最強の来日大リーガーはクロマティ。大外れは7戦で引退グリーンウェル。

最強の来日大リーガーはクロマティ。大外れは7戦で引退グリーンウェル。

 メジャーのオールスター・プレイヤー、アルシデス・エスコバーのヤクルト入団が決まった。若いライター仲間のSNSでは「え、エスコバーが!」などと驚きの声が挙がっている。

 確かにニュースではあるが、おじさんの私には「既視感たっぷり」ではある。

 日本の野球ファンがMLBに初めて目を向けたのは、1978年のことだった。フジテレビが『アメリカ大リーグアワー』という番組を始めたのだ。これに合わせて4月にベースボールマガジン社が『米大リーグ26球団ガイド』を発売し、私はむさぼり読んだ。

 カラーページにはレジー・ジャクソン、ピート・ローズ、ノーラン・ライアンなど、当時のスター選手が並んでいたが、驚いたことに、この中から何人もの選手が日本にやってきたのだ。

 翌1979年にはマリナーズから阪神にリロイ・スタントン、1980年にはカブスから西武にスティーブ・オンティベロス(西武ではスティーブ)、1983年にはドジャースから巨人にレジー・スミス、1988年にはタイガースからロッテにビル・マドロック(1978年当時はジャイアンツ)。

 私はそのたびに今の若いライター諸君同様「え、すごい!」と驚いた。メジャーの一流選手なのだから、さぞやすごい成績を挙げるだろうと思った。

「こら、打たんとん、引っ込め!」

 しかし、必ずしもそうではなかった。

 マリナーズで77本塁打を打ったスタントンは、阪神でも23本を打ったが打率.225、三振はリーグ最多の136。甲子園では「こら、打たんとん、引っ込め!」とヤジが飛んだ。

 スティーブは西武の主力打者として、超大物レジー・スミスも短期間だが中軸打者として活躍した。その一方でビル・マドロックは4度も首位打者を取った大打者で、「マッドドッグ(狂犬)」と言われるほどヤンチャだったが、日本では元気がなくその片鱗もなかった。

 こういう経験を経て、私のようなおじさんファンは「バリバリのメジャーリーガーだからと言って、活躍するとは限らない」ということを学んだのだ。

ドビーら名選手も活躍できず。

 実はそれ以前から、NPBには超大物選手がやってきている。

 1962年にはラリー・ドビーが中日に入団した。1998年に米国野球殿堂入りしたドビーはジャッキー・ロビンソンに次ぐ2人目の黒人メジャーリーガーだった。しかし中日では10本塁打35打点、打率.225に終わっている。

 その10年後には、1965年ア・リーグMVPに輝いたソイロ・ベルサイエスが広島の一員となった。ゴールドグラブ2回に輝く名遊撃手だったが、広島では4本塁打10打点、打率.189の成績だった。

 よく言われるようにMLBとNPBでは野球のスタイルが異なっている。それに、メジャーのスター選手は、盛りを過ぎてから日本にやってくることが多い。また、プライドが高く、日本野球や文化になじまないこともあった。

盛りを過ぎた後の入団だと……。

 ここでMLBで2000本安打以上をマークして、NPBにやってきた選手の日米の通算成績を見てみよう。

・ウィリー・デービス
(MLBではドジャースなど、NPBでは中日、クラウン)
 MLB
 2429試合9174打数2561安打
 182本1053打点398盗 打率.279
 NPB
 199試合797打数237安打
 43本132打点22盗 打率.297

・トニー・フェルナンデス
(MLBではブルージェイズなど、NPBでは西武)
 MLB
 2158試合7911打数2276安打
 94本844打点246盗 打率.288
 NPB
 103試合370打数121安打
 11本74打点2盗 打率.327

・レジー・スミス
(MLBではレッドソックス、ドジャースなど、NPBでは巨人)
 MLB
 1987試合7033打数2020安打
 314本1092打点137盗 打率.287
 NPB
 186試合494打数134安打
 45本122打点3盗 打率.271

・ビル・マドロック
(MLBではパイレーツ、ドジャースなど、NPBではロッテ)
 MLB
 1806試合6594打数2008安打
 163本860打点174盗 打率.305
 NPB
 123試合437打数115安打
 19本61打点4盗 打率.263

 ウィリー・デービスは中日時代、ランニング満塁ホームランを打って、日本人の度肝を抜いた。他の選手も、短期的にはいいところを見せたが、やはり「盛りを過ぎた」印象は否めなかった。

 なお投手ではMLBで310セーブを挙げ、2008年に米国野球殿堂入りしたリッチ・ゴセージが1990年にダイエーでプレーしたが8セーブにとどまっている。

バース、ブーマーは無名だった。

 MLBのスター選手で、NPBでも活躍した選手と言えば、ウォーレン・クロマティが最も有名だろう。

・ウォーレン・クロマティ
(MLBではエクスポズなど、NPBでは巨人)
 MLB
 1107試合3927打数1104安打
 61本391打点50盗 打率.281
 NPB
 779試合2961打数951安打
 171本558打点26盗 打率.321

