日本バスケが露呈した世界との大差。チーム力は個があって成立するが……。

日本バスケが露呈した世界との大差。チーム力は個があって成立するが……。

 FIBAワールドカップは、日本男子バスケットボール界にとっては13年ぶりに立った夢の舞台だった。そして、その舞台にあがったことで見えたものは、選手たちの多くが経験したことがないような高いレベルの戦いで、しばらく世界から遠ざかっていた日本は、その舞台で戦う準備ができていなかったという現実だった。

 最終戦のモンテネグロ戦は、大会全敗同士の対戦だったのだが、全敗のチームであっても、世界トップ32チームのひとつ。ましてやモンテネグロはレベルが高いヨーロッパを勝ち抜いて上がってきたチーム。簡単な相手ではなかった。

 モンテネグロ戦で気を吐いたのは、共同キャプテンの1人、渡邊雄太だった。

 前戦のニュージーランド戦では、エースの八村塁(ワシントン・ウィザーズのシーズンに備えるために離脱)や共にキャプテンを務める篠山竜青(左足親指骨折で欠場)が抜けた中で、自分がチームを引っ張らなくてはいけないという思いが空回りしてしまい、「日本代表のユニフォームを着る資格がないプレーをした」と厳しい自己評価を口にするほど落ち込んでいた。

34点、9リバウンド、雄叫びも。

 それだけに、モンテネグロ戦では「このまま大会が終わっては後悔が残る。とにかく自分の持っているすべてを出し切ろう」と、試合開始直後からアグレッシブなプレーを見せた。

 ドライブインからのジャンパー、ファウルを誘って得たフリースローで得点を重ね、ディフェンスでもスティールや、相手のビッグマンのポストプレーに対してチャージングを取るなど、気迫のプレーで34点、9リバウンドと大車輪の活躍を見せた。3Q半ばにドライブインからダンクを決め、同点に追いついたときには、ジョージワシントン大時代によく見られた雄叫びも上がったぐらいだった。

 しかし、渡邊が34点とった一方で、渡邊以外の選手は合計で31点しか取れず、65−80で黒星。結局、1勝もできないままに大会は終わった。

渡邊を助けられなかった。

 渡邊が1人で奮闘しながら敗戦したこの試合は、今回のワールドカップでの日本代表を象徴するような試合だった。チェコ戦で21点の活躍をした八村塁、ニュージーランド戦で31点をあげたニック・ファジーカス、そしてモンテネグロ戦の渡邊と、個として光った試合はあったが、それがチームとしての勝利につながらなかった。

 モンテネグロ戦でスターターとして出場した田中大貴は、渡邊の活躍について「試合の序盤からガンガン1対1を仕掛けて、気持ちの部分で、自分がこのチームを引っ張るんだっていうのがすごく見えました」と称賛。そのうえで、「逆に、それなら、自分たちがそれに続いてやれなかったのか……。それが、自分の今の力のなさだと思う」と、渡邊を助けられなかったことを反省した。

「アジアではうまくいっても、(ワールドカップでは)しっかり対策されたときに、上回るチーム力がなかった。個人で打開してもらうという状況じゃ、上まで行けないと思う。自分の本音ですけれど、今日だって、雄太が積極的に仕掛けて、チームを引っ張ってくれましたけれど、ああやって1人がバンと点数をとって、まわりが何もできないというときはあまりいい結果にならないというイメージがある。

 そうじゃなくて、もっといいシチュエーションでシュートを打たせてあげたいですし、その中で彼の強みというのは本当に出してもらえばいい。まだまだ、チームとしてもっとうまくバスケットボールができるのかなと思います」

点を取る意識が強すぎた?

