アジア王者はコパでどこまで戦える?バルサから来たカタール代表監督の弁。

アジア王者はコパでどこまで戦える?バルサから来たカタール代表監督の弁。

 いよいよ開幕したコパアメリカには、日本と同様にカタールもアジアから招待されている。ワールドカップ開催国でありながら、カタールはこれまで本大会出場の経験が一度もない。開催国のノルマともいえるグループリーグ突破のハードルは高いといわざるを得ない。

 そんなカタールにアジアカップ初制覇は大きな希望を与えた。次なる彼らのターゲットがこのコパアメリカなのである。

 2006年にカタールに赴任し、2017年からは同国代表監督を務めるフェリックス・サンチェスは、コパアメリカの目標をどこに置いているのか。『フランス・フットボール』誌6月11日発売号で、ジェレミー・ドクトゥール記者がサンチェスの本音に迫った。

監修:田村修一

コパアメリカはアジアカップとは別次元。

――アジアカップ優勝の後、カタールとの契約が2022年まで延長されました。カタール代表はコパアメリカに臨むわけですが、パラグアイ、コロンビア、アルゼンチンと同じという厳しいグループに入っても目標は優勝になるのでしょうか?

「いやいや(笑)。コパアメリカはもの凄く大きなチャレンジだ。

 アジアカップの目的は、競争力を高めることだった。活躍が期待され、最高の結果を得て完ぺきな大会となった。7試合とも高いレベルを維持するのはとても難しかったがわれわれはそれをやり遂げた。

 たぶんカタール国民は、自分たちがアジアで優勝できるなどと思ってはいなかっただろう。それが可能であることを彼らに示す必要があった。綿密な仕事と将来への明確なビジョンで、われわれは彼らの期待にしっかりと応えた。

 コパアメリカのようなレベルの高い大会に参加するのは、カタールにとってはじめての経験だ。重要なのは選手が経験を積むことであり、彼らがより強くなることだ。彼らはワールドカップという大きな義務を背負いながら、最大限の努力をしなければならないことをよく理解している」

ほぼ国内リーグの選手だけで代表を構成。

――あなたはほとんどの選手をU-19時代から知っていて、家族のような雰囲気をチームの中に作りあげました。

「カタールは小国で、国内リーグにも12チームしかない。選手はお互いをよく知っているし、代表でも長く一緒にプレーしているのは大きなアドバンテージだ」

――2006年からカタールで仕事をしていますが、どのぐらい進歩したのでしょうか?

「大きな進歩が得られたが、重要なのは長期的なプランを実行することだった。目の前の結果が求められるサッカーというスポーツで、それを実現するのは難しい。しかしここは違っていた。

 最新設備を備えた『アスパイア(カタールの総合スポーツアカデミー)』が、将来を担う子供たちに対して主導的な役割を果たし、リーグと代表の懸け橋となった。そしてアジアカップに優勝したことで、多くの人々が代表との一体感を感じ、若者がサッカーを通しての成功を夢見るようになった」

最近は外国人選手の帰化戦略も下火に。

――カタールの若者たちがヨーロッパに出ていくために欠けているものは何でしょうか?

「彼らの能力がヨーロッパではまだ認知されていない。ヨーロッパでプレーするのは、スポーツの面でもまた人間面からも成熟のためのいい経験になる。彼らはそれなりのレベルにあるが、海外のサッカーを経験し、生活に慣れるのはカタールに生まれた人間にとっては簡単ではない」

――近年は大量の帰化政策は影を潜め、アジアカップでもアスパイアで育成された若手がチームの主力でした。それは2022年に向けての最優先課題が、育成であることの表明だったわけですか?

「もちろんだ。ここでは人的資源が限られている。サッカーの歴史と伝統を有する他の国々以上に、カタールでは育成が大きな意味を持つ。自分たちの持つ手段でサッカーを進化させねばならない。育成は独自の選手形成を助長し、国への帰属意識を高める効果がある」

カタールとシャビの関係は?

