森保監督、五輪世代から絶大な信頼。“横さん”こと横内コーチの仕事術。

森保監督、五輪世代から絶大な信頼。“横さん”こと横内コーチの仕事術。

 日本から遠く離れたアメリカの地で、彼の代名詞とも言える言葉にピッチを響かせた。

「ブラーボ!!」

 テクニカルエリアを行ったり来たりしながら戦況を見据える人物は、いいプレーが出ると決まって選手を鼓舞するように声を響かせる。その言葉はいいプレーと悪いプレーの判断をする指標となり、チームが進むべき方向を示している。

 横内昭展コーチ。サムライブルー(日本代表)とU-22日本代表を兼任する森保一監督とはマツダやサンフレッチェ広島でともに選手として時間を過ごした間柄で、広島が2連覇を果たした時には監督とコーチとして共闘。その後、森保監督の要請を受けて五輪代表チームのコーチに就任し、現在では日本代表のコーチも担う人物である。

 そんな森保監督の右腕と言える存在は、来年に迫った東京五輪に挑むU-22代表にとって欠かせないピースの1つと言って過言ではない。

森保監督と横内コーチの信頼関係。

 特に森保監督がA代表の活動に専念する場合、U-22日本代表の監督代行を務めることが多く、これまでもトゥーロン国際大会やドバイカップ、U-23選手権予選などで指揮。先日の北中米遠征でも指揮を執るなど、五輪代表のチーム作りにおいて大きな役割を任されている。

 また横内コーチに対する森保監督の信頼は厚く、「横内さんが言うことは僕の言うことだと思ってください」と説明するほどだ。

 もちろん本人は「森保監督は饒舌なので、そこまでではないです」と笑うものの、「まるっきり同じことを言えるかはわからないけど、何も変わったことは言わないと思うし、全く違ったことをピッチで言っていることもないと思う。そこらへんは信頼して受け渡してもらっている」と語る言葉には、両者の確かな信頼関係がうかがえる。

率直に選手に思いを伝える。

 ピッチ内とピッチ外で、横内コーチの表情は大きく違う。ピッチ内ではチームの雰囲気を良くしようと声を出すときもあるが、基本的には真剣な表情で選手たちを眺め、時に緩さが見えれば選手たちへの檄が飛ぶ。

 9月2日から行われていた北中米遠征においても、初日の練習後に選手たちを集めて切り替えの遅さを指摘した。

「そういう切り替えの早さは日本の良さでもあるし、頭さえしっかり動かしていれば、すぐにでも実行できるところ。そこは今日だけではなく、この年代のチームが活動している時は常に言っている。そういう意味でもあまり僕の期待ほどではなかった」

 気づいたことがあれば、率直に選手たちに思いを伝えている。

広島弁の“横さん”らしい距離感。

 一方、ピッチを出れば会話中に広島弁がこぼれるなど謙虚で気さくな素顔が現れる。記者陣ともたわいもない話で盛り上がれば、嫌な質問にも素直な言葉で返答。多くの人が“横さん”と愛称で呼び、ユーモアあふれる人間性に惹かれる人は多い。

 だからこそ選手たちからの信頼が厚いのも頷ける。

 本人は「そんな風には見えないですけどね(笑)。たぶんリップサービスだと思いますよ」と謙遜するが、ユース時代から指導を受け、現在もU-22日本代表に名を連ねる長沼洋一は横内コーチの印象をこう語る。

「ユースの時から知っていますけど、やっぱり選手との距離が近い人ですね。それは広島の時からもそうだし、代表でもそう。個人、個人で話すことが多いと思うけど、横さんは本当に多くの人と話している。フランクというか、すごく話しやすいというのはあります」

 オンとオフを切り替えて選手と接する姿は、まさにコーチそのものと言っていいだろう。

 ただ、横内コーチが担う監督代行の仕事はそう簡単なものではない。指揮官不在の中でチームを構築していく必要があり、大会に臨んだとすれば結果も求められる。

 もちろん選手たちの機微を見逃すことなく、厳しく言う時は言わなければならない。普段は監督と選手の間に立つ役目を担うコーチでありながら、監督としてチームを指揮しなければいけない難しさは想像に難しくないだろう。

重圧があっても冗談をまじえて。

 特に監督代行を任される中で、よりプレッシャーを背負うことになるのが“結果”だ。

 例えば3月にミャンマーで行われた、東京五輪1次予選を兼ねたU-23選手権予選(日本は東京五輪の出場資格を手にしている)でのこと。来年1月に行われる本戦をチーム強化の場とするためにも突破が絶対条件だった。

 そういった難しい状況下で横内コーチはチームを指揮。3連勝で突破を決めたが、終わった後には「選手以上にドキドキです。たぶん帰り道の飛行機で(疲れて)死んでいますよ。本当に負けたらどうしようと思っていたので」と話すほどだった。

 とはいえ、そこはユーモアあふれる“横さん”。ホッとした表情を浮かべながら「『ビルマの竪琴』ではないけど、負けていたら日本に帰れなかったですよ(笑)」と冗談で笑いを取るところは流石の一言。そんな気さくさがチームを支えているのだろう。

 東京五輪まで残すところ1年を切った。

 多くの人が期待するメダルを手にするには、まだまだチームとしての成熟が必要なのは間違いない。

 さらに強力なチームを作っていくための試行錯誤は続く。

 コーチを務めながら監督代行としての顔も持つ横内コーチは、これからも森保監督の右腕として選手たちの道標となっていくはずだ。 

文=林遼平

photograph by Ryohei Hayashi


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