 個とチームの話は大会を通して、何人もの選手が語っていた。ニュージーランド戦の惨敗後、比江島慎はこんなことを言っていた。

「もっとボールを動かして、動かして、ピックなどをしないと、どうしてもずれが生じないですし、相手も守りやすい。そこをどうにかしないとずるずる行ってしまうと思う。みんなが点取ろう、点取ろうという意識が強すぎるっていうのも事実であって。僕を含めて、そういった選手がもっとチームのために動くことをやっていく必要があるんじゃないかなと思います」

 比江島自身も、点を狙いに行くことで相手のディフェンスを崩す役割を担っているだけに、自戒をこめてのコメントなのだろうが、仕掛ける選手の「点を取る意識が強すぎる」から、チームでの戦いができていなかったのだろうか? バスケットボールは点を取り合うゲーム。それだけに、点を取る意識は「強すぎる」ことはない。

 もちろん、よりいい状況を選択することは必要で、チームメイトが見えていなければ問題だが、それは点を取る意識の問題ではなく、個々の視野、能力、そして判断力の問題だ。個々の選手にそれが足りないと、どうしても孤軍奮闘となる。

チームプレーには「個」が必要。

「個の力」と「チーム力」は、時に相反するものとして語られるが、実際には両輪となるべきものだ。個の力がなければ、高いレベルのチームプレーを遂行するのは難しい。固められたディフェンスを個の力で崩すことができれば、そこからチームとしての戦いの道も開ける。

 今回の日本代表は、その連動の部分がうまくできていなかった。そして、その原因として、個の力が世界レベルに達していなかったことに戻るのだ。日本代表の選手たちは、この大会でそのことを痛感した。

 比江島同様に、アジアでの戦いでは自ら攻めこむことでディフェンスを引き付け、チームの得点機会を作り出すことに長けていた馬場雄大は、アメリカ戦で攻める姿勢を見せ、チームでただ1人、2桁得点の18点をあげた。その試合後に言っていた言葉が印象的だった。

「アジアとは比べものにならない」

「チームとして戦わなければいけないのは分かっていますが、パスを考えて後手に回るのがこのような舞台ではしてはいけないことだと思いました。(18得点は)先陣切って走り回ったし、自分が打ちたいようにプレーした結果だと思います」

 チームとして戦う意識は必要だが、そのために個々の積極性を失ったら、何もできないうちに試合は終わる。失うものがないぐらい力の差があるアメリカ戦だから試せたことだったかもしれないが、どんな相手でも、パスすればいいというものでもない。

 大会が終わった後に、馬場はこうも言っていた。

「(ワールドカップでは)個々のワンオンワンのディフェンス力がアジアとは比べものにならないぐらい強かった。そこでの状況判断も本当に考えさせられました。ノーマークを作ることは僕の責任なんですけれど、逃げるようにパスをしてしまったケースもあった」

スキル、フィジカル、判断力の差。

 フリオ・ラマスHCは、選手たちに、ペイント・タッチ(ゴール近くのペイントエリアに入ること)を意識するようにと説いてきた。それは、ゴールに向かって攻め込む意識を植え付けるためのものだった。

 当然ながらインサイドに入れば、相手ディフェンスは寄ってくる。そこで自分で攻め切るべきか、味方にパスをしたほうがよりいい攻撃機会を得られるのか、チームとして戦うためにはその判断力が重要だ。ディフェンスの手が伸びてくる中で、味方に的確なパスを出すスキルも必要だ。パスを受ける側が、適切なスペースに動き、相手のディフェンスの中でタイミングを合わせ、オープンになっている一瞬の間に躊躇せずにシュートを打ち、決めきる。

 普段の国内の試合、あるいはアジアの試合ではできていたことができなかったのは、別に選手が急にチームプレーが必要ないと思ったからでも、ラマスHCがチームプレーを構築していなかったからでもない。個々の選手が、世界レベルでそれを遂行するのに十分なスキルやフィジカル、判断力を持っていないからだ。

 大会を終えた後に、渡邊はこう言っていた。

「正直、チーム力以前に、個人の力が海外の選手に比べてすごく劣っていたと思いますし、気持ちの持ち方ひとつでも、むこうのほうがハングリーにプレーしていたんじゃないかなと僕自身思った。

 今回、1人ひとりが悔しい思いをして日本に帰ると思うんで、自分たちのチームでもこの悔しさを絶対に忘れずに、まず、個人としてレベルアップすることが次のオリンピックにむけてすごく必要だなと思います」

文=宮地陽子

photograph by Yukihito Taguchi


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