21歳、江川優生が独走の戴冠劇。K-1戦士は若いほど高レベル?

21歳、江川優生が独走の戴冠劇。K-1戦士は若いほど高レベル?

 K-1の新王者は、東京足立区に住む21歳である。

「POWER OF DREAM」所属の江川優生。今年1月に後楽園ホールをベースとするK-1 KRUSH FIGHTのフェザー級チャンピオンとなり、11月24日にK-1 WORLD GPの同級世界王者を決めるトーナメントで優勝した。キャリア最大の晴れ舞台、横浜アリーナでの2冠達成だ。

 高校時代にプロデビューした江川が外国人選手と対戦したのは今回が初めて。「みんな強かったので倒すのが大変でした」とトーナメントを振り返った新王者だが、その闘いぶりは圧倒的だった。

 1回戦、ホルヘ・バレラを左ボディフックでKO。準決勝はアーサー・メイヤーをバックキックで悶絶させ、決勝はムエタイのジャオスアヤイ・アユタヤファイトジムをパンチの連打でねじ伏せた。オールKO、しかも全試合1ラウンド決着だった。

 同門で共同生活を送るスーパー・バンタム級王者、武居由樹も6月のトーナメントをオールKOで制しているが、費やしたラウンド数は江川のほうが少ない。“1DAYトーナメント3試合をオール1ラウンドKO”は、旧K-1のピーター・アーツ、セーム・シュルトと同レベルの“独走”だ。

新世代が台頭するK-1戦線。

「武居由樹くんや武尊選手のような偉大なスターになりたい」

 王者としての抱負を語る姿は、リング上とは打って変わって初々しい。やっぱりまだ21歳なんだな、と少し安心したのだった。

 それにしても、今のK-1戦線は新世代の台頭が著しい。チャンピオン8人のうち6人が20代。江川のように10代でプロデビューする選手は当たり前で、登竜門的なイベントであるKRUSHも含め「10代のうちに(高校生のうちに)ベルトを巻きたい」と野望を語る選手も少なくない。

 今回のトーナメントに30歳でエントリー、準決勝で敗れた卜部弘嵩は、若い選手には負けられないという気持ちとともに「自分のほうが挑戦者」という心境でもあると試合前に語っていた。それだけ、若い選手が強いのだ。

卜部「(若い選手達は)年々、レベルアップしてる」

 トーナメントに出場した日本勢を見ると江川21歳、西京春馬も21歳。安保璃紅が22歳で、リザーブマッチを闘ったTETSUと斗麗は19歳と17歳である。

「二十歳前後の選手は本当にレベルが高い。年々、レベルアップしてるんじゃないですかね。僕は同世代の選手より、他のジムの新人の試合が気になる。どんな技術を持っているのか、どんな練習をしているのかって。今度、アマチュア大会も見に行ってみようかと思ってるんですよ」

 卜部がそう語った驚異の新世代。江川はその象徴だと言っていいだろう。

格闘技が“子供の習い事”の選択肢に。

 ではなぜ、新世代は強いのか。

 トッププロがアマチュアを参考にしようとするほどのレベルアップとはどういうことなのか。

 もちろんどのスポーツでも、世代が変わるにつれてレベルアップしていく(記録が伸びる)のは当然のことだ。練習メニュー、トレーニング用具、サプリメントまで含めてありとあらゆるものが進歩していく。

 加えて格闘技は、この20年あまりで急速にメジャーになった。

 旧K-1旗揚げが1993年。PRIDEで桜庭和志がホイス・グレイシーを下したのが2000年だ。江川が生まれたのは“テレビで格闘技を見るのが当たり前”の時代だった。

 メジャーになれば競技人口も増える。道場やジムに通うことが“子供の習い事”の選択肢に入ってきたのだ。その親は青春時代にK-1、PRIDEに熱中した団塊ジュニア、アラフォー世代。格闘技は怖い、危ないという意識よりも憧れのほうが上だろう。

 サッカーや野球と同じように、格闘技も少年時代から競い合い、そこで生き残ったものがプロになる時代が来たわけだ。層が厚くなればレベルも上がる。

江川のライバルは今の中学生か?

 K-1ならではの状況も関係してくる。

 現在のK-1は、完全に“殴る蹴る”に特化したルール。ムエタイの首相撲のように、相手を掴んで崩す攻撃が認められないのだ。組み付きで減点となる選手もいる。“掴み”一切禁止は他団体以上に“厳しい”。

 だからこそ打ち合いも増えるわけだが、そこで勝つためにはルールに合わせた練習が必要になってくる。ボクシングが“パンチだけ”なのと同様に、K-1も“殴る蹴るだけ”だから、そのための技術が高度に進歩するのだ。

 かつてのK-1は、キックボクサーや空手家が“参戦”してくる舞台だった。普段はヒジ打ちや首相撲を使うキックボクサーが、K-1に参戦する時は使う技や練習内容を変えていたのだ。しかし今は違う。K-1の選手は、最初から“K-1用”の練習しかしていない。

 まして今のK-1はアマチュア大会も定期的に開催、ジュニア部門からプロの世界王者までの道筋ができている。そこでトップになればスターの座が待っている。他のルール、他の競技を意識する必要がない。

 卜部は、他団体でヒジありルールを経験した最後の世代だろう。対して10代から二十歳前後の選手たちはK-1ルール特化世代。いわば“K-1の申し子”たちだ。そのトップにいるのが江川なのである。そして彼のライバルになるのは、今アマチュア大会に参戦している高校生や中学生かもしれない。

文=橋本宗洋

photograph by Takao Masaki


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