田中裕介が知る中澤と憲剛の凄み。岡山のJ1昇格へ「自分と向き合う」。

田中裕介が知る中澤と憲剛の凄み。岡山のJ1昇格へ「自分と向き合う」。

 プロ15年目、新しいクラブで「原点回帰」のシーズンを過ごしているという。

「モチベーションが昔に戻りました。プロ1、2年目や、サッカーを始めた頃に。年齢も上の方になって、いつまでサッカーができるか分からないですから、いま置かれている状況に感謝してプレーしよう、と」

 ファジアーノ岡山のDF田中裕介は、4月で33歳となった。「原点回帰」の思いは1、2年前から抱いていたが、それが特に強くなったのは、セレッソ大阪に所属していた昨季の経験があるからだ。

「久しぶりに3、4カ月のケガをしてしまって(2018年4月に左ハムストリングス損傷)、長くサッカーができませんでした。もっと上のレベルに行きたいという思いは、常に持っていますが、それより、痛い箇所はあっても、健康にサッカーをできていること自体が幸せなこと。だからこそ、やらなければいけない」

 2005年に神奈川・桐光学園高から横浜F・マリノスに加入。川崎フロンターレ、ウェスタン・シドニー・ワンダラーズ(オーストラリア)、C大阪を経て今季、岡山に加入した。第26節終了時点で、警告累積で出場停止の1試合を除く25試合に先発フル出場と、健康にプレーできることへの感謝を数字でも示している。

有馬監督も田中の予測力を信頼。

 サイドプレーヤーのイメージが強いが、元来が複数のポジションをこなせるマルチロールで、岡山では主に4バックの中央を守る。的確なつぶし、正確なフィードで貢献しており、有馬賢二監督も「次に起こることを予測し、どうすれば効果的にプレーできるか、攻守において考えている。サッカーをよく理解しています」と語る。

 指揮官が信頼を寄せる経験値は、多くのクラブでプレーしてきたプロキャリアによって培われた。

「『いいクラブでプレーしてきたね』と、よく言われます。たくさんのいい選手に出会い、一緒にプレーできたのは僕の財産です」

中澤、憲剛、清武たちの共通点。

 高校を卒業して横浜FMに加入した2005年、田中は、前年にJリーグMVPを受賞した当時27歳の中澤佑二に驚かされた。

「練習で『抜けるんじゃないか』なんて、まったく思えませんでした。ヘディングも勝てるわけがなくて、高校生とプロは、こんなにも違うのかと」

 最終ラインには松田直樹もいた。川崎Fでは中村憲剛、伊藤宏樹、稲本潤一、C大阪では年下だが尊敬できる山口蛍、清武弘嗣とプレーした。

 彼らには共通点があるという。

「いまになって分かるのは、みんな自分と向き合っているんです。試合に出られるか・出られないかを取っ払って、自分と戦っている。ひとつひとつのプレー、たとえばミスをしたことを、自分が許せるか。みんなに自分のラインがあって、そこに対して日々練習をしているから、オーラが出ていたのかな、と感じています」

気付いたことを言葉にして伝える。

 チームメイトとして接していた、自分を高める努力を怠らないベテランたちに近い年齢になった。J1に昇格したことがない岡山に加入したこともあり、自らの経験をチームメイトに還元していくことを意識している。

「気付いたことを言葉にして伝えるのは、これまで所属していたチームよりも多くやっていて、有馬監督からも『周りに伝えてほしい』と言われています。自分のためにもなりますからね。それと、自分と向き合うこと。この2つは意識しています」

 終盤に差し掛かったキャリアにふさわしいアクションの一方で、次第に募っているのは、J1への思いだ。

「岡山でJ1に昇格したいという思いは、日に日に強くなっています。最近2年間は13位(2017年)、15位(2018年)だったので、どんな感じかと思っていましたが、想像以上に力がある。モチベーションが高い選手が多いので、これが続いていけば、J1を狙えるところまでいけるんじゃないかと思っています」

一筋縄ではいかない昇格争い。

 田中は2016年に、C大阪でJ2からJ1への昇格に貢献した。そのときの経験から、昇格争いが一筋縄ではいかないことを知っている。

「届かないところじゃないと思います。ただ簡単に届くかというと、そうでもない。両方の感覚があります。セレッソのときも『いけるな』と思ったら連敗して、の繰り返し。結局は昇格プレーオフに回りましたから」

 岡山は第21節から第24節まで、2009年のJ2昇格後のクラブ新記録となるリーグ4連勝を記録した。

 昇格プレーオフ圏内となる6位まで浮上したが、その後に2連敗を喫し、8位に後退している。田中が経験した通りの厳しい戦いは、今後も続くだろう。

 それでも2016年、昇格プレーオフ決勝で岡山を下してJ1復帰を決めたC大阪は、翌'17年にルヴァンカップと天皇杯の2冠を達成。田中はJ2で2年間を過ごした低迷期から、タイトル獲得へと駆け上った道のりを、岡山で再現したいと意気込む。

昇格すればファジアーノは変わる。

 4連勝が始まった第21節・鹿児島ユナイテッド戦は、クラブのホームゲーム史上3位となる1万5731人の大観衆が詰めかけ、岡山が持つ力を示した。

「J1に昇格すれば、ファジアーノは変わると思います。鹿児島戦を見ても、あれだけのポテンシャルがある。あれが当たり前になり、来ている人も、プレーしている選手も楽しいクラブになれば、もっと大きな相乗効果が生まれる。そうなってほしいです」

 そのためにやるべきことは、自分と向き合い、高めた力でチームの勝利に貢献することに他ならない。そこではあらためて、偉大な先人のプレーが手本となる。

センターバックとしての伸びしろ。

「佑二さんや、憲剛さんの何がすごいのか。いろいろありますけど、僕が一番すごいと思うのは、チームの勝利を決定づける力です。佑二さんなら、最後の砦としてゴールを守る。

 憲剛さんなら、決定的なパスでアシストしたり、ゴールを決める。そこは年齢を重ねても衰えないと分析していました。試合を決定づける絶対の能力は、この先の自分にもっと必要になってくると思っています」

 中澤佑二は40歳の昨季まで第一線で活躍した。10月で39歳となる中村憲剛は今季も健在だ。それを思えば田中も老け込むような年齢ではなく、本人もそれを自覚して、さらなる成長を誓う。

「センターバックとして、まだ伸びしろがあると感じています。自分と向き合い、これでいいのかと考えることで、もっといいプレーができる。それは常に思っていることです」

文=石倉利英

photograph by Getty Images


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