躍進する欧州勢、五輪まで1年……。なでしこ強化に必要なスピード感。

躍進する欧州勢、五輪まで1年……。なでしこ強化に必要なスピード感。

 フランスで開催されているFIFA女子ワールドカップも残すところ、決勝と3位決定戦の2試合のみとなった。

 前回大会王者のアメリカは、準々決勝で開催国のフランスを、準決勝では優勝候補の一角でもあるイングランドを破り、その強さを見せつけている。

 ワールドカップの組み合わせが決まった段階で、おそらく準々決勝で対戦するであろうフランスを想定し、その攻撃力を封じるべく5バックの準備をしていたことにも驚かされた。しかも、そのフランスとの試合では、5バックでゴール前を固めた上で際立ったのが、圧倒的な攻撃力だったことも圧巻だった。会見でも当然その質問はぶつけられ、ジル・エリス監督は「準備していました」とニヤリ。

 更に、準決勝後の会見での言葉にも説得力がある。

「We are here for one thing. That's to win」

 質問はピッチ外のことに関してではあったが、ピッチでの戦いぶりを見ると、まさに、“勝つ”ということだけに集中して、連覇をするため出来うるすべての準備をしてきたことを見せつけている。何よりこの言葉は、その自信を感じさせるものだった。

 日本時間の8日0時キックオフの決勝(オランダ戦)では、どんな戦いを見せるのだろうか――。

オランダ戦では強みも見せたが……。

 さて、現地時間6月25日、高倉麻子監督率いるなでしこジャパンのW杯は、ノックアウトステージ初戦、オランダに1−2で敗れ、ベスト16で幕を閉じることになった。

 4試合を戦い、1勝1分2敗。合計得点はわずか3点に終わった。

 今大会はW杯初出場のメンバーが17人、23人の平均年齢も参加国中で2番目に若いチームで臨んだなでしこジャパン。敗退時には多くの選手が涙を流し、悔しさを噛みしめた。「もっとやれるはずだ」と感じたからこそ、余計に悔しさは募った。

 オランダ戦は、グループステージの3戦では見られなかった戦いぶりを見せた。

 初戦でアルゼンチンと引き分けてから、ひとつひとつ話し合いを重ねた選手たちは、グループステージを通して前に進み、ノックアウトステージのオランダ戦ではこれまで以上にゴール前でのチャンスを作り、日本の強みを表現し始めた。しかし、結果は敗戦。勝つことが出来なかったという事実が残った。

 エースの岩渕真奈は、「チャンスの数もあったけど、負けは負け。難しい大会だった」と涙をこらえながら語った。

リーダーとしての成長が期待される岩渕。

「みなさん、ありがとうございました」

 取材陣が集まるエリアを通り過ぎる際、岩渕は取材陣に向けて静かに言葉をかけ、スタジアムを後にした。その背中には悔しさが溢れていた。10代でW杯優勝を経験し、連覇をかけたカナダ大会では苦しみながら勝ち進んできた先輩たちの姿を見てきただけに、この大会にかける思いは人一倍だった。

「これまでは先輩たちが引っ張ってくれたから。ここからは自分たちがやらなくちゃ」と繰り返し、自らへも責任を課す言葉を口にし続けた。今大会の彼女は、ピッチ外でもこれまでとは明らかに違う振る舞いをして見せ、グループステージ初戦以外はすべてスタメン出場。1ゴール1アシストとピッチ内での存在感を示した。周りの選手にも積極的に声をかけ、アドバイスを送る姿は、頼もしくもあった。

 今後は、更にリーダーとしての存在感を発揮してくれることを期待したい。

開幕直前のケガで出遅れた籾木。

 もう1人悔しさをあらわにしたのは、わずか1試合、途中からの出場のみとなってしまった籾木結花だ。

 アルゼンチン戦前の6月7日のこと。練習中に左もも裏を痛め、自らグラウンドを出て治療を要求した。グループステージの間は「自分が落ち込んだらチームの迷惑になる。やれることをやっていきたい」と日々リハビリに励んだ。復帰して早々にオランダ戦で途中投入された籾木は、短い時間の中で試合の流れを変える力を持っていることを証明してみせた。

 しかし、勝利を手繰り寄せるには至らなかった。試合後には、涙を流しながら決意を語った。

「今まで積み上げてきてくれたなでしこの歴史をここで壊してしまわないように、ここで負けてしまったことを次につなげ、来年の五輪や、4年後のW杯で必ず世界一に戻れるようにもっと練習したい。私たちには、4年後また勝たなければいけない使命がある。

 世界の女子サッカーが力を入れて盛り上がりを見せている中で、日本ももっと自分たちが女子サッカーを盛り上げていかなくてはいけないなと思います。(先輩たちが)世界一になったという歴史を、ただの歴史にするのではなく、自分たちがチャンピオンであり続けることに意味があるし、それがなでしこだと思うので、そこに返り咲けるようにまた一から努力したいと思います」

 籾木自身、初めてのW杯でやり残したことが多いだけに、今後にかける思いは人一倍募ったはずだ。

「強くなってこの舞台に」(熊谷)

 今大会を経て、間違いなく財産になったと言えるのは、W杯という舞台で感じた選手たちの中に強く残る「悔しさ」に他ならない。彼女たちは皆、「今度こそ世界の舞台で勝ちたい」という思いをより強くして帰国した。

 次の世界での舞台は、来年の東京五輪。時間はあと1年しかない。そのうち代表で活動出来る日数は、さらに限られてくる。

 さらに大会を通じて明確になったのは、世界の女子サッカーのレベルは確実に上がっている、ということだ。特に欧州勢の進化が目立ち、中でも、リーグに力を入れて取り組みを行っているイングランド、イタリア、スペインなどの躍進には目を見張るものがある。

 なでしこジャパンがより高い次元に歩みを進めるためには、個々の強化はもちろん、どのようにチームを作っていくのか、そして日本サッカー界全体が組織としてどう強化を加えていくのか、そのスピード感も重要なカギを握ることになるだろう。

「こんなキャプテンだけど、ついてきてくれて感謝します。強くなってこの舞台に戻ってきたい」と、キャプテンの熊谷紗希は、最後の夜に行われたミーティングで選手たちに言葉をかけた。

 これまで先輩たちが築きあげてきた歴史を引き継ぐことを大切にしながらも、ここからの未来は、自分たちが作り上げる新たな“なでしこらしさ”というものを見せてほしい。

 再び世界を魅了するために――。

文=日々野真理

photograph by Getty Images


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