清原和博が大切なものを取り戻す日。12月1日、八王子に集まる人々の思い。

清原和博が大切なものを取り戻す日。12月1日、八王子に集まる人々の思い。

 清原和博氏は日常を取り戻しつつある。

 2016年2月に覚醒剤取締法違反で逮捕され、同5月に懲役2年6月、執行猶予4年の有罪判決を受けてから、まもなく3年半が経とうとしている。

 執行猶予明けが近づいてきたということが大きな要因ではあるのだろう。

 別れた家族と連絡ができたり、昔の仲間と再会できたりしているという。先日は野球のトライアウト・イベントの監督を務めることが発表され、多くのメディアに取り上げられた。社会との繋がりも取り戻しつつある。

 プロ野球用語で言えば「復帰」である。これからの歩みはそう表現されていくのだろう。

 法律上、刑の確定から4年間、刑事事件を起こさなければ刑罰権は消滅する。

 ただ、野球界のスターにとって、人生における本当の意味での「復帰」とは、その日が来れば自動的に成るというものではないはずだ。

 社会への露出によって成るというものでもないはずだ。

 薬物に手を染めたことで失った多くのものを少しずつ取り戻していくことによって初めて成る。清原氏も周囲の人たちもそれを理解しているように映る。

 そうした意味で、来る12月、清原氏にとってひとつの節目がやってくる。

12月1日に開催される大事なイベント。

「レジェンド・ベースボール・フェス」

 12月1日、ダイワハウススタジアム八王子で行われる野球イベントだ。「グリーンシードベースボール」(gsbb.jp)という財団と八王子市教育委員会が共催する。

 イベント開催に奔走したのは財団の代表である野々垣武志、PL学園野球部から西武ライオンズに入団した元プロ野球選手である。

 野々垣は奈良の桜井で生まれ育ち、甲子園の決勝戦でホームランを放った清原を見て、憧れて、PLへ進み、名門の4番を打ち、西武でともに戦い、引退後は清原氏の個人マネージャーを務めた。

 いわば「清原になりたかった男」である。

「キヨさん、どうしていますかね」

 キヨさん。タケシ。

 バットでしか本当の自分を語れないところも、無防備に他人から愛されるところも、その反面、社会性に乏しいところも、2人はそっくりだった。

 清原氏が闇に落ち、周囲との関係を断絶していった時期、つまり逮捕される前、野々垣は清原氏のもとを離れていた。

 だから手錠をかけられ、留置場で取り調べを受け、保釈後に薬物依存症と闘う清原のもとに一緒にいたわけではない。

 あんなに近くにいたのに、いやむしろ近かったからこそ、どん底の清原に連絡することができずにいた。

「キヨさん、どうしていますかね。何かできることはないかと思っているんですが……」

 その間、人生で初めて野球界から離れ、都内の飲食店で店長として働いていた。慣れない家業を懸命にこなす野々垣の顔には、どこか陰があった。

「タケシ、俺、頑張るから……」

 そんな野々垣を見かねて、2人を引き合わせたのが、グリーンシードベースボール財団・筆頭評議員の西貴志だった。

 清原と現役の頃から付き合いの深かった西は、この2人がお互いにどういう存在であるかを知っていた。

 都内のある店。西と野々垣、そして清原。

「僕としては、2人は何度か会えばわだかまりが解けるだろうと思っていたんです。少しは時間がかかるだろうなと感じていたんですが、キヨさんもタケシもいったん顔を合わせたら、もう時間はいらなかったです」

 再会の夜が更け、西が店を出ると、でかくて、ごつい男がふたり、月明かりの下で泣きながら抱き合っていた。

『タケシ、俺、頑張るから……』

 野々垣は何も言えず、ただ泣いていたという。

「やっぱり僕、野球しかないんです」

 それから野々垣は飲食店をたたみ、西のバックアップを受けながら清原が野球に復帰するためのイベント開催へ動き出した。

 そうしているときの野々垣は厨房に立っていたとときはまったく別人のように見えた。

「やっぱり僕、野球しかないんです。清原さんのために動いているときが一番、自分らしいような気がします。これしかできないんです」

 野々垣もこの3年半、何か大きなものを失っていたのだ。

少しずつ「信頼」を取り戻していく作業。

 清原にとっての「復帰」とはこういうことの積み重ねではないだろうか。

 失った関係、信頼をひとつずつ取り戻していく。薬物依存症や鬱病という自分との闘いと並行して、それらを積み重ねていった先にあるものではないだろうか。

 逆に言えば、執行猶予期間が満了する2020年6月15日より前に「復帰」できることも、それを過ぎても「復帰」できないこともあるという、難しいハードルなのかもしれない。

 12月1日の八王子には清原の親友である佐々木主浩や、デーブ大久保、PL学園の後輩・野村弘樹や宮本慎也も駆けつける予定だという。集まった子供達への野球教室も予定されているという。

 薬物によって一度は失った旧友たちの輪の中で清原氏はどんな顔をしているのか。

 何よりも子供やファンや野球に対して、自身のどんな姿を示すのか。

 人が人によって再生していく様を見てみたい気がする。

文=鈴木忠平

photograph by Kyodo News


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