 クロマティはメジャーで3割を打ち、NPBでは1989年にMVPを受賞している。

 働き盛りにNPBに移籍したこと自体が稀有なことだったが、クロマティは、日本野球に見事に順応した。聡明な選手だったのだろう。

 ただ、NPBで大活躍した選手は、MLB時代に無名だった選手が圧倒的に多い。

 三冠王を2回獲得したランディ・バースはMLBでは69安打9本塁打、こちらも三冠王経験のあるブーマー・ウェルズはMLB時代、29安打0本塁打である。

 投手でも、NPBで100勝したジーン・バッキーはMLB出場なし。同じく100勝のジョー・スタンカはMLBでは1勝。今年引退したランディ・メッセンジャーはNPBで98勝したがMLBでは4勝どまりだった。

 野球選手の選手生命は20年前後と短い。その期間に、日米両方で実績を挙げるのは難しいのだ。

グリーンウェル、ペニーは……。

 メジャーのスター選手で、日本で全く活躍できなかった選手は、枚挙にいとまがない。

 古いところでは、1974年のフランク・ハワード。ホームラン王2回、打点王1回の実績を持つ1200cmの巨漢スラッガーは、鳴り物入りで太平洋に入団。キャンプでは163cmのロッテ弘田澄男とのツーショット写真が話題になった。

 漫画「あぶさん」では、景浦安武とホームランの打ち合いをしたことになっていたが、公式戦は1試合に出ただけで2打数0安打で帰国した。

 阪神ファンは、1997年のマイク・グリーンウェルを思い出すだろう。

 レッドソックス時代に119打点を挙げ、大いに期待された。しかしたった7試合に出ただけで「神のお告げがあった」と突如引退。年俸3億という高給取りだっただけに、ファンはぼやきまくった。

 記憶に新しいところでは2012年のブラッド・ペニーである。ドジャース時代に最多勝投手になった本格派だったが、ソフトバンクでは4月に1試合登板しただけ。退団後の「楽しくなかった」という発言が、ホークスファンを怒らせた。

楽天のジョーンズは格が違った。

 そういう悪しき例もあるが、MLBの大選手は、独特の風格があって格好いい。

 アンドリュー・ジョーンズは、ブレーブス時代、チッパー・ジョーンズとともに「Wジョーンズ」としてチームの顔だった大選手。本塁打王、打点王もとった。

 2013年に楽天に入団。この年の楽天は田中将大が24勝0敗という空前の成績を挙げ、初優勝したが、ジョーンズは粘り強い打撃で貢献した。

 私は何度もこの選手を見に行ったが、打席では笑顔を浮かべながら、ゆったりと構えて投手の球筋を見極め、スイング一閃、すさまじい打球を飛ばしていた。やはり格が違うという感じがしたものだ。

“あの”ラミレスは高知でプレー。

 日本のチームでプレーしたメジャーリーガーということで言えば、ナンバーワンの超大物は、他にいる。

 マニー・ラミレスだ。

 MLB通算2574安打555本塁打1831打点、
 打率.312。首位打者、打点王、本塁打王各1回。

 ラミレスは2017年に独立リーグ高知ファイティングドッグスでプレーした。筆者は2013年に台湾プロ野球の義大ライノスに入団した時からマニーを追いかけていた。

 高知に来たときは45歳になっていたが、試合前の打撃練習では1球1球心を込めて打ち込んでいた。驚くことに打ち損じはほとんどなかった。

 もう打つだけしかできなかったが、3本塁打22打点、打率.413を残した。

 高知の人々は彼が来た当初は「何や、ラミちゃんかと思たのに」と言った。ちなみにラミちゃんこと現DeNA監督のアレックス・ラミレスはインディアンスでマニーのチームメイト。当時のアレックスは、大スターだったマニーの控え外野手だった。

 マニーはカーマニアで、日本車のパーツを買いそろえるのが目的と言われたが、夫人がアメリカに帰国してからは日本の生活を楽しむようになる。

 滞在していたホテルの宴会場で開かれた地元消防団の宴会に飛び入りしてカツオのたたきを食べたり、自転車でお気に入りのクロワッサンを買いに行ったりして、すっかり人気者になった。

 高知の関係者に聞くと、今春も「高知で野球をやってもいい」とオファーがあったという。

 マニーに一度でいいから、NPBでプレーしてほしかった。

MLBきっての守備職人エスコバー。

 来季、ヤクルトに来るアルシデス・エスコバーは、ベネズエラ出身。MLB通算1367安打41本塁打442打点174盗塁、打率.258。打者としては軽量級だが、守備の名手であり、盗塁成功率が高い。まだ32歳だから、一仕事してくれる可能性はあるだろう。

 エスコバー家は、メジャーリーガーを多数輩出している名家だ。DeNAのエドウィン・エスコバーは従弟にあたる。いろんな情報も入っているだろうから、適応する可能性は高いのではないか。

 来春は、MLBのスター選手ならではの身のこなし、そしてスターのオーラをぜひ感じたいものだ。

文=広尾晃

photograph by BUNGEISHUNJU


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