プレミア12初戦で薄氷の逆転勝利。「国際試合では逆方向」を徹底せよ!

プレミア12初戦で薄氷の逆転勝利。「国際試合では逆方向」を徹底せよ!

 負けてもおかしくない試合……いや、相手投手が普通に投げていれば、負けている試合だったと言ってもいいだろう。

 東京五輪の予選を兼ねた野球の国際大会「プレミア12」の台湾でのオープニングラウンドが5日に開幕。稲葉篤紀監督率いる日本代表・侍ジャパンは大苦戦の末、終盤の逆転劇で8対4とベネズエラを下して白星スタートを切った。

 残された攻撃は8回と9回の2回だけ。その中で侍ジャパンが追いかけるのは2対4と2点のビハインドだった。

 日本にとっては絶体絶命のピンチのはずだったが、そこから白星目前のベネズエラ投手陣がいきなり崩れた。

不振の1番・坂本に代打。

 マウンドの5番手左腕、エルビス・エスコバー投手が先頭の浅村栄斗内野手(楽天)を1ストライクを取ってからボール連発で歩かせると、続く丸佳浩外野手(巨人)にはストレートの四球でピンチを広げる。

 ここで代わったアントニ・ビスカヤ投手に松田宣浩内野手(ソフトバンク)が送りバントを失敗して万事休したかと思えたが、ここからまた四球の連発だ。

 まず9番の会沢翼捕手(広島)にもストレートの四球で満塁とする。するとすかさず稲葉監督が勝負に出た。不振の1番・坂本勇人内野手(巨人)に代えて山田哲人内野手(ヤクルト)を送る代打策だ。

 その山田がカウントをとりにきた初球の甘い真っ直ぐを左翼線にあとわずかで逆転満塁本塁打という大ファウル。この一撃でビスカヤは、ますますストライクが入らなくなってしまった。

ベネズエラ投手陣が大乱調で逆転。

 山田に押し出し四球で1点差とすると、続く菊池涼介内野手(広島)が、狙いすましたように初球を左前に弾き返して同点に追いつく。

 さらに近藤健介外野手(日本ハム)の押し出し四球で勝ち越すと、鈴木誠也外野手(広島)の犠飛、申告敬遠を挟んで代走で出ていた源田壮亮の内野安打、丸の押し出し四球とこの回だけで7四球というベネズエラ投手陣の大乱調につけ込んで6点を奪い、一気の逆転劇で白星を手にした。

「本当に選手はよくつないで粘り強く闘ってくれたと思う。フォアボールは相手がくれたと言われるけど、そうではなくて打ちたいところを我慢して、しっかりとったフォアボールだった。明日につながる勝ち方だったと思います」

 試合後の稲葉監督は上気した表情で、この逆転での白星スタートを振り返った。

スーパーラウンド進出が断たれる可能性もあった。

 もし負けていれば残りのプエルトリコ、台湾との試合を連勝しても、2勝1敗で3チームが並ぶケースも想定できる。そうなると得失点率の差によっては東京で行われるスーパーラウンド進出が断たれる可能性すらある大ピンチだった。まさに薄氷を踏んでの初戦勝利は、世界一奪取への可能性をつないだ1勝と言えるものだったのである。

 これが国際大会の難しさなのだ。

「去年の日米野球も逆転サヨナラ勝ちだったし、国際試合の初戦というのはこういう試合になるケースが多い。とにかくここからどう修正すべきところは修正するかですね」

 こう語ったのは井端弘和内野守備・走塁コーチだ。

 苦戦の原因を探れば、とにかく打てていないことにある。

 沖縄で行われたカナダとの練習試合を含めて、得点は相手のミスがらみが多く、しっかりと相手投手を攻略できていないのが、今後の戦いを考えていく上では注視すべきテーマであるはずだ。

「国際試合では逆方向」

 そこで思い出すのは過去のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)など侍ジャパンの常連だったソフトバンク・内川聖一内野手のこんな言葉である。

「国際試合では逆方向。これができないと絶対に打てない」

 実はこの日の侍ジャパンが放った安打8本に、その答えはある。

 菊池が放った3本の安打のうち5回の右翼線二塁打を含めた2本は右方向への打球だった。もう1人、2安打を放った浅村も4回にチーム初安打となる右前安打を放つと、6回には中越えに二塁打とやはりセンターから右を意識した打球なのである。内野安打2本を除く6安打中で5本が逆方向への安打だった。

 要は強引に引っ張るのではなく、ポイントを少し手元側に寄せてしっかりと逆方向を意識した打撃の必要性だ。それができないとアメリカや中南米の投手の動くボールにはどうしても対応しづらくなる。国際試合では逆方向への意識は必須だということなのだ。

なぜかドゥブロンが交代してくれた。

 典型的な例がこの日のベネズエラ戦でも先発左腕のフェリックス・ドゥブロン投手だ。この左腕は2012年と'13年にはボストン・レッドソックスで先発ローテーションの一角を担って2年連続11勝を挙げている“本物”の投手だった。

「速いというわけではないがカットボールが右打者の内角に鋭く切れ込んできたり、手元でかなり動いて手こずった印象がある」

 こう稲葉監督も振り返るように、4回で放った安打はわずかに1本。日本サイドから見ればこのドゥブロンがなぜか4回68球で交代してくれたことが、この試合の1つの大きなポイントだったことになる。

 しかしこうしたメジャー経験のある本格的な投手を相手に前さばきの打撃で強引に引っ張っていくと、むしろ差し込まれて相手の術中に嵌ってしまう。

拾った勝利でも勝ちは勝ち。

 マン振りが売りの吉田正尚外野手(オリックス)が1、2打席ともフルスイングで打ちにいってどん詰まりの左飛に倒れたのがいい例だった。

 そうして前でさばいて遠くに飛ばそうとするのではなく、ポイントを近づけて鋭く逆方向に打ち返す。内川と同じく侍ジャパンの常連で、小久保裕紀前監督時代には4番を任されたDeNAの筒香嘉智外野手も「動くボールを打つには逆方向を意識したほうがはるかに確率が上がると思う」と語っている。

 どこまでその逆方向への意識を徹底できるか。そこが今後の打線の1つのテーマになるはずである。

「国際試合は独特な雰囲気があるし、まず勝つことが大事。だから今日の勝利はよかったですよ。誰が活躍したかというのは関係ないし、その中で選手1人1人が勝つためにどうやって貢献できるかと頑張るだけ」

 試合後にこう語ったのはチームリーダー的存在の松田だった。

 拾った勝利、貰った白星でも勝ちは勝ちである。この貴重な白星から侍打線がどう変われるか。世界一奪取には、そこが大きなポイントとなりそうである。

文=鷲田康

photograph by KYODO


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