プレミア12、日本の4番・鈴木誠也。爆発的な数字と驚異的な“対応力”。

プレミア12、日本の4番・鈴木誠也。爆発的な数字と驚異的な“対応力”。

 猛烈な逆風が吹き荒れていた。

 地元台湾代表との「プレミア12」オープニングラウンド最終戦。台湾の攻撃では6台のトランペットがテンポ良く奏でるメロディーに乗せ、応援リーダーの拡声器を使った声が球場に鳴り響く。

 スタンドでは女性はホットパンツにTシャツ、男性はユニフォーム姿のチアリーダーが踊りながらスタンドの応援を盛り上げ、球場が一体となってグラウンドの台湾代表に声援を送る。

 ピンチとなれば日本の攻撃時にもマウンドの投手に拡声器から声援が飛んで球場もそれに続く。

 こんな台湾スタイルの応援の洗礼を受けながら完全アウェーでの逆風の一戦だ。

完全にフェンスを越えた手応えだが……。

 そしてもう1つ吹き荒れたのは本当の逆風だった。

 レフトから本塁方向への強い風。こちらに悩まされたのは日本チームだけではなかった。

「完全にいかれたと思いましたけど、あれがフェンスを直撃して入らなかったので、まだついているなと思いました」

 侍ジャパンの先発・今永昇太投手(DeNA)がこう振り返ったのは、日本が2点を先制した直後、1回の台湾の4番・林泓育捕手の一撃だった。2死一塁。今永の初球ストレートを叩いた打球に林本人も完全にフェンスを越えた手応えを感じていた。

 しかしその打球が逆風に押し戻されてフェンス手前で急失速。林がゆっくりと一塁を回ったところでフェンスを直撃してシングル安打となり、一塁走者も三塁でストップした。入っていれば同点でスタンドのボルテージが一気に上がる場面だったが、結果的にはこの回を無失点で切り抜けたことが、試合の流れを大きく左右することになったわけだ。

「日本の4番」の責任を果たした。

 ただ、そんな逆風をものともせずに「日本の4番」の責任をしっかり果たしたのが、このシリーズで主砲を任されている鈴木誠也外野手(広島)だった。

「打席に立ったときは相手(投手)との勝負なので、(応援は)聞こえてこないし、守っているときは逆に(台湾の応援を)楽しんでやれました」

 1回には四球の近藤健介外野手(日本ハム)を二塁に置いて左中間を破る先制のタイムリー三塁打。そして完全アウェーを吹き飛ばす2試合連発の大会2号は3回2死一塁の場面だった。

「勝ちたいという気持ちで打ちました。初回の台湾のバッターの打球も風がなければいっていたと思うし、感触は良かったけど、かなり風が強かったので入るかな、という感じでしたけど」

 2番手左腕・王宗豪投手のストレートを叩いた打球は、フェンスを越えるどころか左中間席の中段まで飛んで行った。

 圧倒的な台湾の応援を沈黙させて、試合の主導権を完璧につかんだ追撃の2ラン。鈴木にとっては前日のプエルトリコ戦に続く2試合連発の2号だった。

4番打者は右の大砲が理想。

「4番打者は右の大砲が理想」――2017年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)まで日本代表の指揮を執った小久保裕紀監督以来、代表監督が求める理想の「日本の4番像」は一貫して右のスラッガーである。

 近年では最も理想の4番打者像でもある巨人時代の松井秀喜さんでも、場面によっては阪神・遠山奨志投手などの左の変則投手をワンポイントで当てられ対処に苦労する場面があった。それなら基本的に投手の左右に関係なく不動の主砲となれる右のスラッガーが4番の理想像という考えだった。

鈴木誠也か、柳田悠岐か。

 そのため小久保監督時代には日本ハムの中田翔内野手を起用しようとしたが、最終的には国際試合への強さから本番ではDeNAの筒香嘉智外野手にその座を任せることになった経緯もあった。

 その小久保監督時代に打撃コーチとして同じように中田の4番を追い求めた稲葉篤紀監督にとっては、2020年の東京五輪に向けて、その理想を見せてくれた鈴木の活躍でもあったのだ。

 筒香のメジャー移籍が有力となる来年の五輪では、日本代表の4番候補としてはこの鈴木の他には、右肘の手術で今大会は出場辞退となったソフトバンク・柳田悠岐外野手がが挙がることになる。

 柳田もまた2014年の日米野球ではMVPを獲得するなど、国際大会への対応力の高さは実証済みで、おそらくこの2人のうちのどちらかが任されることになるはず。

 ただ、「右の大砲」という理想型を考えると3番に柳田を置いて、4番に鈴木という形が稲葉監督の描く五輪打線の構想となるはずなのである。

打率4割5分5厘で2本塁打9打点という爆発。

 その最終テストとも言えるのが、この「プレミア12」での4番起用だった。

「1点取れるときはしっかり取っておかないと、こういう試合はどうなるか分からない。スキがあれば次の塁を狙っていくという姿勢でやっていきたい」

 7回には死球で出塁すると、すかさず5番・吉田正尚外野手(オリックス)の初球に二盗も決めて、9回のチャンスでも三遊間を破るタイムリーで6点目を叩き出した。

 これでオープニングラウンド3試合は11打数5安打の打率4割5分5厘で2本塁打9打点という爆発だ。

 まさに「日本の4番」の重責を果たす活躍といえるものだった。

世界一奪取の戦いの第2幕へ。

 オープニングラウンド3試合を無敗で突破した日本代表は、9日には帰国して11日に開幕するスーパーラウンドで世界一奪取の戦いの第2幕へと突入する。

「もちろん全部勝つつもりで試合に臨みたいですし、日本でやるということで応援もすごいと思います。モチベーションを上げて1試合、1試合を戦っていきたいと思います」

 オープニングラウンド初戦のベネズエラ戦では先発のフェリックス・ドゥブロン投手のカットボールなど動くボールにてこずって2三振を喫した。

 スーパーラウンドで対戦する米国代表は今季、トロント・ブルージェイズでプレーしたクレイトン・リチャード投手などのベテランのメジャー組に3A、2Aで投げているプロスペクトの若手選手なども入った混成チーム。また予選A組をトップ通過したメキシコ代表も3A、2Aでプレーする投手に地元のメキシカンリーグの選手を加えたチームで、いずれも独特の動くボールを武器にした投手が揃っている。

 オープニングラウンドで4番への1次テストを突破した鈴木にとっては、次なるスーパーラウンドが東京五輪の4番への最終テストとなる。ベネズエラ戦でも打席を重ねるごとに足の上げ方を微調整して、日本にはない相手投手のタイミングに対応。結果的には驚異的な数字につなげる力をみせた。

 スーパーラウンドではその対応力の高さをどこまで見せて、相手投手を打ち崩せるかの勝負になるだろう。

 プレミアから五輪へ。「プレミア12」スーパーラウンドは、世界一奪回だけではなく「日本の4番」が決まる大事な戦いともなる。
 

文=鷲田康

photograph by KYODO


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