MLBでワンポイント登板が禁止に?安易な改正案と、イチローの言葉。

MLBでワンポイント登板が禁止に?安易な改正案と、イチローの言葉。

 時代の変遷に伴い、既成の概念や規則を変える必要が生じる時は、確かにある。

 ただ、永きにわたって育まれたことや、深く浸透したことを変更することは、必ずしも簡単ではなく、しかも正論とは限らない。

 MLB機構は、来季以降、部分的な野球のルール改正を提唱し、その中に、救援投手に関して、「最低3人以上」(イニング終了での交代可)との登板義務を組み込んだ。いわゆる、打者1人を封じるための「ワンポイント」を禁止とするルールを提言した。

野球規則に定められた常識が……。

「公認野球規則」の先発投手及び救援投手の義務の項、3・05(b)には、以下のように記されている。

「ある投手に代わって救援に出た投手は、そのときの打者または代打者がアウトになるか一塁に達するか、あるいは攻守交代になるまで、投球をする義務がある。ただし、その投手が負傷または病気のために、それ以後投手としての競技実行が不可能になったと球審が認めた場合を除く」

 つまり、アウトに仕留めようが、安打を打たれようが、打者1人に対して投げ切ることを最低ラインに定めたもので、これまで長い間、球界の常識として定着してきた。

 それが、左右のスペシャリストを生み、戦術的にも継投の妙味を醸し出していた。

 だが、11月下旬に行われたオーナー会議で機構側の提言が承認され、今後は選手会側との折衝となる予定だが、いずれにしても近い将来、改正に向かう流れは避けられそうにない。

サイン盗みがより悪質で巧妙に。

 昨今のMLBは、2015年にロブ・マンフレッド氏がコミッショナーに就任して以来、試合時間の短縮を最重要事項として、改善に取り組んできた。

 確かに、無暗にプレートを外す投手、打席から離れる打者が多いことは否定できない。特に、投手が投げないことにはプレーが始まらないスポーツだけに、投手の投球間隔、そして今回の投手交代策にも矛先が向けられることは、ある意味で当然なのかもしれない。

 ただ、近年の試合時間長期化は、決して、頻繁な投手交代や投球間隔だけが原因ではない。

 試合時間短縮に躍起な機構側は、2018年から監督、コーチ、捕手らがマウンドへ行く回数を、1試合(9イニング)で6回まで、今季は5回までに制限した。投手コーチ、捕手らが「タイム」を取ってマウンドへ駆け寄る回数が増えたことへの対応策だった。

 では、なぜ、マウンドへ行く頻度が増えたのか。

 その背景に、各球団のサイン盗みや伝達が、悪質でより巧妙になった事実があることは、もはや言うまでもない。走者が二塁へ進めば、サインの「キー」を変更したり、ブロックサインをミックスさせたりするチームも増えた。

安易に野球規則を変えてしまう違和感。

 サインが盗まれている可能性が高ければ、読唇術で分析されないように、グラブで口元を隠したうえで配球を確認し、ノーサインで投げるケースも少なくない。

 その結果、サイン違い、伝達不足などで捕逸、暴投が頻出し、さらに試合が長くなる。そんな負の悪循環が、現在のメジャーでは繰り返されている。

 限りなく「クロ」に近い「飛ぶボール」への変更問題、今オフの話題をさらっているアストロズのサイン盗み問題など、野球の根幹に関わる疑念を解決しないまま、安易に野球規則を変えようとする姿勢には、強い違和感を禁じ得ない。

 今後は、マウンドを低くする案、マウンドと本塁との距離を伸ばす案など、ほとんど理解不能な改正プランもあるという。

イチローの残した言葉が頭をよぎる。

 今年3月、現役を引退したイチロー氏が残した言葉が、頭をよぎる。

「2001年に僕がアメリカに来てから、この2019年の現在の野球は全く別の違う野球になりました。まあ、頭を使わなくてもできてしまう野球になりつつあるような……」

 現時点で、マンフレッド氏の任期は2024年まで。

 今後は、ビジネス面での利益だけでなく、ファンの視線により近い形を求めて、改革を進めていけるのだろうか。

文=四竈衛

photograph by Getty Images


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