再建カープの秋季キャンプ。野間峻祥の長打力は目覚めるか。

再建カープの秋季キャンプ。野間峻祥の長打力は目覚めるか。

 11月25日の選手会納会を終え、広島ナインは本格的なオフを迎えた。

 長丁場のシーズンを戦い抜いた選手にとっては束の間の休息であり、自分自身と向き合う自主トレ期間。オフは大きく成長するチャンスであると同時に、方向性を間違えば軌道修正が難しくなる重要な時間でもある。オフの方向性を定める道しるべとなるのが、秋季キャンプ。

 日本一となったソフトバンクは和田毅や千賀滉大、中村晃というベテランやレギュラークラスも参加していたが、広島は大胆に若手に舵を切った。高卒1年目6選手(中神拓都は途中参加)をはじめ、高卒2年目も育成選手を含め55選手など、実績のない選手が多く集まった。

 若手の底上げを掲げた中で、存在感を見せつけたのは、堂林翔太に次ぐ参加野手年長選手の野間峻祥だった。

 秋季キャンプで7試合行われた紅白戦初戦で、右翼スタンド後方のブルペンの壁を直撃する特大弾。最後の紅白戦でも一発を放った。佐々岡真司新監督は20日の打ち上げ時に「打撃で格の違うところを見せてくれた。野間はもともと打てばレギュラー」とたたえたという。

手応えを感じた「球を長く見る」感覚。

 今秋、野間は大きなきっかけをつかんだ。

 1つはフォーム改造にある。

 シーズン中から試行錯誤してきたものの、大きく変えるチャレンジはできなかった。シーズン終了とともにバットを後頭部のうしろに倒して構えるフォームにモデルチェンジ。西武の秋山翔吾やチームメート西川龍馬を参考にした。

 狙いは「球を長く見る」ことにある。

 これまでは体の中心に重心を保っていたが、ときに上体が突っ込むこともあった。投球を見る角度がより小さくなるよう、投球との距離をとるように工夫。やや上体が傾いても軸足に重心を残すようにした。加えて、バッターボックスに立つ位置も、左足を捕手側のライン上に置くように変えたことで、「球を長く見る」感覚を得た。

 シーズン終了後に現フォーム変更を打診していた朝山東洋一軍打撃コーチは「いい感じで振れている。あとは小さくまとまらないように。十分長打を狙える打撃も目指してもらいたい」とキャンプ中の変化に満足感を得ていた。

 もちろん、本人も。「練習からいい感じで振れていた。(実戦でも)練習でやってきた感覚でできたことは良かった。これまでやって来たことが無駄じゃなかったと思える」。確かな手応えを得て、オフシーズンに入っていった。

期待の裏返しだった高い要求。

 そして、今秋から一軍担当となった朝山打撃コーチの存在もまた、野間にはきっかけとなったように感じる。

 2014年ドラフト1位で広島に入団してからずっと大きな期待を背負ってきた。

 ドラフト前の映像で指名を熱望した緒方孝市前監督はもちろん、石井琢朗元打撃コーチ(現・巨人一軍野手総合コーチ)も付きっきりで指導したこともあった。今季まで一軍で指導してきた東出輝裕、迎祐一郎両打撃コーチもまた、野間に対する要求は高かった。

 それだけのものを期待させる能力を持っているという証しであり、同時に潜在能力を発揮できていないもどかしさを感じさせてしまっていたともいえる。

 1年目から127試合に出場した。その後伸び悩みながらも、4年目の昨年は初めて規定打席に達し、打率2割8分6厘と飛躍のきっかけをつかんだ。ただ今年は開幕直後に低調な広島打線の中で孤軍奮闘。開幕当初から適任が見つからない3番として打線を引っ張った。

突き放すことを選んだ朝山コーチ。

 それでも首脳陣の求めるものは高く、スタメンから外れる試合も。徐々に出場機会を減らし、打撃状態も下降。気づけば中堅は西川に譲り、途中出場が続く起用となっていた。終わってみれば、123試合出場も、打席数は前年から約100打席落とし、打率も2割4分8厘。ポジションを確保できなかった。

 悩みが悩みを生み、本来の良さである思い切りの良さが失われていたのかもしれない。悪循環にはまっているように感じる時期もあった。

 一軍の舞台で初めてみっちりと類いまれな能力を持つ野間と過ごした朝山打撃コーチはいい意味で突き放すことを選んだ。

「野間にはいろんな指導者がいろいろ言って、手をかけてきた。ただ、殻を破れないのであれば、好きにやれと言おうかなと。やっぱりスピードがあるから使いたい選手。がんじがらめにせず、思い切ってやれというスタンスに変えようかなと」

首脳陣も期待する野間の覚醒。

 思い切りの良さを取り戻すことが何かのきっかけになるかもしれない。コツコツ当てるような打撃ではなく、大きく振り抜く打撃もパンチ力を認めているからこそ推奨した。その方針は、秋季キャンプ2本塁打という結果に、少なからず影響を与えたに違いない。

 佐々岡新監督は投手出身だけに、緒方前監督が選手に植え付けてきた「投手を中心にした守り勝つ野球」をより色濃くしたチーム作りとなるかもしれない。となると、あれだけの脚力がある野間の打力が上がれば、自然と中堅候補に名前が挙がる。秋季練習から、今季中堅のレギュラーとなった西川を手薄なポジションである三塁に再挑戦させていることにも、野間の覚醒を期待する首脳陣の期待が見え隠れする。

 小さなきっかけで人生が大きく変わることもある。転換期にあるチームとともに、捲土重来を期している

文=前原淳

photograph by Nanae Suzuki


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