水戸・小川航基が貪欲に求める結果。J1昇格、15点、堂安と一緒に五輪。

水戸・小川航基が貪欲に求める結果。J1昇格、15点、堂安と一緒に五輪。

 J2第29節の試合終了後、水戸ホーリーホックの選手たちはがっくりと腰を折って、膝に手をつき、しばらく顔を上げられなかった。目下の敵である東京ヴェルディに1−2で敗れ、昇格レースで2位内を狙う中、6位で足踏み状態が続いている。

 試合後、悔しい表情を見せていたのは、水戸FW小川航基だった。

「昇格するチームって、僕は経験ないけど、たぶん内容悪くてもポロッて勝って、勝ち点を積み上げていくチームだと思うんです。逆に内容はいいけど、勝てないのはちょっと良くない傾向かなと。どんなに内容が悪くても勝ち点3を何がなんでも勝ち取るぐらいの気持ちでいかないと、これから先、厳しいかなって思います」

 水戸の場合、若干スロースターター的なところがある。この日のヴェルディ戦も2失点した後、目が覚めたように攻撃に転じて、流れを掴んでいった。

 だが、横浜FCや柏レイソルのように得点力がずば抜けてあるわけではない。そのため、序盤の2失点が命取りになってしまった。この試合も1点を返したが、そこからさらに畳みかけて得点することができなかった。

「後半よくなったけど、前半の最初から攻撃する姿勢を見せていかないといけない。うちはそういう姿勢を見せて、走らないと勝てないチームだと思うんで、そこを肝に銘じて次の試合、前半から積極的に行って勝てるようにしていきたいですね」

「バーに当たって惜しいじゃダメ」

 小川はチームの課題を淡々と語ったが、自分自身のプレーについて話が及ぶと表情が険しくなった。

 7月14日にジュビロ磐田から水戸に移籍した。23節の琉球戦から3試合連続でゴールを挙げ、前節の京都戦まで6試合で通算4得点を挙げた。7試合目となるヴェルディ戦はノーゴール。マークが厳しくなる中、小川は5本のシュートを放ったが、バーに当たるなどアンラッキーな面があり、決定機を決めることができなかった。

「マークされるのは普通だし、その中で点を取れないと本当に先がない。それにバーに当たって惜しいじゃダメなんですよ。ああいうシュートをしっかり決められないと結果を残せないし、上にもいけない」

小川航基が結果を求める理由。

 小川は、点が取れない自分に対して口をとがらせた。

「なんか、物足りないんですよ。点を決められなかった試合のあとって、ガキですけど、モノに当たりたくなる。なんかサッカーやっている意味あるのかっていうぐらいな感じになってしまうんです。なんか言葉に言い表せないようなモヤモヤしたものがあって、ほんとキツイっすね」

 小川が狂おしいまでに結果を求めているのには、理由がある。

 ひとつはチームで点を取って、「水戸をJ1昇格させる」ためである。そして、もうひとつの大きな目的は「結果を出して来年の東京五輪代表に繋げる」ためだ。

 危機感を強めるキッカケになったのは、6月の国際大会だった。東京五輪を目指すレギュラー候補組は森保一監督とともにコパ・アメリカに出場した。一方、小川はBチームとしてトゥーロン国際大会に出場した。メキシコ戦、ブラジル戦で1ゴールずつ挙げて、チームに貢献したが、驚くようなインパクトを残せなかった。

「2点取ったところで、インパクト大というわけじゃなかった。なんか忘れられていた小川航基がまだいたんだぐらいのニュアンスだったと思う。これじゃ何も状況は変わらないし、1大会で2点取ったぐらいじゃ評価も上がらない。チームで結果を残しつづけてA代表に入って、あの時(トゥーロン)の小川航基が頑張って這い上がってきたと思われるようにならないといけない」

危機感が後押しした移籍。

 小川には、トゥーロン組はあくまでコパ組の控えという考えが頭にある。その状況を変えていくには、ストライカーとして結果を残していくしかないと考えている。

「今は、危機感しかない。コパに行けなかった選手はこのままいけば五輪代表チームから落選してしまう。何かを変えていかないとコパに行った選手を蹴落とすことができない。それには試合に出てゴールを挙げるしかないんですよ」

