心なのは、現場を預かる大人が選手の体調を気にかけながら練習をし、試合に臨もうとする意識と、それ以上に選手本人が自分自身の体調に責任を持つという当たり前の意識だろう。

 そもそも、夏がべらぼうに暑くなってきたことと共に、このあって当たり前の意識をないがしろにし、お互いに相手任せにしていたことから生じた「球数制限問題」である。

 幸い、「球数」が話題に上がるようになってからの野球の現場では、選手の体調を気づかう言葉が指導者たちから発せられるようになってきた。

 たとえば、練習試合が続いた後の月曜をオフにして心身のケアやケガの治療にあてるチームも増えてきた。「トレーナー」という職分の人が、選手たちの健康管理をするチームもポツポツ出てきた。

ルールだから、を超えた意識を持つ。

 壊れないようにするシステムは確かに進んでいる。

 ここから先、試されるのは当事者たち、つまり選手たちと大人たちの意識の継続、つまり“永続き”であろう。

 遠い所でなんとなく決まったルールを、ルールだからしょうがないと追従するのでは、意識は高まらない。

 自分たちで納得するまで語り合って決めた「方向」だからこそ、高い意識が維持できて、永く行動に移せるというものではないか。

 今の「野球界」は、そんなに民度の低い社会では決してない。

文=安倍昌彦

photograph by Hideki Sugiyama


関連記事

おすすめ情報

Number Webの他の記事もみる

あわせて読む

主要なニュースをもっと見る
社会のニュースをもっと見る
経済のニュースをもっと見る
政治のニュースをもっと見る
国際・科学のニュースをもっと見る
エンタメのニュースをもっと見る
スポーツのニュースをもっと見る
トレンドのニュースをもっと見る
生活術のニュースをもっと見る
地域のニュースをもっと見る

スポーツ アクセスランキング

ランキングの続きを見る

スポーツ 新着ニュース

新着ニュース一覧へ

総合 アクセスランキング

ランキングの続きを見る

東京 新着ニュース

東京の新着ニュースをもっと見る

東京 コラム・街ネタ

東京のコラム・街ネタをもっと見る

特集

特集一覧を見る 動画一覧を見る

記事検索