テニス界の注目は大坂から15歳に!?早熟選手のバーンアウトと出場制限。

テニス界の注目は大坂から15歳に!?早熟選手のバーンアウトと出場制限。

「新時代の到来」「セリーナ・ウィリアムズ級の女王誕生」と、女子テニス界が大坂なおみ一色に染まっていたのはつい半年前のことだったが、視線の移ろいは早い。

 ウィンブルドンに現れた<未来の女王>にファンの目は釘付けとなった。聖地に旋風を巻き起こしたのはアメリカの15歳、コリ・ガウフ。昨年14歳で全仏オープン・ジュニアを制した天才少女は、今大会予選ワイルドカードからスタートし、ウィンブルドンではオープン化以降最年少での突破を果たすと、本戦の1回戦で39歳の元女王ビーナス・ウィリアムズとの注目の一戦を制した。

 堅固なディフェンスを最大の武器に、ときに大人顔負けのテクニックを見せて2回戦、3回戦と勝ち進み、4回戦で第7シードのシモナ・ハレプに3−6、3−6で完敗して快進撃は止まったが、噂の実力と存在感を世界に大いにアピールした。

ガウフの躍進で浮き彫りになった問題点。

 現在313位のガウフのランキングはこれでトップ200入りが予想される。いったいどれほどのスピードでトップに駆け上がるのかという興味とともに今問題になっているのが、WTAツアーが定める若年選手の出場大会制限だ。

 女子選手は18歳の誕生日を迎えるまで、自由に好きなだけ公式戦に出場することはできない。現行のルールでは、14歳の誕生日から15歳の誕生日までに出場できるのは8大会、次の1年、つまり15歳では10大会、16歳で12大会、17歳で16大会という具合だ。さらに大会の規模やワイルドカードの数などが細かく定められている。なお、フェドカップの代表に選出された場合とWTAファイナルズの出場資格を得た場合は、上記の大会数とは別に出場が許される。

 18歳以上になれば、平均して年間20大会前後に出場するが、中には30大会以上を戦っている選手もいるので、制限はかなり厳しいといえるだろう。

制限導入後も、バーンアウトは減ってない?

 1995年に導入された年齢制限のルールは、13歳でプロデビューして15歳のときのウィンブルドンでベスト4に進出しながら、のちに非行に走って10代で一度はコートを去ったジェニファー・カプリアティの事例が引き金となったといわれる。男子に比べて早熟の女子選手のバーンアウトを防ぐことが目的だ。

 しかし、こんなルールは意味がないという声もある。ルールを定めたあとも、バーンアウトらしき症状でトップ争いから脱落、あるいはテニスそのものから去った少女たちもいるからだ。

 15歳という年齢でのブレークで思い出す選手には、'05年の全仏オープンでベスト8入りした当時15歳9カ月のセシル・カラタンチェワがいる。その年のうちにドーピング違反で出場停止となり、29歳の今も現役だが、あの全仏以外にグランドスラムで2回戦を突破することはなかった。

 また、その前の年にはチェコのニコル・バイディソバが15歳3カ月でツアー初優勝を果たしている。その後、17歳で全仏オープンの準決勝に進出するなどし、世界ランクは7位までいったが、ツアーをフルに戦ったのは18歳だった2007年が最後になった。

ルール緩和を働きかけたフェデラー。

 若い選手を過剰に保護するよりは、より多くのチャンスを与えるべきだという意見の持ち主の一人はロジャー・フェデラーだ。「WTAにはルールを緩めるように言ったことがある」と明かした。

「僕は(マルチナ・)ヒンギスの幼い時代の活躍に憧れたし、出場できる大会の数を制限すれば、若い選手に逆にプレッシャーをかけることになるようにも思う。もしかしたら、その選手にとって最高の時代を奪っているとも言えるかもしれない」

 ヒンギスのグランドスラム・デビューは14歳3カ月の全豪オープンで、16歳の年にはグランドスラム全大会に決勝進出を果たし、うち3大会で優勝した。10代の間にシングルスだけで5つのグランドスラム・タイトルを獲得したヒンギスのような天才少女伝説は、今のルールの中では今後おそらくもう生まれない。

ダベンポートは大坂の失速を指摘。

 '99年にウィンブルドンを制した元世界1位のリンゼイ・ダベンポートは、大坂を引き合いに出してこう指摘する。

「ガウフは15歳だけど、メンタル的にも環境の面でもフルに戦う準備ができているように見える。一方で21歳の大坂なおみは、ナンバーワンのプレッシャーの中で何もうまくいっていない。彼女も10代のときに大会数を制限して保護されていたはずだけれど、結局こうなるなら意味がなかったというしかない」

 大坂をバーンアウトの一例のように判断するのはまだ早いが、期待の大坂が失速したことは確かで、そのことがさらに若いスターを持ち上げようとする雰囲気につながっている。制限緩和の案が湧き出したのもそのせいだろう。

15歳ガウフ「自分のテニスを」

 実際、WTAはガウフのジュニア大会でのずば抜けた成績を考慮し、すでに出場制限を14大会に広げる特例を与えた。ここまで7大会に出場しているため、来年3月の16歳の誕生日までにあと7大会に出場できるようだ。こうして大人たちがさまざまに画策する中、本人はむしろ地に足がついていて好ましい。

「たとえ年齢制限がなかったとしても、私は年上の選手たちほどたくさんの大会には出ないと思います。まだ今はトレーニングや練習をしっかりして上達することが必要だから。決められている数よりは多く出場したい気がするけど、やりすぎてもいけないし、今は時間をかけて自分のテニスを作っていきたい」

 この落ち着き払った15歳は本物か。WTAがかつて固い決意で定めたはずのルールをも変えてしまうかもしれない少女が、このあと続くアメリカのハードコート・シーズンの大きな目玉になりそうだ。

文=山口奈緒美

photograph by Hiromasa Mano


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