11カ月ぶりカルテットと久保建英。W杯予選へ向けて理想的な2−0勝利。

11カ月ぶりカルテットと久保建英。W杯予選へ向けて理想的な2−0勝利。

 9月5日に行われたパラグアイ戦の意味は、5日後のミャンマー戦後にはっきりするだろう。

 先のコパ・アメリカでベスト8入りし、準々決勝で優勝したブラジルを苦しめたパラグアイは、コンディションにはっきりとした問題を抱えていた。試合後のエドゥアルド・ベリッソ監督も、「言い訳にはしたくないが、長距離移動の疲労の影響はあった。フィジカル的な疲労によって、高いリズムを維持できなかった」と明かしている。

 ならば、W杯2次予選への単なるスパーリングだったのか。

 否、そうではない。

 日本にとっては貴重なチューニングアップの機会だった。

DFラインは7カ月、前線は11カ月ぶり。

 キャプテンの吉田麻也は、今冬のアジアカップを最後にピッチに立っていなかった。4-2-3-1の4バックが長友佑都、冨安健洋、酒井宏樹との4人で形成されるのは、2月1日のカタールとの決勝戦以来である。

 攻撃のカルテットがスタメンに揃う試合となると、さらに時計を巻き戻さなければならない。堂安律、南野拓実、中島翔哉が2列目に並び、大迫勇也が1トップに入るのは、昨年11月のベネズエラ戦以来だった。

 東京五輪世代を中心に戦ったコパ・アメリカを除けば、そもそも6月9日のエルサルバドル戦以来のゲームである。敵地ヤンゴンでミャンマーと対戦するW杯2次予選を前に、このタイミングでチームのコンセプトを再確認しておくことが、今回の試合のメインテーマだった。

 はからずもパラグアイという対戦相手は、ミャンマー戦を念頭に置いたものとなった。

 疲労感を引きずる彼らは、現実的な戦いを強いられた。「もっと前からプレスをかけたかったが、引いて守らざるを得なかった」と、ベリッソ監督は振り返る。自陣ゴール前で日本の攻撃を跳ね返す戦略は、ミャンマーの狙いに共通するものがあるはずだ。この試合の崩しのイメージは、5日後にも応用できる。

大迫のフィニッシュは出色だった。

 フィジカルのコンディションについては、日本も万全ではなかった。試合間隔も空いている。立ち上がりはスムーズさを欠くことも、想定内だっただろう。

 そう考えると、23分で先制したのは上出来である。

 相手DFに当たって微妙にコースの変わったクロスを、きっちりとワクへ持っていった大迫のフィニッシュは出色である。さらに加えて、橋本拳人からパスを受けた中島が、自らに食いついた2人をワンタッチで剥がしたことが得点への布石となった。

 中島からパスを受けた堂安も、ワンタッチで左サイドへ展開する。スペースを突いた長友はフリーでパスを受け、大迫の先制弾へつながるクロスを供給できたのだった。

 森保一監督が求める「連携・連動」は、30分の2点目からも見て取れる。中盤でパスを受けた中島が、右サイドへ走り込んだ酒井宏樹の動きを見逃さずにパスを通す。背番号19がゴール前へクロスを通すと、南野がフリーで押し込んだ。

 相手GKはオフサイドをアピールしたが、南野は酒井の動き出しに呼応してファーサイドへ流れていた。1点目と同じように、イメージの共有に基づいた崩しである。

原口元気、植田直通、そして久保建英。

 2−0で折り返した後半は、3人の選手交代とともにスタートする。中島が退いて原口元気が2列目の左サイドに入り、酒井宏樹に代わって植田直通がピッチに立つ。植田は右センターバックに立ち、冨安が右サイドバックへスライドした。

 もうひとりの途中出場は、久保建英である。新天地マジョルカで公式戦デビューを飾ったばかりの18歳は、堂安に代わって2列目の右サイドに起用された。

 右サイドを構成するふたりは、興味深いプレーを披露する。

 夏の移籍市場でボローニャの一員となった冨安は、セリエAで右サイドバックを主戦場としている。果たして、この20歳のDFは森保監督に新たな可能性を示す。

 ビルドアップから崩しの局面まで、迷いのないプレーで攻撃に関わっていくのだ。酒井との優劣を問う段階ではないが、及第点の出来と言っていい。

冨安と久保の右サイドは完全に実用レベル。

 久保はどうだったか。

 6月に出場した4試合は、トップ下で起用された。2列目の右サイドも馴染みはあるものの、森保監督のもとでは初めての立ち位置である。今後につながるパフォーマンスを見せられるかどうかが問われるなかで、貪欲さと冷静さを絶妙なバランスで発揮していった。

 攻撃の起点になりながら個人で仕掛け、それでいて周囲を使える。時間帯によってはタッチラインから内側へポジションを取ることで、冨安の攻め上がりをスムーズにしていたのも触れておくべきだろう。

 右サイドバックの冨安も、2列目右サイドの久保も、あらかじめ想定できる範囲内のパフォーマンスだったと言うことはできる。同時に、このタイミングでトライをしておいたことで、オプションとしての可能性を見出すことができたのも確かだ。

永井謙佑の生かし方はいまだ見えず。

 パラグアイのコンディションを差し引きつつの判断でも、この日の日本は悪くなかった。細かいミスはもちろんある。コンディションに起因したものではなく、個人のレベルに原因のある危ういプレーや、判断の間違いによるミスも散見された。

 大迫から永井謙佑にスイッチしたあとの攻撃も課題だろう。大迫のバックアップ不在が指摘されているが、タイプの異なるFWを生かしながら攻撃を機能させる思考に、そろそろ切り替えてもいいはずだ。永井であれば、彼のスピードをもっと引き出すべきである。

 森保監督は「3点目を取れなかった」ことを指摘した。決定機を生かしていれば、あるいはプレーの判断が的確なら、前半だけで4−0にすることもできた。

 3点目を取れずに2−0で終えたことは、メンタルを引き締める材料にすればいい。

 前回のW杯2次予選の開幕戦で、日本はシンガポールとスコアレスドローを演じた。埼玉スタジアムにストレスとため息が充満した一戦を、ミャンマー戦の教訓にすべきとの声は多い。

パラグアイ相手の2−0はちょうどいい。

 直前のテストマッチにも、目を向けるべきである。

 シンガポール戦の5日前のイラク戦で、当時のヴァイッド・ハリルホジッチが率いる日本は4−0で快勝した。試合後の指揮官は「かなり良い試合をした。選手にブラボーと言いたい」と話した。

 ここで準備万端の雰囲気が出来上がったことも、格下と勝ち点1を分け合うことにつながった。チーム内にもチームを取り巻く周囲にも、危機感が薄れてしまったのだ。

 だとすれば、パラグアイ相手の2−0は悪くない。

「W杯予選はまた違ったプレッシャーがある。どんな試合でも難しくなる」と森保監督は言う。勝ってなお課題が浮上しているぐらいが、この試合のバランスとしては理想的なのだ。

文=戸塚啓

photograph by Takuya Sugiyama


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