熾烈なCS争いの中、二軍で調整……。ロッテ涌井秀章は、また甦る?

熾烈なCS争いの中、二軍で調整……。ロッテ涌井秀章は、また甦る?

 千葉ロッテの涌井秀章が、今季は開幕から苦しいピッチングを続けている。

 9月18日現在で17試合に登板して3勝7敗、防御率は4.42。8月1日に一軍登録を抹消されると、その後の二軍戦でさえも5試合で26回1/3を投げて自責点17。この期間の防御率は5.81とふるわない。

 一軍のチームメイトたちが東北楽天と熱いクライマックスシリーズ(CS)争いを展開している中、涌井の一軍再昇格の目途は依然立っていない。千葉ロッテに移籍した2014年以降続けてきた規定投球回数も今季はどうやら届きそうになく、ファンもヤキモキとしていることだろう。

西武時代もあった不振。

 千葉ロッテが3位以内でレギュラーシーズンを終えれば、10月5日から始まるCSでの復帰の可能性もある。そこを本人はどのように考えているのだろう。

 シーズンも残り少なくなった9月の半ば、涌井本人に現在の心境を尋ねにいった。

「両方ありますね。もう来年に向けて切り替えるんだったら、今、二軍では投げていないと思う。まだCSもあるので、そこで経験を買われて投げるのなら……という感じです。確かに二軍で打たれてはいますけど、一軍のマウンドに上がったらまた違うと思うし」

 埼玉西武時代の2012〜13年にも不振で苦労した時期があった。その後、自身の体を見つめ直し、千葉ロッテ移籍後の'15年に15勝を挙げて見事に復活。自身3度目の最多勝を獲得した。ならば今回も――。

 不振の原因としてまず思い浮かぶのは、18歳でプロ入りしてから15年間で蓄積してきた疲労や消耗についてである。

積み重ねた投球回数の代償?

「2311回1/3」

 この数字は涌井が積み重ねてきた投球回数だ。怪我で長期離脱することもなく、第一線でここまで走り続けてきた。その代償がどこかに出てきている可能性はある。「そういうのはないと思いますけどね。わかんないです」と涌井は強く否定することも、肯定することもなかった。

「開幕の頃やシーズンが進んでからも、みんなから『練習し過ぎじゃないか?』とか『走り過ぎだ』と言われました。でも自分の中では、『別にそんなことないんだけどなぁ』と思いながらやっていた。やせ過ぎだとも言われているみたいですけど、ただ体脂肪が落ちただけで焦ることもないですし、別に大きく変わることはないと思っています」

尻上がりに良くなるタイプ。

 体ではないとしたら、投球そのものの感覚はどうなのだろうか。

「元々、自分は試合の中で尻上がりに良くなっていくタイプだと思うんですね。今は早い回で失点をして、代えられてしまっている。あくまで自分の感覚ですけど『良くなりそうだな』と感じても、その前に交代することもある。打たれている自分が悪いのもあるんですけど、消化不良の中で次の1週間が来るという感じではありました」

 7月6日の埼玉西武戦ではこんな展開があった。

 この日、涌井は4回までに5失点を許し、相手に流れをつかませてしまった。しかし、5回以降は修正し、5回は11球、6回が11球、7回は8球といずれも少ない球数で三者凡退に抑えた。

 また、7月24日の福岡ソフトバンク戦でも似たような展開があった。4回までに4点を失ったが、それ以降は立ち直って5回から7回までの打者10人に対しては被安打0、四球1の無失点に抑え、傾いた流れをなんとか食い止めた。

涌井の生命線は粘り強さ。

 結局、7月31日のオリックス戦での4回6失点で二軍降格となったが、本人にとっては何かを掴めそうで掴み切れなかった感覚があったに違いない。

「元々、ダルビッシュみたいにパーフェクトで抑えていたタイプではないですし、打たれている中で粘る、粘って気づいたら最後まで投げ続けていたというタイプだと思っています。そこを周りがどう見るかですよね。確かにピンチでタイムリーを打たれるときもあったので、結局はそこで踏ん張れるかなんだろうと思います」

 つまり“際”で粘れるかどうかが、涌井の生命線ということになる。黙っているだけでなく、そのための手段も模索している。

スプリットの再習得。

「結局のところ大事なのは決め球、空振りを取れる球。そこがしっかりしていれば、今季もある程度は楽に投げられたと思うんです。今は決め球というか、球数を減らす球を練習しているというか、(ファームの試合でも)もう1度投げ始めています。(具体的に言うなら)スプリットをもう1度しっかり投げる。そんな感じですね」

 ゴロを打たせやすいスプリットの再習得は、涌井らしさを甦らせるきっかけにはなるかもしれない。西武時代から涌井を知るキャッチャーの細川亨も「ストレートあっての変化球」と条件は付けたものの、「たしかに幅は広がると思う」と一定の理解を示した。

 涌井が言う。

「スピードが出ていないとか言われていますけど、その日の体調とか球場でスピードは変わってくる。マウンドも当然違う。序盤がよくなくても、終盤によくなることもあるから一概には言えない。今は全体的に上手く噛み合っていないのかなと思っています」

 頬がこけ、痩せ細った現在の彼の姿を見て、憶測であれこれという人間もいるようである。だが、チーム関係者によればもえ夫人の協力もあって涌井の食事管理は万全だという。

言い訳するなら「やめた方がいい」。

 前述した2311回1/3という数字は、9月18日時点ではNPBでは石川雅規(東京ヤクルト)の2789回2/3に次いで現役2位の投球回数であり、現役日本人メジャーリーガーおよびMLBからの帰国組の日米通算を含めても岩隈久志の2424回2/3(NPB通算1541回、MLB通算883イニング2/3)に次ぐ現役3位の記録である。彼の歩んだ道が間違いではなかったひとつの証明と言えるだろう。
※編:20日、田中将大(ヤンキース)がエンゼルス戦で7回を投げ、通算2318回1/3。涌井は4位に。

 ファームで涌井の現状を見守る小野晋吾二軍ピッチングコーチも悲観はしていない。

「ワクはまだ33歳。これからどんどん自分の体と向き合う時間が増えていくと思うんです。彼の場合は1度それを経験していますし、(ロッテに来たときも)それで1度復活して、また活躍したわけですからね。その繰り返しだと思うんです。

 30歳を越えると、たとえば食事面を変えて節制に取り組むことになるんだと思うけど、彼の場合はサポートをしてくれる人が周りにいる。あとはどれだけ自分と向き合えるか。今はその時期に来ていると思いますね」

 年齢も長年の選手生活も言い訳にはならない。涌井は分かっている。

「それを言うようになったら、もうやめた方がいいですよ」

 プロ通算133勝で最多勝3回。その言葉を発したとき、プライドが垣間見えた。

 不死鳥のごとく甦る彼の姿を今は信じて待ちたい。

文=永田遼太郎

photograph by Kyodo News


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