バーティに優勝賞金4億8000万円!WTAファイナルズの陰に中国マネー。

バーティに優勝賞金4億8000万円!WTAファイナルズの陰に中国マネー。

 女子テニスツアー最終戦、シーズンの上位8人のみに出場資格が与えられるWTAファイナルズが閉幕した。

 テニス史上、個人スポーツ史上最高の優勝賞金額を手にしたのは、オーストラリアの23歳アシュリー・バーティ。大坂なおみの同世代ライバルの1人でもあるバーティが獲得したその額は、442万ドル(約4億8000万円)にのぼる。

 ラウンドロビンで1敗してしまったため、優勝者が獲得しうる最高額の472万5000ドル(約5億1200万円)には届かなかったが、それでも男女を通した個人のスポーツにおいて歴史上もっとも高額な賞金を手中に収めた。

 ちなみに、ラウンドロビンの1勝には30万5000ドル(約3300万円)が配分されており、全勝で勝ち上がった準優勝のエリナ・スビトリーナは240万ドル(約2億6000万円)を獲得した。いずれも男子の最終戦であるATPツアーファイナルズの賞金の2倍に近い額だ。

賞金の一部を動物愛護協会に寄付。

 バーティは、ジュニア時代から類い稀な才能に恵まれながら18歳の若さで一度バーンアウトし、2年近くテニスを離れて、その間にクリケットの国内リーグで活躍したという異色の経歴の持ち主。全仏オープンで悲願のグランドスラム優勝を成し遂げ、大坂なおみから世界1位の座も奪った今年の活躍を見れば、トップ中のトップが集う今大会でもっともチャンピオンにふさわしい選手の1人だったといえるだろう。

「私も、多分ほかの選手たちも皆、賞金のことを考えてテニスをしているわけではないけど、女子スポーツの成長の証ととらえていいと思う。

 テニスはもっともグローバルですばらしいスポーツだと思うし、このことによって女子テニスがさらに世界中から注目される。何もないところからスタートした私たちが、こうして新しい記録を作った。選手だけでなく、長い間、陰で尽力してきた全ての人々の努力の賜物だと思う」

 そう語ったバーティは、賞金の一部を自身がアンバサダーを務める『動物虐待愛護協会』に寄付するのだという。

 膨大な報酬を社会に還元する行為も関心を集め、きらびやかな金・銀・ラメの紙吹雪の中、おさまるところにおさまったという感じで大会の幕は下ろされた。

大坂、アンドレスクの途中棄権。

 ただ、8日間の大会期間中、ずっと心に引っかかっていた思いがある。本当にこれほどの賞金を据える大会にふさわしい内容だっただろうかということだ。

 実際に賞金を受け取るのは選手たちだが、選手だけに背負わされる責任ではない。

 運営ノウハウの完成度や、会場内に配置されているあらゆるスタッフのレベル、観客の数とその質、メディアの数とそのクオリティ。残念ながらこれらはいずれも、この歴史的な大会に見合うものではなかった。

 その中で、肝心の選手のパフォーマンスはどうだったかといえば、プレーのレベルそのものよりも、棄権者の多さが大会の盛り上がりを妨げ、ファンやメディアの興味を削いだように思う。

 大会3日目に大坂なおみがラウンドロビンの2試合目を前に棄権し、最年少の19歳ビアンカ・アンドレスクもその翌日のラウンド2を途中棄権。結局、残り1試合は捨てて姿を消した。大阪から北京と10連勝してきた大坂と、シーズンを通した勝率が出場者中最高で9割を超すアンドレスク。キャラクター的にももっとも期待、注目された2人がラウンドロビンを途中退場する事態に、格落ち感は否めなかった。

ベルテンス、ベンチッチも……。

 ラウンドロビンのために大会は控えの選手を用意しているが、大坂の代わりに入ったキキ・ベルテンスも1勝したあとにグループ最後の試合を途中棄権。準決勝に進出したベリンダ・ベンチッチも右脚の付け根の痛みを理由にファイナルセット途中で棄権した。

 シーズンも終盤で多くの選手が疲労や痛みを抱えている。シーズンを通しての競争レベルが高くなったことも一因かもしれない。

 しかしよほどのケガでなければ最終戦を欠場することはしない。名誉云々以上に、たとえ1試合しか戦えず、しかも負けたとしても22万ドル(約2400万円)の出場料があるのだ。

経済特区・深セン開催という要因。

 賞金の高騰に中身が追いついていない。

 アジアで、中国でこのクラスの大会を開催するのはまだ無理なのではないか。一方で、中国だからこの巨大なクラスの大会になったことも確かだ。賞金の吊り上げに大きく協力したのは開催地である深セン市だ。

 アジアのシリコンバレーと呼ばれる深センは、中国が改革開放政策の一環として1979年に設置した4つの経済特区の1つで、外国の資本や技術を導入するために税制優遇などを認めた。超高層ビルが乱立し、猛烈なスピードで開発が進む都市のようすに驚かされた。

 ベンチッチはあるとき記者会見で、「皆さん、知ってました? スイスとチェコとスロバキアの全人口を合わせても深セン市の人口より少ないんですって」と言って笑った。

 深センの人口はネットなどでは1400万と記されているが、あまりにも急速に増加しているため情報の更新がされていないだけで、実際は2000万人を超えているという。誰から聞いたのか、ベンチッチが言うには2200万人だそうだ。

添田が話していた中国の環境。

 そんな深センではこのWTAファイナルズのほかに年初のWTAツアー大会(賞金総額75万ドル)、3月と10月にATPチャレンジャー大会が開催されている。10月のチャレンジャーというのはWTAファイナルズと同じ週で、屋外のハードコート大会だ。日本からもシングルス本戦に4人が出場していた。

 その中では最高のベスト8まで勝ち進んだ添田豪はこんな話をしていた。

「中国の大会は施設がいいですし、ツアーレベルのセンターコートを持っているところもあります。でもお客さんはいない。日本はチャレンジャーレベルでもけっこう多くのファンの方が来てくれます。中国の施設と大会数、そこに日本のお客さんが組み合わさったら最高の環境になるんですけどね(笑)」

 中国には現在、上海マスターズを含めて男子のツアーレベルが4大会、女子は珠海で行なわれている<次代のスターのためのもう1つのファイナル>も含めて10大会ものWTA大会がある。さらには日本に現在2大会しかないATPチャレンジャーが10大会もある。

プロテニスはシンボリックなアイコン。

 急激に数を増やした中国での大会の開催地はすべて、国が経済特区や経済開発区などに指定している町である。経済のグローバル化を進める中で、プロテニスは1つのシンボリックなアイコンになる。

 また歴史的にテニスの土壌があるかないかなど関係なく、お金をどんどん出してくれるならATPもWTAも大歓迎だ。

 深センでのWTAファイナルズ開催は10年先まで続く。

 町は恐ろしいスピードで年々変貌を遂げていくだろう。それにソフトの成長はともなっていくのだろうか。中国の、女子テニスのチャレンジが今後どう発展していくのか興味深い。

文=山口奈緒美

photograph by Getty Images


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