先発として成長中、西武本田圭佑が感嘆したヤクルト石川の投球術。

先発として成長中、西武本田圭佑が感嘆したヤクルト石川の投球術。

 先発を任された直近の2試合において、合計13回と3分の1イニングスを無失点で抑えている本田圭佑。4勝目を挙げた7月6日の千葉ロッテ戦を終えたあと、「勝ててほっとしています」と安堵の笑顔を見せた。

 この日は8回途中まで無失点の好投を見せ、プロ初完投、初完封も期待されたが「意識しないで、1人ひとりという気持ちでした」と謙虚に語る。投手事情が苦しく、なかなか先発ローテーションを固定できないライオンズにとって、後半戦に向け明るい材料となる好投だった。

 今シーズンは幾度もローテーションの再編を繰り返してきた。そんな中、開幕前には名前が挙がっていなかった本田に、先発のチャンスが巡ってきた。

「取り組んできた課題はインコース、特に右バッターのインコースへのコントロールでした。そこにしっかりと投げ切れていなかった。加えてランナーを背負ってから、ここぞという場面でインコースに投げ切れないという課題がはっきりしていました。5月に一度、二軍に行ったときは、その辺りを意識してファームの試合に臨みました」

「当ててもいい」とラクな気持ちで。

 インコースへ投げるときに意識したのが、気持ちの作り方だと語る。

「本当に紙一重で……。少しでも『当てちゃいけない』と考えると甘いコースに行ってしまいます。『当ててもいい』というラクな気持ちで投げると意外ときれいに投げたい場所に行く。もちろん技術がいちばん大事なんですけど、そのほんのちょっとの気の持ちようで、投げるボールが変わってくると学びました。インコースはいちばん気持ちが影響するボールなんです」

 練習で投げ切れないボールは、試合でも投げ切ることはできないと痛感した。

「まずは投げ切る感覚を練習でどう養うか。どう投げたらそこにきちんと投げられるか、その感覚を磨くことが大事だと思って練習してきました」

名前ばかりに注目が集まって……。

 プロ入り4年目。1年目から即戦力と期待されたが、なかなか結果を残すことができなかった。サッカー日本代表選手と同姓同名の、本田圭佑という名前ばかりに注目が集まった。

「あれほどはっきりとものを言える本田さんがうらやましいです」

 入団当初、ぽつりともらした一言は、ライオンズの本田が慎重な性格であることを表していた。なかなか芽の出ない3年目の昨年、「気分転換に」とひげを伸ばし始めた。金髪や長髪は考えなかったのかと尋ねると「ひげが精いっぱい」と首を横に振って苦笑した。慎重で物静かな男が「何かを変えたい」という思いから起こした小さな革命だった。

「心技体とよく言いますけど、どれも大事で、しかもバランスが大切だと思い知りました。技術が劣っていたら、どれだけ強い気持ちがあっても投げられないし、ケガをして体に不安があれば、心にも影響が出る。どれか1つではなく、どれも大事。バランスが整っていないと力が出せないと思いました」

打順ふた周り目以降の被打率が課題。

 4年目の今シーズン、3年間で鍛えた心技体が、本田が語るように徐々にバランスを取り始めているのではないか。

「プロ入りしてからの3年間に比べたら、今シーズンはいろいろとそういうことがわかってきています。これまでの3年間に比べたら……という範囲ですが、できているという感覚はありますけど、ここまで先発をさせてもらって、まだまだ、ここからもう一段階、レベルアップしなければいけない。ひとつ壁を乗り越えたら、またひとつ壁が現れるという感じですね」

 0点で抑えた6月29日の試合で登板する前までは、相手打順のふた周り目以降の被打率が高くなるという課題があった。

「僕は特別、すごいボールがあるわけではないので、1打席、ボールを見たら対応されやすいのかもしれません。同時に自分もまだ、いっぱいいっぱいで余裕がない。1巡目、抑えるだけで精いっぱいで。立ち上がりに気を付けて照準を合わせてきて、1巡目をいい感じで抑えられて、2巡目で粘れずにスタミナ切れをしている感覚はあります」