 そのために試合に出ないといけない。

 磐田には'16年から在籍していたが、'19年7月まで全23試合1ゴールの成績だった。出場機会がなく、このままで終わってしまうという危機感が小川に外に出る決心をさせた。

海外へ渡るライバルたち。

 また、同世代の仲間の動向が小川を刺激した。

 コパ組の上田綺世は法政大から前倒しで鹿島アントラーズに入団し、プロ生活をスタートさせた。前田大然はポルトガルリーグへ移籍した。ストライカーではないが三好康児はベルギーに渡り、久保建英はレアルと契約後、マジョルカでプレーすることが決まった。安部裕葵はバルセロナBに移籍した。

 東京五輪世代が続々と海外に進出し、東京五輪を戦う18個の椅子を虎視眈々と狙っている。

「そりゃ、みんな(五輪に)出たいと思いますよ。日本での五輪ですし、目指すべき大きな大会です。だから、みんないろいろ考えて動いている。みんなが海外に出ていくのは、自分にとって刺激にしかならない。J1でしっかりと結果を出して海外に行っているんで、自分も置いていかれないように水戸で結果を出していくだけです」

「15点は取りたい」

 J2は、残り13試合だ。

 これから昇格レースは、ますますシビアになり、小川へのマークも当然厳しくなっていく。その中で小川が考える結果とは、どのくらいの数字なのだろうか。

「15点は取りたい。今、4点なのでこれから毎試合1点ずつの計算でいける。そのくらいやらないと僕がここに来た意味がなくなる。幸い、試合を重ねるごとにみんな僕を見てくれるようになったし、試合に出るようになってコンディションも上がってきた。十分達成可能な目標だと思います」

 小川は余裕のある表情でそう言った。

 やれそうだなと手応えを感じている表情を見ていて、思い出したのはU-20日本代表で堂安律とともに中心でプレーしていた時だ。ふたりでチームを牽引し、彼らが東京五輪代表の中軸になっていくのだろうと思っていた。

 だが、小川がケガなどで苦しむ中、堂安はA代表に欠かせない選手になり、東京五輪代表チームの主軸になった。公私ともに仲が良いふたりは、2020年への思いが深い。

負けたくないし、追いつかないと。

「律からは、いい刺激をもらっています。この世代を引っ張る選手だし、A代表でもがんばっている。仲がいいけど、負けたくないし、早くあいつに追いつかないと。それには、何度もいいますが水戸で結果を出すしかない。FWは、どのくらい点を取るのかということにすべてが懸かっているんで、そこだけを意識していきたい。そうして律と一緒に東京五輪の舞台に立ちたいと思っています」

 ギラギラ感が消えつつある同世代のFWで、小川は内面にそれを持ち、爆発するのを狙っている。野心があって、闘争心のあるFWは、いつの時代も生き残るものだ。 

 水戸は、小川にとって「飛躍の地」になるだろう。

 そこで自分に課したミッションをきっと果たすからだ。

文=佐藤俊

photograph by J.LEAGUE


関連記事

おすすめ情報

Number Webの他の記事もみる

あわせて読む

主要なニュースをもっと見る
社会のニュースをもっと見る
経済のニュースをもっと見る
政治のニュースをもっと見る
国際・科学のニュースをもっと見る
エンタメのニュースをもっと見る
スポーツのニュースをもっと見る
トレンドのニュースをもっと見る
生活術のニュースをもっと見る
地域のニュースをもっと見る

スポーツ アクセスランキング

ランキングの続きを見る

スポーツ 新着ニュース

新着ニュース一覧へ

総合 アクセスランキング

ランキングの続きを見る

東京 新着ニュース

東京の新着ニュースをもっと見る

東京 コラム・街ネタ

東京のコラム・街ネタをもっと見る

特集

特集一覧を見る 動画一覧を見る

記事検索