「東京五輪で金」への秘密兵器!高橋礼、キレと大胆さと制球力。

「東京五輪で金」への秘密兵器!高橋礼、キレと大胆さと制球力。

「オリンピックのようにプレッシャーのかかる国際舞台で一番大事なのは、簡単にストライクを取れる大胆さとコントロールなんや」

 こう語っていたのは2008年の北京五輪で日本代表チームの指揮を執った故・星野仙一さんだった。

 星野さんが北京五輪の日本代表チームの編成で絶対に必要な選手として挙げたのが、当時巨人に所属していた上原浩治投手の名前だった。

「あいつは3球で2ストライクがとれる。その大胆さと技術がある。どんな状況になっても上原は連れていく」

大胆にストライクをとれる技術。

 ただこの年の上原さんは開幕からの不振で4月末には一軍登録を抹消され、プロ入り以来初めてのファーム落ちを経験。五輪代表入りも難しい状況だったが、星野さんはひたすら復調するのを待った。

 上原さんもその期待に応えるべく、ファームでの走り込みからフォーム修正と1つずつ階段を登るように自分のピッチングを再構築し、その結果、五輪代表合宿合流直前の7月29日にこのシーズンの一軍初セーブを挙げて復活を果たした。

 五輪でも2試合に投げて無失点と期待通りの国際試合での強さを発揮したのである。

 この細心さの中でも大胆にストライクをとれる技術が国際試合で活躍できるポイントだとすれば、その力を示したのが台湾で行われている「プレミア12」のオープニングラウンド第2戦のプエルトリコ戦に先発したサブマリン・高橋礼投手(ソフトバンク)だ。

 日本シリーズでも巨人を翻弄した地を這うような低い位置から放たれたボールに、プエルトリコ打線の打球が面白いように詰まって凡退を繰り返した。

初球は135kmのど真ん中の真っ直ぐ。

 その中でやはり注目すべきは高橋のストライクをとる力だ。

 初回、先頭のオスバルド・マルティネス内野手には初球135kmど真ん中の真っ直ぐでストライクをとり、3球目で三ゴロ。

 続く2人目は大リーグのロサンゼルス・ドジャースなどでメジャー経験もあるイバン・デヘスス内野手だったが、これも初球に132kmストレートを真ん中高めに決めると2球目で遊ゴロ。

 そして3人目のダニエル・オルティス外野手にも初球137kmの内角ストレートで見逃しストライクを先行させて、カウント1ボール2ストライクからの4球目で遊ゴロに仕留めた。

データのない中でどう攻めるか。

「データのない中でどうやって攻めていくのか。その辺は非常に気を使いました」

 こう国際大会の難しさを語るのは、高橋とシーズン中からコンビを組む甲斐拓也捕手(ソフトバンク)だ。

「初球の入りを大事にしながら、ある程度、勇気が必要なところもありました。何よりやっぱり礼のピッチング、礼がしっかり投げてくれたから。高低、横幅をしっかり使って強気に攻めるところはしっかり攻められていた。僕がどうこう言うより、礼がしっかりと投げてくれたということだと思います」

 2回以降も浮き上がる真っ直ぐとスライダーとシンカーを巧みに操って左右、高低とストライクゾーンを目一杯に広げて使い、なおかつタイミングもずらす前後の揺さぶりも冴えていた。

 対戦した20人の打者に対して2球目までにストライクが取れなかったのは、3回のウィルフレド・ロドリゲス捕手と5回のハスムエル・バレンティン内野手の2人だけ。

6回2死まで完全ペース。

 6回2死まで完全ペースで、18人目の打者となったジェイ・ゴンザレス外野手に四球を与えて初めての走者を出すと、続く1番・マルティネスへの内角スライダーを打たれて三遊間を破られ初安打を許した。

 しかし2死一、二塁の唯一のピンチもデヘススを外角に流れるスライダーで空振り三振に仕留めて切り抜けた。

「自分の武器は真っ直ぐで押すこと。ストレートを軸に、しっかりとストライクがとれた。打者が打ちたくなるようなコースを狙って、そこから曲げたり落としたりして芯を外す投球ができました」

侍ジャパンの未来にもつながる。

 6回1安打無失点。ほぼ完璧な投球内容に本人もしてやったりの表情を見せたが、もちろん大胆にストライクをとりにいけたことだけがこの好投の秘密ではない。

「ストライクとボールをしっかり投げ分けること。大胆にいくところは大胆にいこうと試合前にバッテリーで話し合った通りのピッチングができた」

 要はきちっとボールがコントロールできていた。星野さんが指摘した大胆さとコントロールという国際試合で必要な2つの要素を、このサブマリンは代表初先発のマウンドで示して見せたのである。

 そしてこの白星は侍ジャパンの未来にもつながることになる。

 昨年はルーキーながら日米野球の代表チームにいきなり選ばれ、今回が3度目の侍ジャパン入り。もちろんこの先には2020年の東京五輪で金メダルを目指すチームの先発陣の一角を任される可能性が見えてきた。

「日本の打者はある程度、様子を見ながら手探りで打席に入ってくることが多いんですけど……」

高橋が感じた国際試合の違い。

 高橋が感じた国際試合の違いはこうだった。

「こういう国際試合では狙っている球が来たら躊躇なく手を出してくる傾向がある。そこに気をつけないといけないと思いました。

 ただ、日本人のバッターのようにインコースの高めのボールに対して、器用に肘を畳んで打てるバッターは少ないので、そのボールをどうやって使っていくか。そこが日本でのピッチングと、こういう国際大会でのピッチングの違いになると思います」

 こうして経験値を上げていくためにも、日本で行われるスーパーラウンドでの先発にもさらなる期待が膨らむ。

五輪で金メダルを獲るために。

 対戦したプエルトリコのフアン・ゴンザレス監督は「国内ではあのようなスタイルの投手は見たことがない」と評した。ただ高橋の場合は単なるサブマリンというだけではなく、ボールのキレとそのキレを自在に操る制球力、そして大胆に相手打者の懐をつける技術がある。

「140km出ない真っ直ぐなんですが、力強いバッターでも差し込んで、ゴロに打ち取っている。緩急、高低を使いながら、非常に素晴らしい投手だなと、改めて思いました」

 こう評したのは試合後の稲葉篤紀監督だ。

 星野さんも叶わなかった五輪での金メダル奪回の夢。それを手にするための秘密兵器、いや侍ジャパンの主軸投手の誕生である。

文=鷲田康

photograph by KYODO


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