いま世界で一番かっこいい女性。女子W杯連覇、ミーガン・ラピーノー。

いま世界で一番かっこいい女性。女子W杯連覇、ミーガン・ラピーノー。

 ミーガン・ラピーノー──いま世界で一番かっこいい女性のひとりだ。いやこの際、「ひとり」は取ってしまってもいいかもしれない。

 地球上で一番ホットかつクールな女性アスリート。先のフランス女子W杯で最優秀選手と最多得点者に輝き、アメリカを2大会連続4回目の優勝に導いた34歳のアタッカーはその数日後、CNNのインタビューでこう語った。

 質問は、「(ドナルド・トランプ)大統領にメッセージがあるとすれば?」だった。

「あなたは私のような人たちを排除しようとしている」とカメラにまっすぐ目を向けてラピーノーは明確な言葉を発する。「有色人種も排除しようとしている。あなたは『Make America Great Again』というけれど、それはほんの一握りの人にとって素晴らしい国にしたいってことでしょう。

 まあ、今もアメリカはほんの一握りの人にとって素晴らしい国で、実際に偉大と感じている人はそんなにいない。あなたには重大な責任がある。この国ひとりひとりの国民を気にかけ、全員のためにもっとまともなことをする必要がある」

 薄紫の髪の毛をすべて後ろに固めたラピーノーは、ピッチ上と同じくらいスタジオでも輝いて見える。画面越しでもそれが十分に伝わる。

トランプへの抵抗感を隠さない。

 カリフォルニアのレディングというフットボールの響きを持つ街に生まれたアメリカ代表の15番。フランスW杯で6得点を挙げた彼女は自分がレズビアンと明かしている。

「私のような人たち」とはその意味で、「トランプは同性愛嫌悪者」(byアメリカのバーニー・サンダース上院議員)として知られている。最近ではLGBTをサポートするような姿勢を打ち出しているが、政治の道具に使っているとの疑念も絶えない。

 ラピーノーは以前から、国歌斉唱の際にひざまずいたり──NFLのコリン・カエパニックらと同様に──、「(W杯で優勝しても)ホワイトハウスには行かない」と公言したり、現アメリカ大統領の差別的な側面を声高に批判してきた。

 そして2012年のロンドン五輪と2015年のカナダW杯を制していた彼女に、さらなる勲章が加わった。2019年W杯優勝、つまり連覇だ。主将かつ、個人賞を総ナメにする絶大な存在感を放ちながら。

才能揃いのアメリカでも際立つ存在感。

 7月7日の決勝は女子サッカーのレベルの高まりを感じさせるものだった。

 オランダにはビビアン・ミーデマという22歳のエースがいて、白人女性版パトリック・クライファートとでも形容すべき細長い体躯の独特なリズムのドリブルで面白い場面を創っていた。

 対する王者アメリカは、エースのアレックス・モーガンの瑞々しいアスレティシズムはもちろん、背番号3の中盤の番人サマンサ・ミュイスの圧倒的なプレゼンス、勝負を決定づける鮮やかなドリブルシュートを見舞った24歳のMFローズ・ラベルの技も光った。

 それでも一番のスターダムはラピーノーがさらった。

 アメリカの先制点は流行りのVARで得たPKから生まれた。テクノロジーの賛否はさておき、極めて重圧のかかる場面で彼女は全く動じずにキックを右に沈めた。

 その前のPK──ラウンド16のスペイン戦だ──では、2つとも左に決めていたけれども。

 ラピーノーは4年前からチャーミングな選手だった。今の彼女には、そこに揺るぎない自信と静かな風格が備わっている。プレーにも発言にも説得力が出て当然だ。

トランプと大統領選を戦ったら?

 女子選手の待遇の向上を訴え続ける彼女は、今の大統領を快く思っていない人々の希望にさえなりつつあるようだ。

 MSNBCのナイトショーでは、インタビュアーが「あなたのスポーツと国全体への影響について」と前置きしたうえで、「パブリック・ポリシー(アメリカの統計会社)の統計で、あなた対トランプの大統領選挙の仮想統計がありました。あなたは僅差で勝利しています」と投げかけた。

 ラピーノーは「大統領選なんて、気をつけて発言してくださいよ」と笑って返した。

民主主義とマイノリティを守るために……。

「そうね、でも人々がそんな話をしているのは知っている。この数日(W杯連覇)で物事は大きく変わった。私たちにはサッカーやスポーツを超えて、もっと大きなことができるかもしれない。

 もう、ただ話をするだけなのはやめたい。どんなアクションができるのか、人々にどう政治や日々の生活のことにプラグインしてもらうのか。私は次のことに準備ができている。もっとインパクトを与えたいし、多くの人々のことを理解しているつもり」

 とラピーノーは続けた。

 インタビュアーは「国(アメリカ)があなたを待っていると思います」と締めくくっていた。

「グリーン・ニューディール政策」を掲げるニューヨークはブロンクス出身の下院議員アレクサンドリア・オカシオ・コルテスとは会うそうだが、さぞかし話は合うだろう。ラピーノーとオカシオ・コルテス──トランプは得意のツイッターで2人にたびたび悪態をついてきた。

 民主主義とマイノリティを守り、そして狂い始めた世を正すために、パワフルで魅力的なヒロインたちが立ち上がっている。

文=井川洋一

photograph by Getty Images


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