ポジション別MVP獲得数で分かる、坂本勇人&森友哉の歴史的価値とは。

ポジション別MVP獲得数で分かる、坂本勇人&森友哉の歴史的価値とは。

 今季のNPBの最優秀選手(MVP)はパが西武の森友哉、セが巨人の坂本勇人だった。どちらも予想通り、誠に順当だったのではないか。

 最優秀選手の前身である最高殊勲選手の表彰は、プロ野球が創設された翌年、1937年春シーズンに始まった。最も歴史があり、間違いなくプロ野球最高の栄誉だ。

MVP投票に感じる“傾向”とは。

 運動記者クラブの記者の投票によって選出されるが、おおむね以下のような傾向がある。

・投手、野手の中から最も貢献度の高い選手を1人選ぶ
・ポストシーズン(日本シリーズやCS)の結果は考慮されない
・ペナントレースの優勝チームから選ばれることが多い
・特筆すべき成績を上げた場合は下位チームから選ばれることもある

 MLBのMVPも似たようなものだが、少し違う部分もある。

・投手、野手が対象だが野手が多い。投手はサイヤング賞に回ることが多い
・ポストシーズン(ワールドシリーズやリーグ優勝シリーズなど)の結果は考慮されない
・ペナントレースの優勝チームからとは限らない

 なお今季のアメリカン・リーグのMVPは、西地区4位のエンゼルスのマイク・トラウトだった。

 一方でNPBの受賞者となった坂本と森は成績からして順当ではあったが、野球史を振り返れば、2人は異色の部分もある。

 日本プロ野球のMVP受賞者は、1937年春からのべ154人いる。これをポジション別に分けつつ、主な選手の顔ぶれを見ていこう。

投手は59回、では捕手は何回?

<投手 59回>
先発投手 53回
クローザー 5回
セットアッパー 1回

 野球史で先発と救援の分業が進んだのは1970年代からだから、先発が圧倒的に多いのは仕方がないところだ。2011年に中日の浅尾拓也がセットアッパーで初めてMVPに選ばれたときは、時代は変わったと思ったものだ。

<捕手 13回>
 人数では今回の森友哉で8人目。野村克也が5回、古田敦也が2回受賞している。

 捕手の場合、打撃だけでなく投手のリードや守備面を総合評価される場合が多い。つまり打撃タイトルに縁がなくても選ばれることがあるポジションだ。とはいえ森は首位打者を獲得してのMVPとなったので、打撃面も評価されているのだろう。

一、二、三塁でMVPを受賞した選手が。

<一塁手 23回>
 王貞治が9回、川上哲治が3回、松中信彦が2回受賞している。打者においてMVPはなんといっても打撃での貢献度が重視される。一塁手の選出が多いのは「打撃重視」のポジションだから、という側面があるのは間違いなさそうだ。

<二塁手 5回>
 二塁手で受賞したのは、苅田久徳(セネタース)、山本一人(南海)、岡本伊三美(南海)、落合博満(ロッテ)、山田哲人(ヤクルト)の5人だけ。守備力重視のポジションであるぶん、落合や山田は注目に値する。

<三塁手 14回>
 長嶋茂雄が5回受賞している。内野では一塁手に次いで守備の負担が軽いとされ、こちらも打撃が重視されるポジションだ。なお、山本一人(鶴岡一人)は、3回MVPを受賞しているが一塁、二塁、三塁で1回ずつ受賞。落合も二塁と三塁で受賞している。

ショートのMVPはなんと3人だけ。

<遊撃手 3回>
 全ポジションで最も少ないのが遊撃手での受賞だ。石毛宏典(西武)、松井稼頭央(西武)、そして今回の坂本勇人で3人目である。MLBではアレックス・ロドリゲスやデレク・ジーターをはじめ打てる遊撃手は決して珍しくないが、NPBでは“守備重視”のイメージが強い。それだけに今回の坂本の受賞は歴史的だといえよう。

 坂本は今季40本塁打を放ったが、遊撃手の40発超えは1985年、中日・宇野勝の41本以来2人目とい快挙だった。

<外野手 37回>
 1チームに3つのポジションがあるので受賞者が多いのは自然だろう。松井秀喜とイチローが3回、長池徳二、山本浩二、アレックス・ラミレス、丸佳浩が2回受賞している。また福本豊のように足のスペシャリストが受賞することも多いポジションだ。

チーム別獲得回数を見てみると。

 次にチーム別に見てみよう。チーム名は現行のもの。※は現存しない球団である。

読売ジャイアンツ 45回

福岡ソフトバンクホークス 23回
(グレートリング、南海含む)

埼玉西武ライオンズ 15回
(西鉄含む)

オリックス・バファローズ 14回
(阪急含む)

広島東洋カープ 9回

中日ドラゴンズ
北海道日本ハムファイターズ(東映含む)
東京ヤクルトスワローズ
各8回

阪神タイガース 7回

千葉ロッテマリーンズ 6回
(大毎、毎日含む)

近鉄バファローズ 4回※

横浜DeNAベイスターズ
東北楽天ゴールデンイーグルス
各2回

松竹ロビンス※
イーグルス※
セネタース※
各1回

 MVP受賞者は優勝回数とほぼ比例している。

ホークスとライオンズが興味深い。

 当然だが、史上最多の46回のリーグ優勝を誇る巨人が全体の3割近い45回の受賞。9回の王貞治、5回の長嶋茂雄、3回の川上哲治、松井秀喜など圧倒的な顔ぶれだ。坂本勇人は巨人では26人目の受賞者となる。もちろん、遊撃手としては初めてだ。

 続いてホークス。野村克也が5回、山本一人が3回。ホークスは1988年の門田博光から1999年の工藤公康まで10年の空白がある。この間に南海からダイエーに親会社が変わり、本拠地も大阪から福岡になった。大きな転機があったのだ。

 続くライオンズは稲尾和久と東尾修が2回ずつ受賞している。ライオンズも西鉄時代の1958年に稲尾和久が受賞してから1983年に東尾修が受賞するまで、24年のブランクがある。この間に西鉄、太平洋、クラウンライター、西武と親会社が変わり、本拠地も福岡から埼玉になっている。なお、森友哉はライオンズでは前年の山川穂高に続いて13人目の受賞だ。

金田、立浪、清原らも受賞ならず。

 繰り返しになるがMVPは、基本的に「強いチームの主力選手」でないとほぼ受賞できない。弱小チームの名選手の中には、大活躍しても縁がなかった選手も多い。

 球史に残る選手でも、今年亡くなった史上最多400勝の金田正一、史上3位320勝の小山正明、打者では2480安打の立浪和義、525本塁打の清原和博などもMVPには無縁だった。

 森友哉はまだ24歳。過去にはライオンズの先輩の稲尾和久が20歳で受賞しているが、森には大捕手、大打者への期待がかかる。

 30歳の坂本勇人はここまで1884安打、来季には史上最年少での2000本安打への期待がかかる。史上8人目の2500本安打、2人目の3000本安打も夢ではない。

 そういった点を踏まえて、今季の両リーグのMVPはともに「ゴールではなく通過点」だったことに大きな意味があると言える。

文=広尾晃

photograph by Kyodo News


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