――あなたとカタールにとって、シャビのような選手の存在はどんな意味を持ちますか?

「彼とは友人として親しい関係にある。日本とのアジアカップ決勝に先発した選手のうち7人が、シャビがプレーしていた(現在は監督を務める)アルサッドの選手だった。日ごろから一緒に練習することで、シャビは彼らに大きな影響を与えた。

 彼らがシャビを尊敬するのはその名前に対してだけではない。日々の練習を通してシャビがプロのあるべき姿を彼らに示しているからだ。またサッカーへの見識も深く、彼と議論すると彼がどれだけ客観的に分析しているかがよくわかる。アジアカップの間も、UAEには来なかったが毎日電話で話をしていたよ」

――サッカーに関しては、あなたは誰から影響を受けましたか?

「進歩のためには他人をコピーするのではなく、自分自身をしっかりと確立することが重要だと私は思っている。努力が報われたとき、自分がより強くなったと感じられる。

 ただ私も複数の人間から影響を受けた。なかでも一番大きかったのは、バルサ時代のテクニカルディレクターだったジョゼップ・コロメルで、彼からは多くを学んだ。

 またマンチェスター・シティでアシスタントコーチを務めているロドルフォ・ボレルもそうだ。

 タイプの異なる様々な指導者を評価しているが、最も優れていると思うのはペップ・グアルディオラだ。彼が成し遂げた業績には心から敬意を払っている」

「よく組織されたチームを作りたい」

――あなたの哲学を具体的に語ってください。それをチームにどう落とし込みましたか?

「まず何よりも選手それぞれの特徴を分析して掴む。自分がどんな環境で仕事をし、どうすればアイディアを実践していけるかを知る必要があるからだ。

 私はボールを保持してプレーを支配するために、よく組織されたチームを作りたい。ボールがない局面では、両方向の(攻守の)切り替えをできるだけ素早くする。それこそが今日のモダンサッカーにおいて重要であるからだ。

 ただ、同時に相手にあわせて複数のプレースタイルで戦える柔軟なチームでありたい。サッカーにおいては結果がすべてで、いい悪いはすべて結果で判断される。勝てば選手たちも、監督のやり方を信頼して彼についていく。

 アジアカップでは自分たちのやり方を首尾一貫して貫き通した。それができたことに大きな誇りを感じている」

「常に同じやり方ではプレーできない」

――とはいえサッカーは何よりも喜びや美しさを感じるものであって、結果同様にそちらも重要だとあなたは語っています。

「その通りだが、喜びに関してはそれぞれの感じ方が違っていて定義が難しい。それぞれが自分なりのやり方でサッカーに貢献している。私自身は魅力的なスタイルに惹かれるしそこに価値を置いている。何がいいかは最終的にはサポーターが決めればいい」

――しかしアジアの小国を相手にするのと、アルゼンチンを相手に戦うのとで同じアプローチをとるのでしょうか?

「どんな相手に対しても細心の注意を払って分析することが大事で、相手のレベルは問題ではない。常に同じやり方ではプレーできない。アジアカップでも北朝鮮戦(6対0の勝利)ではボールを保持してゲームを支配したかった。サウジアラビア戦(2対0)や韓国戦(1対0)は、相手の危険度を考慮して北朝鮮よりも20m後退した。

 ボールを持たなくともプレーのコンセプトで能動的にゲームをコントロールできるし、先を読みながら実践的に対応できる。その最たる例が決勝の日本戦だった。われわれは最初の30分間ゲームをうまくコントロールでき、その間に2点を決めた。

 その後はより攻撃的な戦術に変更した日本のやり方に対応した。常にリアリストであることが、サッカーでは大事なんだ」

――コパでもカタールらしさが発揮できることを期待しています。

文=ジェレミー・ドクトゥール

photograph by QFA


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