「1個1個アウトを取ることで精いっぱい」

 好投手は「ギアの切り替えがうまい」と今年、巨人に移籍した炭谷銀仁朗がよく語っていた。のらりくらりと下位打線を抑えたかと思うと、クリーンアップを迎えたところでトップギアに入る。そうやってペース配分ができる投手に好投手が多いと常々語っていた。

 その言葉を思い返すと、本田はまだ目の前の打者に100%の力で挑んでいる段階なのだろう。

「もちろん3、4番に入れる力と下位打線では多少違うかもしれませんが、抜いているという感覚は一切なくて、1個1個アウトを取ることで精いっぱいだし、1球1球、キャッチャーが構えたところに投げることで精いっぱい。そうやって集中力を持続して投げることが大事だと今は思うので……。そうやって集中して投げている分、後半の疲れにつながっているのかもしれません」

相手ピッチャーも良いお手本に。

 そんな本田にとって、現在は対戦する相手ピッチャーも良いお手本となっている。

「今まではずっと岸さん(孝之・東北楽天)を目標にしていて、岸さんの動画ばかり見てきたんですけど、最近は右投げ、左投げ関係なく、自分に必要な技術を持っている投手がいて、参考になるピッチングもあるんじゃないかと思うようになりました。

 西武なら榎田(大樹)さん。あと、交流戦で投げ合ったヤクルトの石川(雅規)さん。辻監督からは中日の吉見(一起)さんの投球を参考にするように言われます。皆さん、140kmくらいのストレートをきっちりコーナーに投げ切って、変化球を低めに集めて勝負する投手。そういう人の投球をしっかり見て、どんなことを意識して投げているのか想像しています」

 中でも間近で見たヤクルトの石川のピッチングには感嘆した。

「石川さんは打者によってプレートを踏む位置も変えるんです。通常は難しいこと。自分は『まずはコントロールよく』と考えて、試合中に何かを変えるのにはまだ不安がありました。でも石川さんのピッチングを見て、もっと臨機応変に、打者ではなくてバッテリー側がそうやってプレートや、間合い、フォームを変えることを武器にしてもいいんじゃないかと思うようになりました。それがいずれ『投球術』というものに変わっていくんだろうなと思っています」

不器用ではあるが堅実な方法。

 後半戦の目標を尋ねると、こう答えた。

「2巡目、3巡目を抑えて、中盤を切り抜けて先発としての役割を果たすことです。壁と言うと大げさかもしれませんが、そこをまずは乗り越えたいですね」

 課題として掲げた「長いイニングスを投げる」ことも、先発という与えられたチャンスを本田がものにしてきたからこそ見えた壁だ。そうやって1つひとつ、不器用ではあるが堅実な方法で課題を克服する本田の姿は見ていて気持ちがいい。

「先発で投げさせてもらってこそわかった課題もたくさんあります。先発に抜擢していただいた監督と小野さん(和義・投手コーチ)の期待に応えたいですね」

 トレードマークとなったひげは、よほどのことがない限り「今は剃りません」と変えないつもりだ。

文=市川忍

photograph by Kyodo News


関連記事

おすすめ情報

Number Webの他の記事もみる

あわせて読む

主要なニュースをもっと見る
社会のニュースをもっと見る
経済のニュースをもっと見る
政治のニュースをもっと見る
国際・科学のニュースをもっと見る
エンタメのニュースをもっと見る
スポーツのニュースをもっと見る
トレンドのニュースをもっと見る
生活術のニュースをもっと見る
地域のニュースをもっと見る

スポーツ アクセスランキング

ランキングの続きを見る

スポーツ 新着ニュース

新着ニュース一覧へ

総合 アクセスランキング

ランキングの続きを見る

東京 新着ニュース

東京の新着ニュースをもっと見る

東京 コラム・街ネタ

東京のコラム・街ネタをもっと見る

特集

特集一覧を見る 動画一覧を見る

記事検索